自#367「教師として外側から見る限り、男女交際は、女の子の方が(最後は妊娠しますから)圧倒的に不利です。が、恋愛で賢くなるのは、女の子の方です。男たちは、恋愛では、たいして学習しません。また、その失敗パターンかよと言ってしまいたくなるようなケースが、結構、あります」
「たかやん自由ノート367」
以前の学校で同僚だったY先生が、多摩地区の高校で学級担任をしていて、学級通信を書いています。私にも学級通信をメールで送って来てくれるので、毎回、楽しみに愛読しています。私は、36年間、学校現場で仕事をして来ました。自分自身の担任時代も、嫌というほど(生徒の多くは、うわぁ、また来たよ。飽きもしないで、よく書くよね・・・だったかもしれませんが)学級通信を書きました。学級通信に対するノスタルジックな(今、『あーっ、ノスタルジックだね』と言う教え子が作った曲が、頭の中で鳴り響いています)思いもありますし、長年、本を読み続けて来たので、文章に関しては必要にしてかつ充分なリテラシー能力もあります。read between linesだって、無論、できます。学級通信を読めば、その学年のそのクラスの雰囲気、立ち位置が判ります。クラスのキャラは千差万別なんですが、基本の立ち位置は、どこの学校のクラスでも同じです。金太郎飴のようなものです。Y先生のクラスの立ち位置から、今日、この後(ちなみにこのノートは、学校に登校する前の早朝に書いています)自分が教える2年生のクラスの立ち位置を類推することができます。Y先生の学級通信を読んで、2年生は、クラス替え後の不安でいっぱいのオーラに包まれながら、緊張しつつ様子を見て、周囲のクラスメートとコミュニケーションをし、新しく教わる先生を見定めようとしている筈です。こちらは、最初の授業だから、ぶちかましたいと云う欲望もあります。が、初回からぶちかますと、その後息切れします。
もう4半世紀以上前ですが、今勤めている学校のすぐ近所にある、K高校に赴任した時、初回の2年生(2C)の授業で、水を持参することを忘れて(喋る前に水を飲むのは基本です)「うわぁ、水、持って来るの忘れた。じゃあ、まあ花瓶の水を飲むか」と、花瓶に挿してあった花をいったん抜き取り、花瓶の水をどわっと飲みました。どろどろのスープのような水でした。「ダメだよ、それ、春休み中、ずっと置きっぱだった花瓶なんだ」と、留年生のYくん(彼と一番最初に仲良くなりました)が、注意してくれたんですが、後の祭り茶屋でした。もう、どろどろは飲み干して、胃の中に収まってしまっています。が、どんな場合も、ネガティブに陥らないことが大切です。Y先生の学級通信にも「ネガティブな感情に引っぱられると、ネガティブがネガティブを呼び、さらにネガティブを加速させます。ネガティブは伝染しますから、周囲もどんどんネガティブになります。不安になるクラス替えの時期は、全員がポジティブに過ごすことができるように、心がけて下さい」と釘を刺してあります。
「花瓶の水が、腐ってるとかって、上等!! 『オレがやりてぇーのは、楽な道のりじゃねェ。険しい道のあるき方だ』(by NARUTO)」とも言わず、「綾波レイがオレを守ってくれる」とも豪語せず(エヴァンゲリオンのテレビ版を放映していた頃です) 、取り敢えず、一曲歌うかと、オハコの「桃太郎の歌」を歌ったかどうか、それも定かではないです。腐った花瓶の水を飲んだことだけは、確実です。その後、精神力で何とか持ちこたえましたが、大過なく過ごすことが要求されている公務員にしては、リスクの高すぎるactivityだったと、自覚しています。が、衝撃的なデビューってことで、そのクラスの生徒には、バカ受けしました。一瞬のバカ受けのために、お笑い芸人のように身体を張る、これから先生を目指す、良い子のみなさんは、決して、真似をしないで下さい。腐った花瓶の水を飲まない、これは、「(学校の生徒は)教室からウーバーの出前を頼まない(出前館だったらOKなのかみたいなへ理屈はやめて下さい)」「職員室の横の廊下で、お誕生日のパイ投げをしない(たとえ後できちんと掃除をしたとしてもです)」「教室のカーテンの陰でタバコを吸わない(高2の時、放課後、2年3組の教室のカーテンの陰でタバコを吸ったMくんは、大学6年生くらいの頃、母校に教育実習に来て、私が面倒を見たんですが、その後、行方不明です。このノートを読んでいたら、連絡下さい)」などと同様、ガイドライン(カーテンの陰でタバコを吸わないはルールです)と思っていただいて構いません。
「大して好きでもないのに、ステータス欲しさと寂しさを紛らわすために彼氏彼女を作らなくていい」とY先生は、忠告されています。私が教師になった頃、世の中はバブルでした。ジュリアナ東京で扇子を持って、お立ち台の上で踊っている子は、教えているクラスの中にもいました。バブルの頃のクリスマスに大流行していたのは、ティファニーのオープンハートのネックレス。12月のクソ寒い時期なのに、胸元を開けて、オープンハートをちゃらちゃら見せびらかす、そんなチャラ女が、いっぱいいました。オープンハートはクリスマスですが(あっ、ティファニーはクリスマスクリアランスと言って、クリスマス前にバーゲンセールを実施するんです。オープンハートは、下々の庶民向けのバーゲン品です)17歳の誕生日までに、ティファニーのシルバーのリングを貰わなきゃいけない、二十歳の成人式までに、やはりティファニーのゴールドのリングgetしなきゃいけないといったまことしやかな、都市伝説が流布していました。その頃、親しく喋っていた高2のI子が、「先生、ヤバいよ。誕生日まであと1ヶ月しかないのに、まだシルバー来ないよ」と、周章狼狽していました。高2でシルバーをgetした女の子は、シルバーをはめた指も使って、これみよがしにポケベルを打ったりしてました。恋愛の目的が、男女がお互いの人格を磨き、高め合うとかと云った倫理的・精神的なものではなく、シルバーのリングやオープンハートのリングをとにかくもらうと言った風に、唯物化してしていました。それが、バブルでした。男子たちは、バイトに励んでいました。その頃、上野や御徒町の高校生の時給は1200円~1300円くらいでした(ファーストフードやファミレスなどの普通のバイトです)。スキー教室に着て行くウェアは、カンサイマンだったり、ケンゾー、キクチ、イッセイミヤケとかでした。
80年代と今とを較べると、日本の世界における相対的な経済力は、半分くらいに落ちています。つまり相対的に貧しくなったと言えます。貧しくなったのなら、おしんのように、大根飯とか食べればいいかなと、もともと、貧乏だった私は、さして意に介してません。貧しくなったことが、悪いことだとも思いません。ただ「本当の自分を隠して、Instagramで、盛った写真をアップし、ウソの地位を築くなんて恥ずかしいこと」をしてる場合じゃないだろうとは思います。
Y先生のガイドラインのサビだと思われるのは「交際禁止」、つまり男女交際の禁止です。担任のとこに「子供が(お腹の中に)できちゃったんですけど」と、相談に来られても、そりゃ、担任も困ります。私だって、担任としてそういう経験が、ないわけでもありません。最初の学校の担任クラスの生徒は、中退して、子供を産みました。子供が一歳になった時、サンシャインビルで結婚式を挙げて、私も招待してもらいました。新婦のお母さんに「娘がきちんと学校を卒業したという『てい』でスピーチをお願いします」と、頼まれていました。高2の途中で中退したのに、高3の文化祭では、毎日、遅くまで学校に残って、本当に大活躍してくれました」みたいな作り話を、いけしゃあしゃあとしました(仮定法過去完了の反実仮想っぽく語って、語尾をファジーにしたので、嘘を言ったというわけでもありません)。たまに、ウソっぽいことを言うのも楽しいものです。が、花嫁は、やっぱり頑張って卒業しておけば良かったかなと、ぼそっと言ってました。完全に周囲には隠して、無事、子供を産んで、卒業もさせる、担任として、それくらいのテクニックは、当時の私にはありました。「本当だよ、オレのテクニックの持ち腐れじゃないか」と、ぼやきたくなるってとこもありました。まあ、もうそんな難度の高いスキルを発揮する必要もないし、これも、ノスタルジックな過去の思い出です。