公#3「運転免許証は、もう40年以上、ずっとGoldなのに、グランツーリスモⅡにchallengeすると、一周、9分58秒かかりました。ゲームをやったのは、後にも先にもこれ一回だけです」

               「公共3」

 2Eのハッピーライドは、ちゃっちいプラスチックの安全ベルト代わりのチェーンが付いていました。安全ベルトを着用した後、人力で回転がstartします。私の体重が重いと判断したのか、私が座っている椅子に装着した横棒は、男子が押して廻してくれました。
 回転が始まると、遠心力で外側に飛び出しそうになりました。内側に身体を倒して、バランスを取りました。見た目よりも、実際の回転速度は速く、少しずつ三半規管が麻痺していくのを感じました。見た目はしょぼくても、去年の3Aのコーヒーカップよりも、はるかに過激なアトラクションだと理解しました。
 その内、少しずつ気持ちが悪くなりました。もし、お昼を食べて、すぐにライドしていたら、嘔吐物が回転に合わせて、ぴゅーと宙を舞っていたのかもしれません。そうすると限りなくシュールな感じですが、私は、昼食は摂りませんし、朝食を食べてから、相当な時間が経過しているので、胃の中には少量の水しか入ってません。その少量の水が、こぼこぼと揺れている感じでした。
 で、回転が止まって、チェーンを外して立ち上がったんですが、三半規管が完全に麻痺していて、まっすぐには、歩けませんでした。正直、気持ち悪くて、そこがツボで、嵌(は)まりました。「うわぁ、めっちゃ酔った。気持ち悪い」と、叫んで、嘔吐したら2Eの教室に爪痕(つめあと)を残せたと思いますが、ただ、バランスを崩して、ふらふら歩いただけでした。
 次は、すぐお隣の2FのFARIO カートに挑戦しました。これは、これはちっちゃなカートに乗って、speedを競うゲームのようです。受付で「カートは、ヨッシー、ぷよぷよ、マリオの三種類あります。ヨッシーが一番速いのでぜひ、ヨッシーでchallengeして下さい。今、最短時間は14秒です」と、アナウンスされました。
 私がかつて、K高校で高2の担任をやっている時、プレステⅡが発売されました。ゲーム好きの男子がプレステⅡとグランツーリスモのソフトを教室に持ち込みました。グランツーリスモは、生徒は50秒台くらいで一周しています。ペーパードライバーなので、ずっとゴールド免許証の持ち主の私が挑戦すると、一周するのに9分58秒かかりました。そこから類推すると、私は生徒の10倍くらいは時間がかかりそうです。生徒が14秒なら、自分は140秒くらいだろうと予測して、それでも一番速いヨッシーにrideしました。途中、輪投げがあり、全然、入りません。で、極端に的との距離を短くして、何とかクリアーしました。次の課題の絵合わせは、たまたま1回目でペアが出ました。どれくらいのタイムでゴールしたのかは覚えてませんが、140秒はかかってない筈です。
 一番奥の部屋は、2GのRoller Ghoster。要するに台車に乗って巡るおばけ屋敷です。ここは、30分くらいは待ちました。最後尾の人は、幽霊のお面を持つことになっています。受付で、「信じなかったり、バカにしたりしてはいけない」と注意を受けました。中に入って、台車に乗ると、カンテラを渡されました。右手でカンテラを持って、それで道を照らしながら、進んで行きます。
 漱石に「坑夫」という小説があります。カンテラを照らしながら、鉱山の奥に進んで行きます。まあ、それに少し似ていました。墓を拵えていました。こんにゃくで首筋を撫でたりってことはなかったんですが、手はあっちこっちから、にゅっと出て来ました。JKが定子みたいなノリで、穴から這い出て来ました。「きゃー」とかという声も聞こえました。最後、出口の外に集まっている男子たちに「うわぁ」と驚かされるんだろうと予測して、機先を制して、こっちが、先に「うわぁ」と、声を出しました
 最後に2Dのサハライトイアーのアストロブラスターに廻りました。昇降口のポスターには、BLASERSと表記していました。つまり、BLASTERSのTが落ちているんです。英語の先生のクラスで、スペリングを間違えるのは、ヤバいだろうと、突っ込みたくなりました。
 アトラクションは、椅子に乗って移動しながら、銃を撃ちまくって、得点をgetするゲームです。銃には三発、弾をこめることができます。が、一発撃つと、ホルダーを手動で廻す必要があります。で、弾を撃つ前にレバーを手前に引きます。弾がなくなれば、弾をこめます。つまり、弾をこめて、ホルダーを廻し、レバーを引く、そして的に弾を当てて、得点をgetするというマルチタスクを、次々と、重ねて行く必要があります。こういうことは、子供は得意だし好きです。近所の子供たちが、沢山、文化祭に来てくれる学校であれば、こういうアトラクションは、お化け屋敷以上に人気を博するのかもしれませんが、今勤めている学校は、近所の子供達が、どんどん遊びに来るという学校ではなさそうです。 この後、修学旅行関連の展示発表を見に行きました。二階の体育棟に向かう渡り廊下に生徒が調べたレポートを貼り出しています。そこを通っている保護者&中学生が、「うわぁ、すごい」などと声は出しているんですが、ちゃんと立ち止まって見ている人は、ほぼほぼ皆無です。「うわぁ、すごいんだったら、立ち止まって、せめて一人か二人くらいの発表をちゃんと見てあげたらどうですか?」などと、お節介なことを言う資格は、私にはありません。
 私も全部は見てませんが、かなり時間をかけて、全体の三分の二くらいは見ました。もうこういう形で、紙ベースで発表するということは、今後はなくなって行くんだろうと想像できます。バランス良く書けている生徒は、おそらく、タブレットで図案を一度、まとめています。それをもう一度、紙に清書することは、私個人は充分、意味があることだと思っていますが、一般的なコスパ、タイパの考え方からすると、時間とエネルギーの無駄使いです。
 文化祭後も展示していたら、残りの三分一も見るつもりです。人物テーマの方が、やはり面白いです。生徒それぞれ、捉えどころが違っていたりして、それが、各個人の視点の違いだと感じます。
 活字と違って、手書きは、読むのに苦労しますが、どちらがより価値があるかというと、それは、圧倒的に手書きの方です。手書きは、やはりレポートを書いた生徒の人柄を、字のスタイルの中で、垣間見ることができます。

いいなと思ったら応援しよう!