[小説]闇のエクソシスト(笑)

「お願いします!!助けてください!!」
「・・・・わかりました・・・任さて下さい・・・」
追いすがる女性に静かに返す
「あの子なにかおかしいのです!!前は・・・前はあんな子じゃ・・・・・」
その女性はそのまま泣きながら話す。
「大丈夫です・・・私にまかせてください。」
女性をなだめて後日自宅に向かう約束をしてその場は終わった。
「・・・ふぅ・・・・やはり日本でもやつらは暗躍しているのですね・・・」
安寧を願う人を襲うモノ・・・
そのモノ、いやモノたちへの怒りが心を焦がした。
世界にさまざまな職種が存在する。
政治家や企業で働く者
それに人を救う重大な職種も数多くある。
警察や消防員、救急救命士に医師・・・・
数をあげればきりがないくらいにたくさんの人がたくさんの使命を背負って生きている。
そんな中
表立って活躍はしないが裏で人を支える人がいる・・・
『闇医者』
聞いたことはないだろうか?
知識はあるが資格はない。
しかしその膨大な知識を武器に表では解決できないような病気を治す・・・
漫画や小説もしくは都市伝説?
どちらにしても想像の域をでない現実に確認できない。
そんな存在だ・・・つまり何が言いたいかというと・・・
私がその『闇医者』だ!
・・・というわけではない。
しかし存在的にはその『闇医者』に近い
私は『エクソシスト』
・・・
この日本には存在しないと言われるその存在・・・
それが『私』だ。
正確に『闇エクソシスト』というところだろうか
なぜ闇かというと前述した『闇医者』と同じようなものだ。
悪魔祓いの知識はある・・・
しかしバチカンで行われているようなエクソシストとしての修練はしていないので
資格はない・・・
だが膨大な知識を得た私は安寧を襲うモノ
そう悪魔と対峙できる唯一の日本人だと確信している。
事実悪魔祓いの勉強をたくさんしてきた私はさっきのように
私の知識を頼る人が訪れる。
そんな人々の助けをするべく私は動く。
一本のペットボトルを取る。
その中の聖水を口に含んだ。
「体を清めて・・・悪魔を払う!」
準備を進めて来るべき対峙の時を待つのであった。

後日
依頼をしてきた女性の自宅に赴く
ピーポーン
呼び鈴を押す
すると
ガチャ
ドアが開き
中から
「ああぁ神父様!!」
女性は歓喜の声をあげて迎え入れる。
なんというか神父ではないのだが
形式的に格好が神父のような姿だからそこは特に訂正などはせずに話を進める。
「でお子さんは?」
迎え入れてくれた女性に凛とした態度で話を聞いた。
すると
「そうですね、中へどうぞ」
そう言って中へと入っていた。
玄関を入りすぐに階段が見えた。
そこはどことなく暗い
「お子さんはこの上に?」
「はい・・・」
そういって表情を暗くした。
そして状況を話し始めた。
「あの子もう36なるんです。」
「そうですか・・・それで?」
「それはあの子が仕事についた20代前半でした・・・」
女性は話を続ける。
「仕事に行ったはずなのに午前中に帰ってきてそれっきり部屋から出ることなく今まで・・・」
「なるほど・・・ほかに何か変わったことは?」
「その時期と同じくらいからあの子の言葉使いがまるで別人になって・・・」
「ほう・・・」
「うるせぇ!とか黙れ!とか・・・時にはばば!など私を罵ってくるのです・・・」
「・・・・ふむ・・・それは悪魔の可能性が高いですね・・・」
すると女性は
「やっぱり!!」
女性は少し興奮したようなそれでいて私を呼んだことの妥当性に確信を持ったように声をあげた。
汚い表現をして攻撃的・・・
それは悪魔に近いと感じた。
私は
「落ち着いてください」
となだめて
「彼とは直接会えますか?」
「はい、普段はしないのですが外から鍵を開けて入ることができますので」
「わかりました、では彼に会いましょう」
「願いします」
女性は鍵を手に準備を始めた。
そして私も悪魔祓いの準備を始めた。
トランクのキーを開けていつでも取り出せるように装備を進める。
そして階段を一段一段上がっていった。
扉の前
トントントン
「よし君?あなたに会ってもらいたい人いるの」
「・・・・」
扉の向こうからは返答はない。
トントントン
「よし君?」
ガン!!
「うるせ!!!」
何かを蹴るような強い音
そしてそのあとに罵倒が飛んだ。
「よし君・・・」
女性は声を落としてうつむく
その様子に
「任せてください。では扉を開けてもらっても?」
そう促して女性に扉の鍵を開けてもらった。
カチン
音が鳴った
すると
ガタ
とかすかに部屋の中から音が聞こえると
「開けるな!!」
という声と
タッタッ
っという足音が聞こえた。
そこですかさずに扉に手をかけて部屋をあけ放つ
「!?」
そこには青白い顔をした青年が扉をロックしようと扉の近くまできており
さらには私の顔を見て驚きを隠せずにいた。
そして彼は
「誰だ!!てめぇ!!!」
声をあげて再び扉を閉めようとドアノブに手をかけようとした
その行動に
「やめるんだ」
彼に声をかけた。そして
「彼の名前は?」
女性に聞いた。
「よしひこです。」
一瞬のやりとり
その様子を彼は驚いた感じでいたがドアノブから手を放すことなく力をまた込めた。
「なんだよ!どけろよ!!」
そういってなんどか扉を閉めようとするが私の体でそれを止める。
「くそ!!くそ!!!」
何度も繰り返した。
その行動に
「やめるんだ!!この悪魔!!」
語意を強めて彼に言い放つ
すると現場はピリっとした。
私たちの様子を見ていた女性も体を震わせる。
彼は少し怯んだようだが態度は変わらずに強硬だ
そして
「てかおまえ誰だよ!!しかも人のことを悪魔だ!?ふざけるなよ!!」
そういって声を荒げた。
そんな彼の額に持ってきた十字架をあてた。
「いて!!」
彼は痛みに顔をゆがめる。
「悪魔よ!!落ち着け!!」
そういって悪魔を弱らせていく
「いて!!痛いって!!十字架のなんか!!刺さてるって!!!」
彼にとりついた悪魔は痛がっている。
「十字架を嫌がるのが悪魔の証拠・・・さぁ観念するんだ!!」
力をこめて彼の額に当てた
すると
「いや違うって!!!十字架の装飾物!!!なんかの出っ張り!!刺さってるの額に!!」
そういって悪魔は抵抗した。
「ふふふ、そうやってごまかしても私には通じない・・・さぁ部屋の戻るんだ!!」
彼の体を部屋の中へと戻していった。
そして
「お母さん、これから悪魔祓いをしますので別室で待機を」
女性にそういってこの部屋から離れるように伝えた。
そして彼女は頷き、その言葉通りドアを閉めてその場を去っていく。
その間
「痛い!!!痛いって!!」
と私の手を払いのけた。
そのまま勢いで
「なんなの!?頭!!刺さってるって言ったよね!?何!?悪魔!?」
興奮気味に言い寄ってきた。
それでも私は冷静に
「よしひこ君・・・君には悪魔がついてしまってるんだ・・・だから十字架も・・・」
「いや!!だ・か・ら!!刺さっての何か!!!十字架のなんか装飾的なものが!!!」
私の冷静な対応に焦ったのか言葉を遮って喚きたてる。
たしかに十字架に力が込められている感じがしたので少し装飾はある。
しかしそれだけであんなにも苦しむはずがない。
「あからさまな嘘を・・・悪魔よ私がわからないとでも思ったか?」
「いや!嘘とかじゃ・・・もういい!!とりあえず出ていけ!!」
彼はまたも声を荒げた。
「出ていくのは貴様だ!悪魔!!!」
すると彼は
「はぁ?何言ってんの?悪魔とか・・・そんなのいるわけないだろ!!」
悪態をつき悪魔の存在を否定していた。
だが、これこそが彼に悪魔がとりついている証拠。
「悪魔はその存在を認めない・・・それは君の体に居座るため・・・そんな嘘をついてるのだろ!!」
そう言って彼の中の悪魔を弱わらせるため聖水を手に取る
そして
「おまえなにぃ・・・っておい!!」
ビシャ!
ビシャ!!!
彼に向けて振りまく
「つめた!!!おい!!なにやってんだよ!?おまえ!!」
「これは聖水・・・やはり悪魔の貴様にはつらいだろう?」
ビシャ!!
ビシャ!!!!
再度彼に向けて聖水をかけると
「いや!!冷たいの!!!しかも部屋が水浸しになるの!!!」
「この霊峰富士から湧き出たこの聖水には貴様のような悪魔には堪えるだろ?」
そういうと
「霊峰富士って・・・それミネラルウォーターじゃねぇか!?なんかラベルついてんぞ!?」
彼はわめく
「何を言ってる?これは聖水。しかも今の時代は苦労せずに手に入る・・・貴様を払った後によしひこ君に勧める予定さ。」
「やっぱりミネラルウォーターじゃねか!!コンビニで買ったんだろ!?」
彼の体を通して悪魔は声を張り大きな声を出す。
「ほー、悪魔のくせによくわかったな・・・だがこれはミネラルウォーターではなく霊峰富士に湧き出た聖水だ!!」
その言葉を聞くと彼は肩を落とした。
そして
「もういい。かーさん!!かーさん!!!もうわかったから!!こいつ追い出して!!」
(は!!これはダメだ!!)
私の予感がさわぐ
「よし君!!」
ドアの向こうから女性の声が聞こえた。
「ダメです!!!」
ドアの向こうの女性に強く声を出す。
「ですが・・・」
ドア一枚隔てて女性の不安そうな声が聞こえる。
それに対して
「今この悪魔は彼の体からあなたの体に乗り移ろうとしてるんです!!」
「え!!」
「だから、開けてはいけません!!」
「・・・はい・・・」
力ない声が返ってきた。
すると
「ちょっ!!かーさん!!・・・え?なに?」
彼は困ったように声を落とす。
「やはり企んでいたのだろ?そうはいかない!!」
悪魔は狡猾だ。
しかしプロの私には通じない。
そして弱ってきた悪魔に私は次の手をうつ。
私は聖水から聖油に持ちかえてさらなる追撃をした。
ぴっ!
ぴっぴ!!
「今度はなんだ!!」
彼は驚きながら自分の体にかかった聖油を手にした。
「なんだこれ?なんかスルスル?ヌルヌル?しかもなんか嗅いだことあるような・・・」
そういって訝しながら聖油を観察して言う。
「ん?悪魔のはずなのに聖油が効かない?」
「聖油?」
「ああ、エクストラバージンオリーブオイル・・・バージンな上にエクストラだからね。こんなに清いオイルはほかにはない。」
その言葉を聞いて
「おまぇってオイル!?そんなのまいたら部屋がべたべたになるだろう!!」
彼はそう言いながら聖油を拭きとろうと動く
「無駄だ、悪魔よ!この聖油にてこの部屋を清めた。」
「清めてねぇ~よ!!!逆だよ!!逆!!汚してる!!!」
彼は、いや中の悪魔は私の攻撃のおかげかだいぶ疲れてきたようだ。
そしてぶつぶつと何かを言っている。
「オリーブオイルって調味料じゃねえか・・・」
小声で何か言った後
彼は私に向き直り
「なぁ、あんた・・・頼むからもう帰ってくれ!!」
そういって頭を下げた。
その行動に私の勘がここが攻め時だと感じた。
「だいぶ弱ったようだな・・・ではこれからよしひこ君の体から悪魔を引きはがす!」
その言葉を聞くと
「いや、だからね?悪魔とかじゃないの!?俺はただ引きこもってただけ!!」
そういって私に向き直った。
「その引きこもりも悪魔が光を嫌い部屋に籠っただけだろう?」
そういうと彼は肩を落として
「いやね・・・あの・・・もうわかった・・・続けて・・・」
「観念したな。では悪魔よ!!貴様の名前を言え!!」
この言葉の後彼は
「悪魔の名前って・・・」
彼は躊躇しているように見えた。
「悪魔よ!まだ抵抗するか!!」
「いや、もうなんていえばいいか・・・」
力なく頭を垂れている。
これはもう少しだ
そう感じた私は再び聖水を手にすると
「わあ!!待って!!本当に待って!!もう勘弁して!!部屋をこれ以上汚さないで!!」
懇願の声
「では、悪魔よ!名前を言って彼から出ていくように約束するのだ!!」
彼の中の悪魔はもうかなり弱っている。
もう少し・・・
彼に対してもう一度
「悪魔よ!!彼から出ていくように制約をするのだ!!」
「悪魔の名前って・・・そんな知らないよ・・・」
小声で何かつぶやく彼
そして
「小暮・・・」
「なんだって?」
「悪魔の名前・・・小暮・・・」
「小暮!?」
聞いたことのない悪魔の名前に私が驚きで声が大きくなる。
その声に
「うわ!!嘘嘘!!」
慌てて否定し始めた。
怪しい・・・
まるで名前を隠そうとしている・・・
(小暮・・・聞いたことがない・・・!!いや!!思い出したぞ!!)
私の頭の中でピースがつながった。
「小暮!!もう否定しても遅いぞ!!貴様はマスメディアでも取り上げられてるあの小暮なのだろう!?」
「へぇ?」
彼は拍子抜けた声を出す。
そんな彼、いや小暮を問いただす。
「貴様は一万年近く存在する悪魔・・・テレビや音楽を使い世の中にその存在認知させているという・・・その小暮なのだろう!?」
そのことを小暮に話すと
「いや・・・あの・・・えっと・・・」
躊躇した様子だったがすぐに
「そうだ!!吾輩がこいつの体を乗っ取った小暮だ!!」
さっきの様子とは違い急に堂々とした口調に変わった。
そして続けた。
「おまえもマネキンにしてやろうか!?」
「マネキンだと!?そうか・・・魂を蝕み人として機能させなくさせるということか・・・」
そう小暮に話すと
「いや・・・え?知らない?この感じ?」
彼は先ほどの堂々とした口調から先ほどのよしひこ君のように話す。
「小暮よ!!逃げるのか!!私が逃がすとでも!!!」
聖水を浴びせた。
バシャ!!
「つめた!!だからやめろって!!」
彼の中の小暮は苦しんでいる。
バシャ!!バシャ!!
「彼から離れるんだ!!小暮!!!」
「もう!!わかった!!離れる!!!離れるからもう聖水はやめて!!」
懇願する小暮。
「では、よしひこ君から離れるんだな?」
「ああ、もう離れるから・・・」
よしひこ君の普段の声で力なくこぼす。
「ん?貴様は小暮ではない?」
普通の様子に疑問を口にすると
「ああ、あれね、うん・・・・吾輩はもう出ていく!!」
また先ほどの小暮の口調が戻ってきた。
「観念したか、小暮よ!!」
「ふふふ、吾輩を追い出すとはな!」
そう口にすると
「で?吾輩はどうすればいい?」
小暮は聞いてくる。
「自ら出ていく方法を聞くとは・・・だいぶ効いたようだな・・・私の攻撃が・・・」
「ああ・・・」
そう言ってうつむく小暮
その小暮に私は最後の儀式を行わせる。
「では小暮よ!もうよしひこ君から出ていくと誓うんだ!!」
そういうと小暮は
「わかった・・・吾輩はもう出ていく・・・」
力なさげに答えが返ってきた。
「よし!!もう二度とよしひこ君にとりつくのではないのですよ!!」
「わかった・・・」
そういうとよしひこ君は膝からくずれて肩を落とす。
「よしひこ君!!大丈夫すよ!!悪魔は払いました!!」
その言葉を聞くと
「ハイ・・・アリガトウゴザマス・・・」
抑揚のない声で返事が返ってきた。
それもそうだ。
悪魔に長年とりつかれていたのだ・・・
力がでないのも頷ける。
すると
「神父様!!よし君は!?大丈夫ですか!?」
扉の向こうから女性が応答を求めている。
その声に
「ええ、もう大丈夫です。中へ」
彼女に入室を促した。
すると
「これは!!」
部屋の様子に驚いていた。
だがその彼女に彼はしがみつく
「母さん!ごめんよ!!もう二度悪態とかつかないから!!」
彼はまるで子供化のように彼女にすがった。
「よし君!!よし君!!」
彼に語り掛ける。
その姿に
「よしひこ君は解放されました。悪魔から・・・」
「ええ!!わかります!!よし君が母さんって・・・あぁーよし君!!」
そういうと二人でひしと抱き合い感動に浸ってた。
「数日続くかと思いましたが私の怒涛の攻めに悪魔も耐えきれなかったようです。」
そういうと
「数日!?母さん本当にごめん!!もうこれからはちゃんとするから!頼むからこういうのは今回だけにして!!!」
彼は一層はっきりと主張する。
「ええ、もう二度とよし君に悪魔がつかないようにお母さんも頑張るね?」
母の愛の深さを感じるセリフ
どうやら長居は無用だ。
私はドアに手をかける。
「待ってください!神父様!!!お支払いを!!!」
女性は息子を抱きしめながら私に話しかけてくる。
「いいのです。後日で・・・今は親子の愛を確かめてください」
「ありがとうございます!」
女性の幸せそうな声を背に私はその場を離れた。

私は『エクソシスト』・・・
また小暮と対峙するかもしれない・・・
それほど悪魔は巧妙で狡猾・・・・
今もどこかでやつらは善良な人間に牙をむけてるかもしれない・・・
だが私は諦めないやつらの手から人々を守るため・・・
私はまた悪魔を払うのだ・・・・


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