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テンポという要素

新しい曲に取り組む際、まずは遅いテンポで「譜読み」を行います。
音の並びを身体に覚えさせていき、だんだんと速度を上げていきます。

一方で音楽表現としてのテンポ、すなわち「本番のテンポ」はどのように決めるべきなのか。
できたなりで臨むケースもありそうですが、基本的にはやはり、意思を持って決めることが大事だと思います。

楽曲にとって最適なテンポ

目標の速さを考える上でまず重要なのは、やはり曲の指定テンポです。
ほとんどの曲では速度標語かメトロノーム記号、あるいはその両方が記載されています。

テンポが数値で指定されるメトロノーム記号であれば、そのテンポで演奏するのが最適であると言えます。
しかし、ただ単に書いてある速度に従うというのも音楽表現としては不十分な気がします。

速度記号には、作曲者がその曲でどのような演奏効果を狙っているかの情報が詰まっています。
速度標語(Andante, Allegroなど)であればそれぞれ意味を持っていますから、そこから作曲者の意図を汲むことができます。

メトロノーム記号であっても、その数値指定に作曲者が込めた意味があるはずであり、それを解釈した上で演奏に反映させることが大事です。
一見書いてある通りに演奏すればいいので楽そうに見えますが、テンポ指定に込められた意図を考える必要がある点で、むしろ速度標語よりも一段階難しいとも言えます。

アマチュアにとって最適なテンポ

もう1つ、テンポに関してはアマチュアが陥りがちな状況があると思っています。
自分たちがやりやすいテンポで演奏した結果、遅く吹きすぎるというケースです。これは速い曲でもゆっくりな曲でも、どちらの場合でも発生します。

速い曲の場合は、音を並べるのが難しいから少しテンポを落として演奏しよう、という場合が多いです。
確かに音は正確に並びやすくなりますが、ただそれだけを目指してしまうと単調で退屈な演奏になってしまいます。

指定テンポが速い曲は多少精度が落ちたとしても速く演奏した方が、曲の雰囲気が出てきて面白くなることが多いです。
とはいえ崩壊してしまっては元も子もないので、バランスを考えて速さを決める必要があります。

ゆっくりな曲の場合は、遅く吹きすぎて間延びした演奏になってしまうケースが多いです。
これは「自分で音楽を前に進めていこう」という意思が弱い場合に発生します。

プロの奏者だったり表現力が豊かな人であれば、遅いテンポで演奏したとしても「間」を表現で埋めることができるため、魅力的な演奏になります。
しかしそのように曲を通して隙間なく音楽表現をすることは、アマチュアにとっては難易度が高いことでもあります。

音楽を前に進める意識を持つことくらいであれば、多くの奏者が可能ではないかと思います。
テンポを前向きにすれば音楽表現もしやすくなるので、その場にとどまらない意識が大事です。

意思を持ってテンポを決めること

いずれにしてもテンポは曲の最初から最後まで演奏効果に影響を与えるので、数ある音楽要素の中でもかなり重要な要素です。
何となくでちょうどいいテンポに落ち着く場合もありますが、それが演奏効果という点で最適なのかは、意識しておいて損はないと思います。

アマチュアの場合には前述の通り、意識的にテンポ設定を速めにした方が良いケースが多いと思います。
奏者の都合でテンポを落とすというのは、難易度を下げているように見えて、演奏効果という点ではハードルを上げているとも言えます。

ただ、そのように速いテンポで曲を仕上げた結果、本番で速くなりすぎる…ということもこれまで多々ありました。
ある程度のライブ感はつきものですが、最適なテンポに落ち着けるのはなかなか難しいなあと思います。


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