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自#148|斧を投げても最終的に勝利するのは資本主義(自由note)

 「アップルに斧を投げたフォートナイト。この戦いに勝者はいるか」と云う記事のタイトルを、週刊プレイボーイで見つけました。アップルは、もちろんあのアップルだと思います。つまり、スーパーで売っているそれではなく、アメリカのIT系の会社です。フォートナイトの意味は判りません。判りませんが、勝者はいるだろうと、まず仮説を立てました。

「フォートナイト」は、どうやらバトル系のゲームのようです。100人のオンラインプレイヤーが集まり、仲間と共闘し、他者を殺害することで生き残り、最後まで残ったら勝利です。さまざまな武器を探したり、建造物を造ったりして攻守を組み立てます。基本は、無料でプレイできますが、オプションでスキンと云う着せ替えのぬいぐるみも、有料で購入できます。ぬいぐるみを着用すれば、当然、防御率は高くなる筈です。ゲーム内で、イベントも開催され、先日のイベントでは、米津玄師さんが歌ったそうです。米津さんは、今や日本のトップアーティストです。そんな大物を使えるゲームは、かなり著名な筈です。が、ごく普通の平凡な知識人の私の頭には、「フォートナイト」と云うゲーム名は、stockされてませんでした。世界中で、3億5千万人のプレイヤーがいるそうです。3億5千万人と云うのは、超ド級の巨大な数字です。家族でアカウントを使い回しているケースもあるでしょうし、実際にゲームに携わっている人数は、もっと多いと推測できます。開発元のエピックゲームズ社の時価総額は、2兆円近く。巨大なゲームですし、巨大なゲーム会社です。が、朝日新聞、アエラ、週刊文春、月刊文藝春秋くらいの情報媒体にしか接してなかったら、フォートナイトのゲーム名にも、エピックゲームズ社の会社名にも、出会いません。私は、毎週月曜日、週刊プレイボーイを買っていますが、グラビアアイドルの水着姿や、綴じ込みのプチマイナーなアイドルのDVDを見たいわけではなく、通常のジャーナリズムでは、扱われない情報にアクセスするためです。

 3億5千万人もプレイヤーがいる「フォートナイト」は、世界定番のゲームと言っても過言ではないと思います。この世界定番のゲームが、突如、アップルとグーグルのアプリストアから、削除されたそうです。アップルやグーグルが設定するアプリ配信は、30パーセントの手数料を徴収します。この手数料は、アプリ内でのアイテムの課金の場合も発生します。つまり、「フォートナイト」ですと、プレイヤーがスキンを購入した時点で、30パーセントの手数料を取られてしまうわけです。これは、納得できないと、エピックゲームズ社は、アップルやグーグルのアプリストアに依存しない、独自の決済システムをゲーム内に実装し、30パーセントの手数料の引き下げも要求します。つまり、斧を投げて戦いを挑(いど)んだわけです。アップル、グーグルは、即座に反撃し、規約違反だとして、「フォートナイト」をアプリストアから、削除しました。削除された日に、エピックゲームズ社は、動画を公開します(当然、あらかじめ準備していたわけです)。ジョージオーエルの「1984」のように、そこには、アップルの支配に抗(あらが)う女戦士が描かれています。アップルが世界を支配し、その管理社会に人々は従順になっているんですが、女戦士は、素朴な斧を武器にして、戦いを挑みます。これは、アップル社が、1984年に、IBMの支配に対向して制作したCMのパロディです。このヘンの遊び心は、いかにもアメリカ的です。

 ところで、アマゾンは、電子書籍や動画をアプリ内では購入出来ない仕組みにしてあるそうです。アプリ内で購入すると、30パーセントの手数料を取られます。アマゾンは、ブラウザからコンテンツを購入してアプリと同期させて、支払いをすると云うシステムで、手数料を回避しています。エピックゲームズ社にしてみれば、「アマゾンのあれが許されるなら、ウチだってOKの筈だ」ってことに当然、なります。エピックゲームズ社は、アップルとグーグルを提訴しています。おそらく、アップル、グーグル側が負けると推定できます。これがきっかけで、巨大プラットフォーム会社叩きが始まれば、それはそれで、面白いことになりそうです。

 30パーセントの手数料に見合った仕事をしているのかと云う点も、論争になりそうです。ゲーム、動画、音楽などのエンタメコンテンツを扱う企業は、アプリストアの著作権管理が、ゆるいと判断しています。つまり、パクリで作った類似の作品や海賊版が、野放し状態になっているんです。30パーセントも「みかじめ料」を取っておいて、これはないだろうと不満を持っているんです。ちなみに、中国のテンセントは、任天堂と提携していますが、マリオ似のキャラがアプリにあれば、テンセント法務部が、即座に排除します。管理が行き届いた中国の企業ですから、海賊版対策も徹底しているんです。テンセントに比較すると、アップルやグーグルの30パーセントの手数料は、ただのぼったくりで、みかじめ料的な機能は、果たしてないと言えそうです。

 ちなみに「フォートナイト」は、PCでもプレイステーションでもニンテンドウスイッチでもプレイできます。つまり、アプリの利用者は、one of themで、ガチユーザーは、基本、PCでプレイしています。スマホにさほど依存してないので、斧を投げることができたと云う言い方もできます。

 30パーセントの手数料は高すぎると、多くのコンテンツブロバイダーは、考えています。ドコモのiモードの手数料は9パーセントでした。ネットに詳しくない素人の判断でも、30パーセントの手数料は高すぎると理解できます。音楽配信サービスのスポティファイは、エピックゲームズ社を支持する声明を発表したそうです。が、ほとんどの会社が静観しています。心の中では、エピックゲームズ社を応援していても、表立って支持を表明すれば、今後、いやがらせされるかもしれません。と云うか、多分、されます。独占禁止法に抵触して、アップル社やグーグル社が敗訴したとしても、対抗する手段は、いくらでもあります。手数料に差をつけておいて、手数料の安いアプリは、審査の期間をforever長くすれば、安い手数料を選んで来る会社を、実質、排除できます。

 今回、エピックゲームズ社が、斧を投げることができたのは、スマホに依存してないからです。スマホのアプリだけで稼いでいて、プラットフォーム会社に閉め出されたら、即、退場です。小さな個人商店が、狭い範囲内でビジネスをする場合は、まあ、人を信頼して地道に仕事をして行ってもいいと思いますが、世界的な規模のグローバルなビジネスですと、まず、相手を信用しない、いつ裏切られるか判らないと、性悪説に立って、日頃からリスクを分散しておくことが、絶対に必要です。性善説に立って、正義を貫き通せるのは、陶淵明の「桃花源記」に登場するような小さなコミュニティの場合のみなんです。 この戦いは、エピックゲームズ社が、取り敢えず、勝利するとは思いますが、結局は、金は、どこかに落ちて行きます。最終的に勝利するのは資本主義です。誰が儲かっても、同じです。中国でさえ、バリバリの資本主義の国なんです。地球環境が、壊滅的に破壊されるまで、資本主義が勝ち続けると考えるのが、まあ普通かなと思ってしまいます。

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