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理論か、感覚か

音楽分野に限らず、「理論派」と「感覚派」はよく比較されます。
対立する概念として語られがちですが、多くの人はどちらの要素も持っていて、その割合が違うというのが実際のところでしょう。
そしてどちらが優れているというより個性や特性の話であって、それらを活かしていくことこそが大事です。

アンサンブルの練習で曲を仕上げていくのにも、様々なアプローチの仕方があります。
ここでは音楽作りにおける「理論的なアプローチ」と「感覚的なアプローチ」について、自分なりの考えを書いてみます。
言葉の意味からすると間違っている部分もあるので、雰囲気で読んでいただければと思います。

理論的なアプローチ

理論的なアプローチでは、「求められていること」を重視します。

わかりやすいところでは、譜面に書かれていることや作曲者・編曲者の指示に従う、というのが要素の1つです。
強調しておきたいのですが、決してこのアプローチは「機械的に演奏すること」を意味しません。
譜面の情報は画一的に捉えるのではなく、場面ごとに解釈をする必要があります。

  • 強弱としてfやpが書かれている場合、その大きさはどれくらいがいいのか。メロディとしてのfなのか、伴奏なのか。固めがいいのか、やわらかめなのか。

  • アクセントやスタッカートのニュアンスはどの程度なのか。音の長さ、息の鋭さ、タンギングの強さはどれくらいが適切なのか。

  • 速度標語や発想標語が書かれているか。それをもとにどのようなテンポで、どのような表現で演奏すれば最も演奏効果が高くなるのか。

これらはほんの一例ですが、多くの要素についてその背景を含めて1つ1つ考え、どのような演奏にするかを判断していきます。
判断するためには、知識と経験が必要です。それがこのアプローチが理論的である所以です。

しかし個人的な考えでは、譜面や作曲者が求めているものを実現するだけでは不十分です。
このアプローチの本質は、聴き手が求めている音楽を目指すことだと思います。

「譜面に書いてあるからこう演奏した」というのは、時として独りよがりな判断になります。
譜面に書いてあることをどう解釈したらお客さんが求めている音楽になるのか、客観的に考えることが大事なのではないでしょうか。

感覚的なアプローチ

感覚的なアプローチでは、「自分がやりたいこと」を重視します。

ある譜面が与えられたときに、「こう演奏したら魅力的だと思う」という自分の感情に従って表現します。

このアプローチのメリットは、聴き手の期待を超える可能性があることです。
理論的なアプローチでは演奏をできるだけ100点に近づけることはできますが、100点を超えることは難しいです。
感覚的なアプローチが上手く作用した際には、120点の演奏が生まれることがあります。「これが聴きたかった」を超えて、「こんな演奏が聴けるとは」という反応が得られます。

ただし、奏者の感覚が聴き手の求めているものとずれてしまった場合、独自の解釈は「違和感」として捉えられてしまうことがあります。
120点のときもあれば80点のときもある、というのが感覚的なアプローチの特徴かと思います。

それぞれの強みを活かす

冒頭で述べた通り、2つのアプローチはどちらが優れている、というものではありません。それぞれに強みがあります。
曲によってアプローチを変えたり、同じ曲でも2つのアプローチを組み合わせることによって、より面白い演奏を作ることができます。

自分はどちらかというと理論的なアプローチを取りがちです。感覚的なアプローチへの憧れはあるのですが、向き不向きだと割り切っています。
ただ、アマチュア団体ではそもそも100点の演奏というのはなかなか実現できないので、100点に近づけていくことそのものに大きな意味があるはずです。

そして、理論的に突き詰めていった先の演奏というのは決して無機質なものではなく、楽曲の特性が活かされ、表情の変化に富んだものになると信じています。

いずれにしても、アンサンブルでは色々な個性を持った人が集まって演奏します。
それぞれが得意とするアプローチで上手く相乗効果が生まれると、面白い演奏になるのではないでしょうか。

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