自#299「文章って、嘘をついたり、悪口を言ったり、文句を言ったりする方が、全然、やり易いんです。文章でネガティブなことを言わず、ディスったりしないようにするためには、それなりの修練が必要です」

「たかやん自由ノート299」

ゲームプロデューサーの鈴木達也さんのインタビュー記事を、週刊プレイボーイで読みました。鈴木さんの写真が掲載されています。目の下に隈ができています。日々、ハードな仕事をされているんだろうと推測できます。1973年生まれですから、今年、48歳。が、48歳とはとても思えなくて、小学校3、4年生のように、瞳がきれいです。小学校3、4年の時に、ゲームが好きになって、その初心を忘れず、ひたすらゲームの面白さを追求し続けて来られた、真のゲーマーの方なんだろうと想像できます。

 ゲーム業界25年の「老兵」だと自己紹介している鈴木さんは、小4の時、ファミコンに出会ったそうです。で、ファミコンゲームにはまります。まあ、これはあるあるです。鈴木さんがすごいのは、即座に、プログラムを学びたいと考えたことです。普通の人は、コンピューターの名称は知っていても、コンピューター自体は見たこともなかったし、プログラミングと言う言葉も、プロフェッショナルな方しか使ってなかった筈です。静岡県の片田舎に住んでいた鈴木さんは、地元の書店で専門書や月刊誌を買って、隅々まで読んで勉強したそうです。

 高校を卒業して情報系の専門学校に進み、1年目に情報処理技術者試験の一種に合格します。専門学校に進学する前に、独学でプログラミングを学んでいましたから、スタート時点で、他の学生とは違っています。それと、資格試験と言うのは、ペーパー試験ですから、座学で独学した方が、最短で合格のゴールに辿り着きます。

 情報処理技術者試験の一種に合格すると、免許皆伝で、学校に籍を置いたまま、いろんな企業でバイトをするようになります。バイト先の企業で、プログラムを書いて、実践力をつけて行くんです。これは、音響系なども同じで、専門学校で、ベーシックな基礎を学ぶと、その後は、外でバイトです。実践力をつけるためには、現場で修行をするのが、ベスとです。

 当時、ゲーム開発は「アセンブラ」と云う言語を使っていたそうです。「アセンブラは、CPUに直接命令できるマシン語という数字の羅列を、ワンステップだけ人間寄りにしたような、低級言語です」と、鈴木さんは説明しています。鈴木さんが、専門学校を卒業した1993年頃は、今まさに、ケータイがブレイクする直前でした。ゲームよりも、ケータイの方に、優秀な人材が持って行かれたと想像できます。鈴木さんは、富士通に入社して、携帯電話のプログラムを書いていました。

 ですが、本来のゲームの世界に進むために、富士通をリタイアして、SIE(ソニー・インタラクティブ・エンタティメント)に入社し、ゲーム開発に従事します。鈴木さんがSIE時代に作ったゲームのひとつが、「無限回廊」。錯視に注目したゲームだそうです。SIEで多くのゲームに携わったあと、ゲーム会社を立ち上げます。現在は、他社のゲーム制作を手伝ったり、ゲームに関する何でも屋のように仕事をしているようです。

 自分の会社で初めて作ったスマホゲームが、「シンゾウアプリ」。このゲームは、キャラクターのグラフィックは一切なくて、声だけでストーリーが展開します。呪いをかけられたどこかのイケメンの心臓が、スマホに乗り移っていると云う設定です。インタビューをしているのは落合陽一さんなんですが、落合さんがダウンロードしてプレイし始めたら、心電図表示に合わせて、スマホが「ドクン」と震えるそうです。落合さんは「絶妙に気持ちが悪くて、最高です」と賞賛しています。自分のスマホが、心臓になるのが、最高になる人と、or notな人とが、いると思います。マニアックで、万人向きじゃないと云うとこが、きっとこのゲームのツボです。コアなファンを魅了しそうです。

 そもそも、ゲームというのは、キャラクターのグラフィックと、プロットがメインだと思うんですが、グラフィックが一切ないと云うとこが、意表を突いています。鈴木さんは「美麗なグラフィックで攻める、従来の恋愛シュミレーションゲームに対する、アンチテーゼをやりたかった」と語っていますが、小さな会社なので、グラフィックにあまり予算がかけられないと云う現実問題もありそうです。実際、プロの有名作家にキャラクターデザインを依頼すると、費用が高くなるので、エンタメ業界は、イラスト投稿サイトのPixivから将来性の高いアマチュア作家を一本釣りしたりもしているそうです。中国のエンタメ業界も同じことをやっていて、中国の大企業から、PiXivを買い取りたいみたいな話も、あるようです。中国も、2020年にアクションRPG「原神」を作り出して、本格的にゲーム制作に乗り出そうとしています。

 私は、ゲームはやりませんが、グラフィックの進化のスピードには、正直、ついて行けない気がしています。週刊プレイボーイの別のページに、サブスク動画快適視聴アイテムの記事が掲載されていて、高品質の映像を楽しむために、パナソニックTH-55HZ1000と云う20万円の有機ELテレビを推奨しています。55インチ、もちろん4Kです。有機ELテレビは、液晶テレビよりも、暗い部分の表現力が優れているそうです。私も、時々、吉祥寺のヨドバシで、4Kや8Kの画面を見たりしますが、やたらと明るくて、色はきれいだけど、奥行きがなくて、こんなの見続けていたら、ちょっと単調だなと思ってしまったりします。明るさでごまかしていると感じていたんですが、そこを、ある程度、改良したのが、おそらく有機ELテレビなんです。

 とにかく、グラフィックは、大発展しています。鈴木さんは
「もっと低コストで、グラフィックが使えるようになって欲しい。現実世界をデジタルに取り込んだ、もうひとつの世界「ミラーワールド」が、もうすぐそこまで来ているような時代。クラウド上に、地球全体のロケーションが8Kクラスに堪えうるデーターとして存在し、作る側はカメラを持ってその中にロケをしに行く。そうすれば、絵素材を作る必要性は低くなります」と、希望を語っています。技術的には開発可能かもしれません。が、グラフィックで莫大な利益を上げているわけですから、資本主義的には、難しいだろうと想像できます。

 サブスク動画快適視聴アイテムで、BOSEのノイズキャンセリングワイヤレスヘッドホンが、3万未満程度ってことで、推奨されています。低音がパワフルで、高音がシャキっとした傾向に仕上がっていて、幅広い層の人が楽しめると、説明してあります。えっ、コレって、ただのドンシャリじゃんと思ってしまいました。グラフィックの偏差値が70超えだとすると、音響のそれは、40にも届いてないって感じです。グラフィックと音響との格差、どうにかならないの? と思っているのは、私だけではない筈です。

 落合さんは、「スマホゲームのガチャより、SNSの方が有害だと思う」と問題提起しています。スマホゲームのガチャは、金銭上のトラブルで、SNSの害は、精神上のトラブルですから、まあ、比較は簡単ではないと思います。鈴木さんには、高1と、中1の二人の息子さんがいて、当然、めちゃめちゃゲームをしまくっているんですが、必ずボイスチャットをしながらプレイをするそうです。二人は、小学生の時、Minecraftでボイスチャットを覚えて、知らない人とも、ボイスチャットをしながら遊ぶそうです。そうすると、ゲームをしながら、コミュニケーションも、同時にしていることになります。まあ、これは、ゲーム世代のコミュニケーションの、ひとつのスタイルなんだろうと想像できます。文字ベースのSNSより、ボイスチャットを使ったゲームの方が、ディスりは圧倒的に少ないそうです。それはそうです。嘘をついたり、人の悪口を言ったり、ディスったりと言ったことは、話す言葉よりも、文字で書く文章の方が、親近性が高いんです。文字を使った文章で、ネガティブなことを書かなかったり、ディスったりしないようにするためには、かなりの訓練が必要です。

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