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一気に読ませる文章を書くための7つのポイント

「週刊文春」は、毎週買っている。

 真っ先に読むのが、林真理子さんのコラム「夜ふけのなわとび」だ。時事ニュースに絡めた話や林さんの近況などが書かれているのだが、これがおもしろい。

 なんてことのない文章のように見えて、一気に読ませてしまう魔力を持っている。他の人のコラムもいろいろあるが、林さんのだけは途中で飽きるようなことはまずない。

 そのおもしろさのポイントを僭越ながら分析してみた。

①体重を乗せて感情で書く

 まずなにより、林さんのコラムは「感情」が乗っている。それも「コラム用につくられた」感じがしない。とても正直なのだ。すごく自然だし、嫌味もない。

 ちなみに今週号のコラムの冒頭は

 しばらく呆然として、次に猛烈な怒りが湧いてきた。日大の内田前監督と井上コーチの記者会見を見たからである。

 だった。

 1行目からスルッと世界に入れる感じがあるのではないか。すごく素直だし、書き手の「体重」を感じる文章だ。

②余計な前置きをしない

 そして、余計な前置きがない。

 普通は「日大の件が話題である」とか「もうこの話題には飽きたと言われるかもしれないが」などとやってしまいがちだ。でも、きっとそれは「余計な前置き」なのだ。むにゃむにゃ言っているあいだに読者は離れてしまう。そうではなくストレートに最初から「怒りが湧いてきた」と伝える。すると一気に引き込まれる。

③固有名詞を出す

 また、林さんのコラムには、人物名や場所など固有名詞が多く出てくる。具体的だから場面を思い浮かべざるをえない。

 新橋演舞場に喜劇を見に出かけた。幕間に幕の内弁当を食べていたところ、後ろの席の女性の話し声が。
「今、ネットニュースで、西城秀樹が亡くなったって出ていたわよ」
 ショックのあまり箸が止まった。
(5月31日号)

「西城秀樹の訃報をどこで聞いたか」という情報は端折りがちだ。しかし、ここではあえて具体的に書いたことですごく印象に残るものになった。固有名詞を出すことで、みんなが共通の絵を思い浮かべることができる。

 また「これは本で読んだのだが」「これはネットで見たのだが」など情報の出どころも書いてある。このあたりもリアリティがあってコラムのおもしろさにつながっている。

④エピソードをとにかく豊富に

 そして、とにかくコラム内のエピソードが多い。約3000字の中に4つも5つも入っている。5月24日号のコラムには

・軽井沢を散歩した話
・軽井沢関係の本を読んだ話
・ビストロまでタクシーを走らせたときの話
・40年前のテニス部合宿の話
・出版社の寮にカンヅメにされた話

 が間髪入れずに出てくる。人生経験の豊富さと記憶力がなせる技だろうか。ここまでのエピソード量はなかなか出せない。

⑤「」を随所に入れる

「」が多いのも特徴のように思う。以下はタクシーの運転手との会話。

「運転手さん、この近くに日大の合宿所があるんですか?」
「そうですね。大学の寮はいっぱい失くなっちゃったけど、日大さんは大きいからまだ持ってますよ」
(5月24日号)

「このへんには日大の合宿所がまだ残っている。」と一行で書かれるよりも、臨場感があって一緒にタクシーで話を聞いている気分になる。「」を随所に入れることは飽きさせない効果もありそうだ。

⑥内容に共感できる

 林さんのコラムは、ちょうどいい塩梅の「共感」がある。日大の件に関しても、広報担当に対してこう斬ってしまう。

 司会者もどうしてあんなアホなジイさんを連れてきたのだろうか。

「ほんとほんと」「そうそう」と思わずニヤリとしてしまう。あらゆる出来事、ニュースに対して、ズバッと斬り込んでくれる。多くの人の代弁者になってくれる。読者は「ああ、やっぱりそう思うよね」という安心につながる。

⑦難しい言葉や余計な言い回しをしない

 林さんのコラムは、おそらく小学生が読んでもスルスル読める。難しい言葉や言い回しはほとんど出てこない。一文も長くないのでリズムよく読める。カッコつけた表現も見られない。

 一流の料理人が素材を生かしたシンプルな調理法をするように、一流の書き手も余計なことは極力やらないのだろう。変な味付けをしたり、飾りをしたがるのはいつも素人だ。

 正直に。肩の力を抜いて。自然体で。そんな文章がいつか書けるようになれたらいいなあ、と思う。(上記の「ポイント」を守ったところで、林さんのように書けるようになるとは思わないけれど。少しでも近づけますように。)


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