長内転筋(Adductor Longus)
今回は内転筋群の1つであり、膝に関連する疾患でも硬くなっている人が多い、長内転筋について。
以前、大内転筋については解説しているので、こちらも合わせて読んでみてください。
それでは早速いきましょう!
長内転筋の起始停止
(Visible bodyから引用)
起始:恥骨体
停止:大腿骨後面(粗線)
支配神経:閉鎖神経L2~4
作用:股関節の内転・屈曲
(基礎運動学第6版)
起始:恥骨結節下方
停止:大腿骨粗線内側唇中1/3
支配神経:閉鎖神経L2~3
作用:大腿を内転し、多少前屈させる
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:腸骨交叉部の恥骨体、線維軟骨結合
停止:粗線内側唇、他の内転筋より恥骨の前方に付着する
支配神経:閉鎖神経L2~4
作用:股関節の内転・屈曲、内外旋は諸説あり
(オーチスのキネシオロジー第2版)
恥骨から大腿骨に付着し、股関節を内転・屈曲させることはどの書籍でも共通しています。
恥骨には他の内転筋も複数付着しており、上方では腹直筋も付着します。
骨盤のアライメントが崩れている方は、この辺りの知識も考察を深めるきっかけになります。
筋機能
長内転筋は、股関節の内外転の肢位に関わらず内転モーメントアームを有することが明らかにされています。
筋電図を用いた研究では、OKCの内転運動で一貫した長内転筋の活動が報告されています。
また、研究によっては長内転筋の屈曲筋としての作用が内転作用を上回るという報告もあります。
内転筋群全体としては、大内転筋でも解説しましたが骨盤の安定化に影響を与えています。
例えば、歩行における立脚期から遊脚期、遊脚期から立脚期といった移行期の内転筋群の収縮が確認されています。
スクワットやしゃがみ姿勢では、膝が開く方ほど床反力によって生じる外転モーメントに拮抗するために内転筋群が働きます。
内転筋群の短縮は臨床的にもよく遭遇します。
長内転筋は骨盤と大腿骨をつなぐ単関節筋です。
そのため、一般的な開脚によるストレッチよりも、四股などの膝関節を屈曲して外転させるようなストレッチが効果的です。
実際には長内転筋をストレッチしよう、と考えるよりは内転筋全体として硬さを感じる方向にストレッチしていくことが多いです。
もちろん、それが痛みやパフォーマンス向上につながっていくと考えられるという評価結果に基づいて行ってくださいね。
筋膜連結
長内転筋は、ファンクショナル・ライン(FL)の特に身体前面を通る、
フロント・ファンクショナル・ライン(FFL)と、
ディープ・フロント・ライン(DFL)に含まれます。
まずはFFLについて。
大胸筋下縁⇒腹直筋鞘外側⇒長内転筋
とつながります。
過去にも大胸筋で解説していますので、こちらも参照ください。
この筋膜ラインの作用を考えると、上腕骨の水平内転と体幹屈曲、股関節の内転屈曲の作用となるので、全身を丸めるような作用になります。
また猫背姿勢において短縮しやすく、全身を開く(伸展)していくような動作では伸張されます。
投球動作や陸上のやり投げなど、様々なスポーツで予備動作としてFFLを伸張させることでパフォーマンスを発揮します。
このような動作を行う選手がFFLが短縮した場合、予備動作が小さくなったり身体の一部にストレスが集中して怪我につながることも考えられます。
次にDFLについて。
DFLは非常に多くの筋が関与し、その路線もいくつかに分類されています。
その中で長内転筋が含まれるのは、下前部と呼ばれる区画になります。
(最下部)⇒短内転筋、長内転筋⇒腰筋、腸骨筋、恥骨筋⇒(上前部)
内転筋の短縮や弱化は、骨盤の安定性や筋連結という観点から、
腸腰筋の機能にも影響を与えていることがわかると思います。
経絡
経絡としては、大腿の内側を通る肝臓や腎臓の経絡をチェックしてみましょう。
肝経
腎経
経絡と内臓も関連が深いと考えられているので、肝臓や腎臓の疲れがないかという点も含めて、問診など進めてみると、新たな発見があるかもしれませんね。
長内転筋の周辺組織
(Visible bodyから引用)
鼠径部にはスカルパ三角(大腿三角)と呼ばれる
鼠径靱帯、長内転筋、縫工筋で囲まれた空間があります。
この空間から大腿動静脈、大腿神経が出てきます。
そのため内転筋へ徒手的にアプローチする際は、
動脈や神経を避けて触診を進めてみてください。
動脈を触れたら、その内側に恥骨筋、長内転筋と続きます。
長内転筋を触れたら、そのまま遠位部に触診を進めると、
斜めに横断する縫工筋に触れます。
股関節近位部は筋や血管も多く複雑になっていますが、
1つずつ触診の練習をしていきましょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
内転筋の1つ、長内転筋について解説しました。
過去に投稿した大内転筋などとの関係性も含めておさらいしてみてくださいね!
それではまた来週!
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