怪我は自分を怪しむ(あやしむ)ためにある
スポーツと怪我
スポーツをしていて、一度も怪我をしたことがないという人は少ないのではないでしょうか。
すぐに競技へ戻れるような軽い捻挫から、半年から1年近く復帰できない靱帯損傷まで、スポーツに関わる怪我は数多くあります。
トップアスリートでも怪我はつきものですが、怪我をした後にさらにパワーアップして復帰する選手は怪我に対する考え方が違います。
いくつか例を出してみます。
本田圭佑選手
「今回の怪我も良い機会だなという風に思っている。ボールでサッカーをしているだけでは取り組むことのできないトレーニングができる。~中略」
https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=16292
大谷翔平選手
「直感で、(肘の手術を)した方がいいと思っていた。気持ちよく投げられなかった状況から、思い切りパフォーマンスを出せる状態に持っていけると考えれば、すごくワクワクはしている」
https://www.sanspo.com/baseball/news/20181205/mlb18120505000001-n1.html
彼らのように、怪我をしたときでも前を向いている選手はリハビリへの取り組み方も違います。
もしかしたらこれを読んでいるあなたも、怪我に苦しんでいる選手に関わっているかもしれません。
今回は、漢字という少し変わった観点から「怪我」について考えてみたいと思います。
「怪我」は我を怪しむ?
怪我という漢字は、我を怪しむ(あやしむ)と書きます。
つまり、自分を疑うような行動をしてしまったということから、「過失」の意味で使われていたそうです(諸説あります)。
それが徐々に意味がずれていったことで、現在の怪我の意味になりました。
現在の意味は、
あやまってからだに傷を負うこと。また、その傷。負傷。
となっています。
やはり、あやまって負った傷のことを指すようです。
怪我に対してネガティブになりやすい選手ほど、原因を自分以外に求めてしまう傾向があります。
例えば、
・他人の足を踏んでしまったから
・芝生が濡れてたから
・相手がラフプレーをしてきたから
・気温が低かったから
・疲れてたから
・運が悪かったから
もちろん自分ではどうしようもない要素によって怪我をしやくすくなることは事実です。
しかし、「そのとき自分にできることがなかったか」
と振り返ることができなければ、同じ状況になったときにまた同じ怪我をしてしまいます。
だからこそ、「自分を怪しむ」ことが怪我を考えるときに必要です。
自分を疑うことで見えてくるもの
怪我をしたあと、具体的にどんなことを振り返っていけばよいでしょうか。
さきほど挙げた例をもとに考えてみます。
・他人の足を踏んでしまったから
⇒空中や着地場面で視界が狭まっていなかったか?
・芝生が濡れてたから
⇒足元が濡れている前提でプレーしていたか?
・相手がラフプレーをしてきたから
⇒ラフプレーを事前に見つけられるくらい、視野を広くするトレーニングをしていたか?
・気温が低かったから
⇒W-upやプレー中に身体を冷やさない努力をしていたか?
・疲れてたから
⇒疲労回復するための食事やケアをしていたか?
・運が悪かったから
⇒どんな場面のどんなプレーが原因だったのか整理できているか?
これらはあくまでも1例であり、他にもたくさん考えられます。
少なくとも、1つの怪我に対して原因がたった1つということはありません。
だとしたら、数ある原因の中から自分が変えられる部分を探すことが成長のヒントであり、怪我に向き合うということです。
怪我をしてよかったと思える未来のために
多くの選手にとって怪我は嫌な出来事であり、できるなら怪我をしたくないと思うはずです。
もちろん、怪我をすることがいいことだとは思いません。
怪我をしないで済むのであればそれに越したことはありませんが、怪我をすることで気付けることが多いのも事実です。
むしろ、怪我は選手の伸びしろをわかりやすく提示していてくれているとも思える出来事が私自身たくさんありました。
それは慢性障害であっても外傷であっても同じです。
慢性障害であれば上手く使えていないところを身体が教えようとしてくれているかもしれません。
ハムストリングスの肉離れを繰り返す選手の背骨がものすごく硬かったり、グローインペインで股関節が痛い選手の姿勢が良くなったら痛みも改善したり。
外傷であれば、状況判断や対応能力の伸びしろを教えてくれているのかもしれません。
上半身を速く動かそうとすると肩が上がる癖があったり、首が胸の動きと一緒に動いてしまって視界を十分に確保できなかったり。
その1つ1つを解決していくことができれば、怪我をする前よりも成長して復帰できるはずです。
怪我が自分に足りない部分を教えてくれていることに気付けたら、
きっと未来の自分は、「あの怪我をしてよかった」と思っているはずです。
怪我は、自分を怪しむためにあるはずだから。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
理学療法士
JARTA認定スポーツトレーナー/NLPプラクティショナー
平山鷹也
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