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コンテンツ作りは「取材」が9割

取材がつまらないと、原稿もつまらなくなる

たまに「取材がつまらなくても、書くときに面白くできるだろう」と思っている人がいますが、それは難しいことです。

つまらない取材であれば、それなりのコンテンツにしかならない。

残酷な言い方ですが、面白くない文章ができあがったらそれは話の内容自体が面白くなかったということ。よって、取材する側がやるべきことは面白い話が出てくるまで粘って取材を続けることです。

今回のnoteでは、僕が取材のときに大切にしていることを紹介します。

取材の前にやるべきこと

まずは取材の準備です。次のことは最低限やっておきましょう。

・取材相手のSNSがあればチェックする
・取材相手のインタビュー記事や著書があれば読んでおく
・取材相手のYouTubeなどの動画があれば見ておく
・わかる範囲で取材相手の「年表」を作っておく

ここまでやっておくと基礎的な情報のみならず「相手がどういう価値観を持っているのか?」「何を大事にしているのか?」がぼんやりと見えてくるはずです。

全体を通して大切なのは、興味を持って調べることです。

無理に「興味を持とう」と思わなくても、少し調べ始めると面白くなってきて、さらに興味が湧いてくるもの。取材者が楽しんでいれば、読者にも楽しんでもらえるはずです。

5つくらいの質問を用意する

事前に準備しておく質問は、そんなに多くなくていいでしょう。

1時間の取材なら3〜5個程度が適切です。むしろ質問が多すぎると「一問一答」のようになってしまい、取材にドライブ感が出ません。そうではなく、質問をして返ってきた答えをそれぞれ深掘りしていくほうが盛り上がります。

また、事前に質問を送っておくと丁寧ではありますが、予定調和になったり「定番のいつもの話」になったりしがちなので、できれば「ぶっつけ本番」が望ましいでしょう。

質問は送らずに、取材の冒頭で「今日は就活と新卒入社した1社目のときのお話しについてお聞きします。それでもまだ時間があれば、創業するまでのお話もお聞きしたいです」と取材の流れを伝えておけば安心してもらえますし、お互いにやりやすくなります。

ICレコーダーと紙のノートを用意する

取材のために準備するアイテムは「ICレコーダーと紙のノート」です。

今はスマホでも録音はできるのですが、途中で電話がかかってきたり、調べものをしたりすることもあるので、録音をするための「ICレコーダー」を用意できるとベストです。ICレコーダーがあると「取材感」が出るので、お互いのテンションが上がるという効果もあります。

また、取材中にパソコンでメモをとる人も多いと思いますが、目の前にパソコンがあると気が散りますし、「ちゃんと聞いてくれているのかな?」と不安にさせてしまったりもするのであまりオススメしていません。また取材相手とのあいだに「小さな壁」ができてしまうので、心理的にも距離ができてしまいます。

僕はなるべく紙のノートに質問をいくつか書いておき、そこにメモをするようにしています。取材中は話の中で出てきたキーワードもメモしますが、大切なのは「あとで質問したいこと」をメモしておくことです。

取材していると、話を聞いている最中に「あれ? それってどういうことだろう」と質問が浮かぶことがあります。相手が気持ちよく話しているときに、遮って質問してしまうとリズムが崩れます。よって、相手が話し終わってから質問できるようにさっとメモしておくのです。そうすれば、目の前の話に集中することができますし「あれ、聞いておくの忘れた!」ということもなくなります。

学校の授業でノートをとるときのように、聞いた話を逐一メモすることはしなくていいでしょう。僕自身、メモを取ってもそんなに見返すことはありません。話は録音されていますし、取材を振り返りたいなら「文字起こし」したものを読めばいいからです。ただし、メモを取っている姿を見せることは、意外と大事だったりします。「真剣に聞いてくれている」という印象になるからです。

楽しくなければ、取材じゃない

取材で大切なのは聞き手が楽しむことです。

「取材のための取材」ではなく「聞きたいことを聞く」ということ。取材を「仕事として」やってはいけません。取材を楽しんでやっていると必ず盛り上がりますし、面白い話を聞けるはずです。結果的にコンテンツも面白いものになります。

理想は「いい話が聞けたから絶対コンテンツにして発信しなければ!」「これを公開したら反響がありそうだぞ!」とワクワクできるレベルにまでなることです。その気持ちになれたら、自然と面白いコンテンツはできます。「書きたくなるまで取材をする」というつもりでやってみてください。

取材と称して「悩み相談」をしたっていい

取材中はぜひ、あなたが本当に知りたいことを聞いてください。

取材となると「きちんと質問しなければ!」と肩肘張ってしまいがちです。「今期このプロジェクトに力を入れられていますが、それはどういった意図なのでしょうか?」といった、本当はどうでもいいと思っている質問をしがちになります。それが本当に気になるなら聞けばいいですが、気にならないのなら質問する必要はありません。

それよりもむしろ「今日は悩み相談をしにいくぞ」くらいの気持ちでいいのです。あなたが本当に知りたいことや前のめりになって聞けることを質問するほうが、熱のこもった取材になって、結果的にうまくいきます。

「この人からノウハウを盗めないかな」と思って聞く

僕が本の編集者として仕事をしていたときも「何か面白い話が聞けないかな?」「この人から貴重なノウハウを聞くことはできないかな?」という「下心」で近づいていました。

佐藤可士和さんに会いに行って「可士和さんはどうやって打ち合わせしてるんですか?」と聞いてみたり、週刊文春の編集長に会いに行って「どうやってそんなスクープが取れるんですか?」と聞いてみたり。企画のほぼ全部が、自分の関心ごとや悩みごとが発端になっていました。

こういうことを言うと「人を利用するなんて!」「人をコンテンツとして見るなんて!」と思う人もいるかもしれません。……ただ、そうやって下心で近づくからこそ、読者が本当に知りたいことや読みたいものにたどり着くことができるという面もあります。

逆に、編集者自身が聞きたくもないことを「仕事だからしょうがないか」といって取材することこそ失礼な気がしますし、結果的に読者不在のものになってしまいます。「取材だからやる」「仕事だからやる」ではなくて、「目の前にいる人と何を話したいのか?」「この人の面白さはどこなんだろう?」「強みはどこなんだろう?」と考えて取材をする。そうすると、必然的に面白いコンテンツができあがるはずです。

深堀りすべきタイミング

1時間の取材で3〜5個の質問を準備しましょう、とお伝えしました。質問を投げかけてみて「面白い」と思った箇所を中心に深掘りして取材を進めていくのです。

では、どのように深堀りしていけばいいのでしょうか?

ひとつは、詳しく聞くということです。たとえば「いちばん許せないことは何ですか?」と質問して「嘘をつかれることですかね」と返ってきたとしたら、「それは仕事でもプライベートでもですか?」「たとえばどんな嘘ですか?」「最近、嘘をつかれたことがあったんですか?」「嘘にまつわるエピソードで何か思い出せるものはありますか?」というように詳しく、具体的に聞いていきます。

もうひとつは、理由を聞くことです。「そう思われたきっかけがあったんですか?」「許せないことはいろいろあると思いますが、なぜ嘘がいちばん許せないんですか?」といった具合です。この理由で、その人の考え方、個性が見えてきます。

また話を聞いているなかで、質問するといいのは次のタイミングです。

・「?」が浮かんだとき

話を聞いていて頭に「?」が浮かんだときは、スルーせずに「それってどういうことですか?」と聞いてください。あなたが「?」と思ったということは、読者もそこで「?」と思うはず。そこをそのままにしておくと疑問の残るコンテンツができてしまいます。

・「自分とは違うな」と思ったとき

話を聞いていると、自分とは全く違う思考や、自分にはできない行動をした話が出てくるはずです。「社長はなぜそうしたのだろう?」と思ったら、それを聞いてみてください。

そして、面白いと思ったら素直にリアクションしましょう。「面白いですね」「すごいですね」と反応すると「ちなみにね……」と、その話題から派生した別の話をしてくれることがあります。

よくないのは、流れ作業のように聞いてしまうこと。取材の目的は「面白い話を引き出すこと」であって「質問をこなすこと」ではないのです。

「いつから〇〇だったんですか?」はキラー質問

なかでも「いつから〇〇だったんですか?」「昔から〇〇なんですか?」は、面白い話が聞ける可能性の高い質問です。

こうした「きっかけ」についての話というのは、その人のターニングポイントですし、必然的に印象的なエピソードを聞けることが多いのです。

たとえば「宝塚が好きなんです」と言われて「そうなんですね」と返せばそこで会話が終わってしまいます。「昔からお好きなんですか?」と質問すると、次のように展開するかもしれません。

「宝塚が好きなんです」
「そうなんですね! 昔からお好きなんですか?」
「母が宝塚好きで、小さいころから見に行ってましたね」
「それがエンターテイメントの事業をやることにつながって……」
「けっこうそれは大きいと思いますね」

エピソードを聞くときはこの3つをおさえよう

ちなみに、エピソードを聞くときにおさえておいたほうがいいことが3つあります。

ひとつは「数字」です。「あのときは通帳の残高がヤバくてね」という話が出てきたら「ちなみにいくらだったか覚えてます?」と聞いてみる。すると「めっちゃ覚えてますよ。360円でした。ヤバくないですか?」と返ってくるかもしれません。口頭の取材だと数字をスルーしがちになるのですが、いったん立ち止まって聞いてみることを忘れないようにしましょう。

2つめは「セリフ」です。会社の上司に起業を勧められたから起業したというエピソードを聞いたら「その上司は何と言ってたんですか?」と聞きましょう。すると「『お前、会社員に向いてないよ。会社不適合者だな。でも起業家には向いてると思うぞ』って言われたんですよね」と印象的なセリフが出てくるかもしれません。具体的なセリフや会話があると臨場感が増して、魅力的なコンテンツになります。

もうひとつは「情景」です。「そこで廃業を考えたんですよね」と言われたら「どこで考えたんですか?」と聞いてみます。すると「ちょうど古い印刷機が目の前にあってね」といった答えが出てくるかもしれません。「会社に行くのが嫌でトイレに閉じこもってました」と言われたら「トイレってどこのトイレですか?」「そのトイレはどんな感じのトイレだったんですか?」と聞いてみると、リアリティが増します。

コンテンツを魅力的にするときに大切なのは、具体性、臨場感、リアリティです。いざ編集する段階で「ああ、あれも聞いておけばよかった!」とならないように、なるべく具体的な情景を聞いておきましょう。

「この人、話しやすいな」と思われる聞き方

僕はこれまで多くの取材をしてきましたが、本当にいろんなタイプの方がいました。マシンガンのようにダダダッと思いを語る人もいれば、ひとつ質問をすると熟考してポツッと深い一言を発するような人もいました。

中には、取材に慣れていなくてうまく話が出てこない方もいました。そういうときは質問をし続けるのではなく、こちらも同じくらい話すといいでしょう。するとリラックスした雰囲気の楽しい取材になりますし、自分が話したことをきっかけに「今思い出したのですが、こんなことがあって……」と話が広がっていくこともあります。

「どういうレベルの話を返せばいいんだろう?」と迷っているケースもあります。そういうときは「僕の場合はこうですけど……」「私も以前、こういうことがありまして……」と例を出すと「ああ、そういう話をすればいいのか」とわかってもらえます。

また「私ならこう思いますが、どうですか?」「僕ならこう考えますが、社長はなぜそんな選択ができたんですか?」など「普通の人はこう思うはずだけど、あなたはどうでしょうか?」という聞き方をすると話してくれやすいでしょう。聞き手が「普通の人代表」としての自分の話をすることで、相手のオリジナルの考え方が出てきやすくなります。

相手の考える時間を奪わない

卓球のようにポンポンと答えを返せるような人は稀です。

ひとつの質問をしたら10秒くらいは考えたいという方もいる。取材している側は、沈黙が怖くなってついその10秒のあいだに余計な口を挟んでしまいたくなりますが、そこは我慢しましょう。

話すリズムは人によって違います。間が空いたとしても、本当に何も考えていないような人はいません。たいていはじっくり考えて言葉を探しているから間が空いてしまうのです。そこで間を埋めてしまうと「今考えていたのにな……」と、せっかく考えてくれていた質問の答えをスルーして、取材が進んでしまうことになります。

取材であれば多少の沈黙があっても気にする必要はありません。取材の目的は盛り上げることではなく、言葉を引き出すこと。沈黙になって気まずく感じても、間が空いてしまって雰囲気が悪くなったように感じても、いったん待ちましょう。雰囲気をよくすることで言葉が出てくる場合もありますが、雰囲気を優先しすぎると言葉を引き出せなくなります。その場は盛り上がったけど、大した話が聞けなかったということでは、いいコンテンツは生まれません。

逆に相手が「立て板に水」のように話してくれても、いい取材にならないことが稀にあります。特に取材慣れしている方だといつもメディアで語るネタが決まっていて、そのネタを話して終わり、ということになりがちなのです。その場では「盛り上がったし、いい取材だったな」と思っても、後から文字起こしを読んでみると微妙だったというケースがあるのです。

話を聞きながらも、つねに頭のどこかでは「これでコンテンツになるかな?」「オリジナルのネタが聞けているかな?」と考えておくことも大切です。

この記事は拙著『社長の言葉はなぜ届かないのか?』から抜粋して再編集しました。けっこう評判いいのでぜひ読んでみてほしいです!!

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