Kronprisen som försvann（消えた皇太子）第1〜5話の気になる表現

スウェーデンでは毎年、SVT（スウェーデン公共放送）が12月1日から24日までJulkarendern（クリスマスカレンダー）という子供向けの15分程度のドラマを放送しています。1970年からだそうなので、もう50年以上の伝統があります。もちろん出来不出来があって去年のは途中で見なくなってしまいました。今年のKronprinsen som försvann（消えた皇太子）はなかなかよく出来ていて、続けてみています。せっかくなので毎日気になった表現を取り上げて、twitterで紹介しています。noteでは5話ずつまとめて紹介します。

今年のjulkalendern は面白そうですね。アドベントカレンダーには乗り遅れてしまったけれど、毎日気になった表現を紹介していこうかなと思います。 https://t.co/npowOewF5Z

— Takayuki Tohno (@TakayukiTohno) December 2, 2022

第一話　敬称の三人称代名詞

第一話3:06
召使いが眼前にいる公爵夫人のAugustinaに対して
”Vill hon bli visad till sitt rum?”「お部屋をご案内いたしましょうか？」duではなくhonが使われています。身分が上の者に対して、duを使わず、三人称を使うというルールがかつてあった時の表現です。https://t.co/KVboalm4Z6

— Takayuki Tohno (@TakayukiTohno) December 2, 2022

この用法は1900年代前半くらいまでの小説にも出てきますので、知らないと誰を指しているのか分からなくなります。

第二話　sjuttonのイディオム

第二話4:50
“Ge sjutton i äpplena” ナイフでリンゴを切っているのを見て「リンゴ(を切るの)はやめて」。ge sjutton i … 「〜をやめる」という意味のイディオム。sjutton は数詞で「16」ですが、fy sjutton! 「ちくしょう」などのように罵り言葉で使われることも。https://t.co/91Ddr4VXEM

— Takayuki Tohno (@TakayukiTohno) December 3, 2022

ツイートに間違いがあります。
sjuttonは16ではなく17です。

第三話　従属節のän

第三話 12: 55
Var du än gömmer dig. 「どこに隠れようとも」
副詞än は一般的にinte … än 「まだ〜ない」のように使われますが、従属節で動詞や助動詞の現在形・過去形の前（従属節で否定のinteが現れる位置）に置かれると、譲歩「〜しようとも」の意味になります。https://t.co/PeqMVyAWbq

— Takayuki Tohno (@TakayukiTohno) December 4, 2022

短い語なので見逃してしまいがちですが、よく出てくる用法です。

第四話　トイレを表すdass

第四話 00:40
Ville: Hilda, er toalett har gått i baklås. 「ヒルダ、化粧室の鍵が引っかかってるみたい」
Hilda: Toalett?「化粧室？」
Ville: Eller dasset.「えーと
トイレ」
Toalett はフランス語から。dass はドイツ語の das Haus から。婉曲的に表現し、さらに冠詞だけ残して作られた単語。

— Takayuki Tohno (@TakayukiTohno) December 5, 2022

ドイツ語の冠詞が元になった珍しい語です。ett dass は「便所」と訳した方がいいかもしれません。utedass「外にある便所」という使い方もあります。sommarstugaなどでトイレだけ外にあるやつですね。

第五話　smörのイディオム

第五話 00:59
Vi kommer aldrig upp i smöret. 「決してうまくいかないぞ」
辞書には「裕福になる」とあります。成句の由来は、昔一つの皿で粥を食べた時に真ん中にバターを沈めて溶けると穴が出来、そこをみんな欲しがったことから。https://t.co/m3JxrSQuAo

— Takayuki Tohno (@TakayukiTohno) December 6, 2022

かつて、バターは高級品であったのでしょう。