その文章に「サビ」はあるか
おもしろい文章には「サビ」がある、と思った。
曲で印象的な部分を「サビ」という。おなじように、文章にもちゃんと印象的な「サビ」があるか? 「これが言いたいんだ!」というメッセージがあるか? そこを意識するといいのではないか。
そして、その「サビ」に向かって「イントロ」や「Aメロ」「Bメロ」を配置していくのである。
こんな文章があったとする。
今日は台風が近づいているからか、低気圧だからか、体も重く、頭もまわらず、仕事もやる気が出なかった。ぼくは台風を言い訳にしながら、やるべきことを先送りしてしまった。どうもこのダラダラした性格は治らない。
日記ならいいと思う。
が、ここには「サビ」がない。「何が言いたいのか」は特に伝わってこない。ずっとAメロが続いている感じだ。
「サビ」を考えるなら、たとえば、こんな感じはどうだろう。
人間はつねにラクするための言い訳を探している。
これを「サビ」として文章を組み替えてみる。
台風が近づいている。低気圧である。体は重く、頭もまわらない。こんな日はやる気が出ない。仕事はまったく進んでいない。
ただ、人間はつねにラクするための言い訳を探している。
「台風が近づいているからやる気がない」のではなく「やる気がないことを台風のせいにしたいだけ」なのかもしれない。
もしくはこういうメッセージを「サビ」にしてみる。
やる気のないときほど、仕事をすべきだ。
すると、こうなる。
台風が近づいている。低気圧である。体は重く、頭もまわらない。こんな日はやる気が出ない。仕事はまったく進んでいない。
しかし、やる気のないときほど、仕事をすべきだ。
やる気があるときに仕事が進むのは当たり前。そこでやる気がないときに仕事をするクセをつければ、そのぶん「ベース」がアップする。やる気のないときほど仕事をすることが、他人に差をつける秘訣である。
ビジネス書のノウハウのような文章になった。
その文章において「何が言いたいのか?」「ひとことで言うなら何か?」という「サビ」を意識することで、ぼんやりした文章は解消し、ウケる文章が書きやすくなるはずである。
そして、その「サビ」はひとつの文章にいくつもなくていい。
ちきりんさんも「ひとつの文章にはひとつのメッセージしか込めない」と言っていた。だから、あれだけ多くの人に伝わる文章が書けるのだろう。
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