大胸筋(pectoralis major)
専門家でなくても知っている人が多い、「大胸筋」。
ウエイトトレーニングのビッグ3とも言われるペンチプレスもこの大胸筋を鍛えることを目的としています。
大胸筋が発達していると男らしく見えますし、鍛えたいと考えている人も多いかもしれません。
しかし一方で肩の痛みや呼吸を浅くしてしまう原因にもなってしまう大胸筋について今回は整理していきましょう。
大胸筋の起始停止
(Visible bodyから引用)
起始:鎖骨、胸骨、第1~6肋軟骨、腹直筋鞘
停止:上腕骨大結節稜
支配神経:内・外側胸筋神経C5~T1
作用:肩関節の内転・屈曲・内旋
(基礎運動学第6版)
起始:
鎖骨部:鎖骨内側1/2~2/3
胸骨部:胸骨前面、第1~(5)6(7)肋軟骨
腹部:腹直筋鞘前葉表面
停止:上腕骨大結節稜
支配神経:内・外側胸筋神経(C5)C6~T1
作用:肩関節の内転・屈曲・内旋・挙上位での伸展、胸郭の挙上
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:鎖骨内側1/2~2/3、胸骨前面、第1~6(7)肋軟骨、外腹斜筋と筋連結
停止:上腕骨結節間溝の外側唇
支配神経:内・外側胸筋神経、鎖骨部はC5~7、胸骨部はC6~T1
作用:肩関節の屈曲・内旋、肩の下制
(オーチスのキネシオロジー第2版)
起始部が広く、全体としての作用と、鎖骨部、胸骨部、腹部で異なる作用も持っています。
これらの部位に付着することからも、呼吸に大きく関係のある筋肉であることがわかります。
鎖骨の動きにも関係するので、肩が痛い、挙がらないといった症状にも関係します。
筋機能
大胸筋全体としては強い内旋筋であり、肩甲下筋とともに肩関節内旋の主動作筋です。
また全体としては水平内転という運動も引き起こします。
鎖骨部は主に肩関節の屈曲・内旋・下制の作用を有しています。
特に肩関節屈曲は鎖骨部と三角筋前部線維が主動作筋となって働きます。
鎖骨部のみの短縮は考えにくいですが、大胸筋全体の短縮として鎖骨の運動が阻害されている可能性は頭に入れておきましょう。
胸骨部の特徴的な作用として肩関節の伸展が報告されています。
特に挙上位からの伸展作用はほぼ確実に持っていると考えられます。
下垂位からの伸展に関しては報告によってばらつきがあり、一定の見解は得られていないようです。
腹部を分けて考える書籍と、胸骨部の一部と考える書籍がありますが、どちらにしても腹直筋や外腹斜筋との連結はあります。
そのため腹部の硬さがある場合は大胸筋も硬くなりやすく、大胸筋だけマッサージしたりストレッチしてもよくならない症例では、腹部との関係性も考える必要があるかもしれません。
筋膜連結
大胸筋は、ファンクショナル・ライン(FL)とアーム・ライン(AL)に含まれています。
FLの中でも、フロント・ファンクショナル・ライン(FFL)に含まれています。
FFLは、
大胸筋下縁⇒腹直筋鞘外側⇒長内転筋
と続く筋膜ラインです。
投球動作のような全身を屈曲させて行うような運動で主に働く筋膜ラインになります。
投球動作では収縮の前に十分に伸張できることもパフォーマンスアップには重要になります。
他には、アーム・ライン(AL)の中の、スーパーフェイシャル・フロント・アーム・ライン(SFAL)に含まれます。
SFALは、
広背筋⇒大胸筋⇒内側上腕筋間中隔⇒手根屈筋群
と続いています。
広背筋と大胸筋という前方と後方を広く覆う筋肉から腕の筋肉へつづくため、胸郭や脊柱の運動が腕の運動を制御していることがわかります。
逆に前腕の筋肉ばかりを酷使してしまうと、胸郭や脊柱を硬くしてしまう要因になりうることも頭に入れておきましょう。
経絡
心包経は心膜の経絡で、手の中指から手のひら側を上に走行しています。
心膜の経絡、とは言うものの臓器としての心膜というよりも外界から心を守るという意味での心膜と東洋医学的には解釈されています。
つまり、外からのストレスに過度に防御的になりすぎたりすると硬くなりやすい経絡です。
少し具体的なところで考えると、防御姿勢は背中を丸めて心臓を守るような姿勢をイメージすると思います。
その姿勢では大胸筋は短縮位となります。
つまり、ストレスから身を守ろうとする姿勢は大胸筋を硬くして、東洋医学的には心包経にエラーが生じると考えられます。
大胸筋の周辺組織
大胸筋の周辺には多くの筋、神経、血管、リンパが存在します。
分かりやすいところでは、大胸筋の深部には小胸筋がありどちらも肋骨へ付着するので呼吸機能に関わります。
腋窩動静脈、腋窩神経、腋窩リンパ節なども大胸筋の下を通っていきます。
また繰り返しになりますが、鎖骨、胸骨、肋骨に付着する大胸筋は呼吸や肩関節運動に非常に大きな影響を持ちます。
1つの筋肉を多くの視点から見て考えてみると面白い気付きが増えてくると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は身体の前面で広い付着を持つ大胸筋について考えてきました。
広く付着するということはそれだけ多くの部位へ影響を持ちます。
大胸筋を通して呼吸や肩関節運動を考えたり、逆に肩関節運動から大胸筋の作用を考えたりするのもまた面白いかもしれません。
それではまた来週!
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