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教#060|自我を崩壊させないで、生を全うすると決めている~マンガで分かる心療内科を読んで①(たかやんnote)

 ゆうきゅうさん原作で、ソウさんが作画した「マンガで分かる心療内科」を、何冊か読みました。心療内科は、心の問題を扱う病院です。心の問題を、病気と簡単に言ってしまって、いいのかどうか、正直、解りません。ただ、心の問題を相談する場所はあった方がいいし、心療内科は、こころの問題を相談できる、ひとつの場所だと、私は考えています。が、病院によって、対処方法は、違うでしょうし、心療内科のお医者さんや看護婦さんとだって、合う、合わないってことは、当然、あります。自分に合った心療内科や、カウンセラーさんを探すと云う努力も、本当は、必要です。たとえば、うつになったら、もう自分では動けなくなるので、元気な内に、何かあったらここに相談しようと、複数の病院やカウンセラーさんを、リストアップしておけば、備えあれば憂えなしって気もします。

 ある学校で1年の担任をしている時、Kさん(イニシャルは違います)と云う女子生徒のお母さんが、うつで、心療内科にかかっていました。Kさんのメンタルは、不安定なんですが、それは、Kさんママのメンタルが、そうだからです。Kさんのメンタルを安定させるためには、Kさんママのサポートをする必要があります。

 クラスには、50人の生徒がいます(当時は50人学級でした)。その50人の中の2人くらいだったら、生徒の親のサポートはできます。3人になると、相当、きつくなりますし、4人になると、忙しくなり過ぎて、自分自身が壊れてしまいます。あまりにも忙し過ぎると、自分自身に限度を超えた負荷が、かかってしまうんです。これは、教職じゃなくても、どの職種でも、あてはまる普遍の定理です。

 自分が本当に好きなことだったら、壊れぬくいし、あるいは壊れないかもしれません。私は、高校生のバンドが好きでしたし、バンドをやる生徒が好きでした。部活の顧問の仕事は、どんなに忙しくても、壊れないと云う自信がありました。ですから、夏休みの40日間の間に、50個くらいイベントがあっても、一個一個、それなりに楽しんで、超忙しいスケジュールを、こなしていました。

 ですが、担任の仕事は、忙し過ぎると壊れます。生徒や保護者のメンタルを支えるためには、莫大なエネルギーと時間を使います。相手が、抱えている問題が、自分自身、未解決の問題であれば、生徒or保護者の問題が、自分自身の問題として、再燃します。これを、心理学用語では、逆転移と言います。私の場合、女子生徒や、そのお母さんのケアは、リスクなしでした。男子生徒が、母親とこじれていて、そのこじれ方が、自分と似ている場合、リスクがありました。ある時、ある男の子に「中1の時、母親をボコボコにしました」と言われて「あっ、とうとう来たな」と、観念しました。実は、私自身が、中1の時、母親をボコボコにしています。ただ、相手が中高校生なら、たとえ逆転移が起こって、自分自身のメンタルが、どんなに大変になっても、抱え続けられる自信がありました。それは、中高校生は、時間をかければ、何とかなって行くからです。最悪でも、2年かければ、かなりのレベルまで改善されます。生徒が何とかなれば、自分自身の再燃した問題も、何とかなります。母親との問題を、私なりに折り合いがつけられたのは、厄介な男子生徒の面倒を見たお陰です。教師の仕事を通して、救われたと言っても過言ではないと思います。いくら形而上学上の難しい、生や死や実存についての問題を考察していても、親との確執は、また別問題です。それは、それで別個に対処する必要があります。

 女の子の場合、ケアすることに、ストレスは感じません。男女は違います。男女平等は、まあそれでいいと思いますが、男女は同じではありません。女子の場合は、客観的にケアできますし、感情移入することも、さほどないです。

 Kさんママは、心療内科に入院しました。何回か、お見舞いに行きました。睡眠薬や抗不安剤は、投与されていたと思いますが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)は、まだ、日本には入って来てない頃です(SSRIが、USAのFDAで、やっと承認されたくらいの時期です)。SSRIについては、「マンガで分かる心療内科」でも、詳しく説明されています。SSRIは、いわば黒船です。黒船襲来後の精神科or心療内科のsceneは、まあ、一変したと言っても、過言ではないと思います。

 Sさんママは、2週間の絶食治療を受けました。まったくの絶食と云うわけではないです。普通食から小食、そして超小食。1日か2日くらいが、野菜ジュースのみみたいな絶食です。この絶食治療中に、ノートに、頭の中に浮かんで来たことを、自由に次々と書いて行きます。文章を書くことによって、自分を癒やす、セラピーの方法があります。文章を書くセラピーと、絶食とを組み合わせた治療法です。絶食治療を始める前に、お見舞いに行って、終了後にまた行きました(絶食治療期間中の面会はNGでした)。表情を見る限り、ストレスは、相当、軽減されていると感じました。Kさんママは、40歳くらいでしたが、10歳の頃に戻って、過去の問題と向き合ったと言ってました。その時、私は、30歳、そこそこ。30歳そこそこでも、7、8歳の頃にぶちあたった実存的な問題は、いつでもフラッシュバックしていましたから、Sさんが、10歳の頃の自分の問題に向き合ったと云う話は、かなりリアルに理解できましたし、共感もしました。

 Kさんは、2年生の時は、別のクラスでしたが、3年でまた、私のクラスに戻って来ました。Kさんママは、高3の時、PTAのクラス委員を務めてくれたので、結構、喋る機会がありました。Kさんママは、「メンタルが下がることは、今でもしょっちゅうありますが、限度を超えて、下がることはなくなりました」と、言ってました。これも、今の私は解ります。私も、自分と似たタイプの問題を抱えた男子生徒(簡単に言ってしまうと、息子が自分の母親を愛してないと云う問題)のケアをして、ある一定レベル以下には、下がって行かなくなりました。下がるのは、下がりますし、意識的に下げることもできます。が、ここから下には行かないと云う、下げ止まりの地点があって、そこから下には、もう行かなくなりました。問題そのものは、解決してませんが、メンタルの揺れ幅が、狭くなったんです。これは、これで、多少、成長したんだろうと自分では、思っています。もっとも、これは、自我がコントロールしているんです。自我が崩壊したら、パニックとカオスがやって来ます。自我を崩壊させないで、生を全うすると決めています。そのための、筋トレであり、ランニングってとこも、まあ少しはあります。

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