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大腰筋 (psoas major)

筋肉をそれぞれ解説していく「Muscle マガジン」第一弾は大腰筋です!

大腰筋は背骨と下肢をつなぐ唯一の筋と言われており、スポーツだけでなく高齢者でも非常に大切な筋肉の1つです。

それではさっそくいきましょう!

大腰筋の起始停止

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(Visible bodyから引用)

ここではいくつかの解剖学書から引用してみます。

起始:L1~L4椎体および横突起
停止:大腿骨小転子
支配神経:腰神経叢L2~3
作用:股関節屈曲/外旋、体幹屈曲
(基礎運動学第6版)
起始:浅頭T12~L4椎体、椎間円板
   深頭L1~L5肋骨突起、第12肋骨
   両頭は筋の外側縁で癒合し下外方へ走る
停止:大腿骨小転子
支配神経:腰神経叢と大腿神経の枝(T12)L1~L4
作用:股関節屈曲、回旋作用はわずか、下肢が固定されていると腰椎の前弯
(分担解剖学1総説・骨学・靱帯学・筋学)
起始:T12~L5椎体外側面、椎間円板、横突起
停止:大腿骨小転子
支配神経:脊髄神経腹根、L1~L3(L4)
作用:股関節屈曲/外旋、腰椎側屈、腰椎安定化
   腰椎の屈曲/過伸展に対しては諸説あり
(オーチスのキネシオロジー第2版)
起始:浅層T12、L1~L4椎体側面、椎間円板
   深層L1~L5肋骨突起
停止:大腿骨小転子
支配神経:腰神経叢L1~L3
作用:股関節屈曲/外旋
   腰椎側屈、臥位からの体幹屈曲
(プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系)

多少の違いはありつつも、腰椎から小転子に着くという点については一致しています。

そして股関節の屈曲/外旋作用もほぼ共通しています。

つまり、腰椎や股関節の可動性が大腰筋機能を引き出すための前提条件となります。

まずはここをしっかり覚えておきましょう。

そして書籍によっては浅層と深層(浅頭と深頭)についての記載があり、それぞれで微妙に作用も異なるようです。

浅層では椎体や椎間円板に直接付着しており、腰椎の前弯、安定化に関与していると考えられます。

深層では肋骨突起や第12肋骨へ付着しており、側屈など矢状面上での運動に関与していると考えられます。

この違いは脊柱の可動域制限などにも関係してきます。

筋機能

画像2

一般的な筋の作用としては、前述した股関節の屈曲/外旋です。

少し細かいところでは、股関節90°以上屈曲させることで大腰筋の働きが増加すると言われています。(45°以上から働きが増加しだす)

つまり大腰筋をトレーニングしたいときは、
・脊柱、股関節の可動域
・脊柱のアライメント(ニュートラルポジション)
・股関節の屈曲角度(90°以上)
これらは最低限意識して行いましょう!

求心性で上手く収縮ができるようになっていったら、遠心性で股関節が伸展していきながら大腰筋が働けるように練習したりもしますが、まずはここをしっかりと。


筋の走行を見ると大腿骨頭の前方を通っているので、骨頭の前方への偏位を抑制して求心位保持にも関わっていると言われています。

特に股関節後方の組織が硬くなると大腿骨頭は前方へ偏位しやすくなり、大腰筋の機能も低下しやすいので注意しましょう。

スポーツ動作では走るときの脚の引きつけ、下肢のコントロール、上半身と下半身の連結などで重要な役割を果たしています。

筋膜連結

筋肉は、それ単体だけで考えてもパフォーマンスにつながりにくいです。

なぜならスポーツは全身で行うものだから。

当たり前のことですが、いざトレーニングとなると忘れられがちな部分。

全身のつながりを知っておくことでトレーニングの幅も広がり、実際のパフォーマンスにつながりやすくなります。

大腰筋は、筋膜連結として有名なアナトミートレインでは
「ディープ・フロント・ライン(DFL)」になります。

後脛骨筋→内転筋→骨盤底筋→大腰筋→横隔膜

とつながっています(本来はもっと細かいですが、ここではざっくりと)

となると、足部機能や体幹、呼吸なども大腰筋を機能的にするために考えなければならないことが見えてきます。

特に腹部の硬さや呼吸が浅い選手が多いので、ぜひチェックしてみてください。

経絡

PTの方は少しなじみが薄いかもしれない、「経絡」。

東洋医学では一般的に用いられている経絡ですが、近年は筋膜とラインがかなり似ていると言われ、その効果についても科学的に証明されてきています。

ここでは経絡の詳細は割愛させてもらって、ざっくりと考えてみます。

大腰筋は腎経という経絡に関係が深いと考えられています。

この腎経はDFLに非常によく似たラインで、腎臓にも関係しています。

経絡はそのラインにそってさするだけでも効果はありますので、ぜひ試してみてください。

また、腎臓の疲労や副腎疲労などによっても大腰筋は機能低下を起こす可能性があります。

腎臓疲労を起こす要因としては、過度なタバコ飲酒、運動不足、水分不足、塩分、タンパク質の過剰摂取などがあります。

副腎疲労は、副腎疲労症候群という言葉もあるくらい多くの人が実は陥っているかもしれない問題です。

こちらは、ストレスや睡眠不足、栄養不足などが原因と考えられています。

つまり大腰筋を機能的に働かせるためには、日常生活も重要になってくるということを覚えておきましょう。

大腰筋の周辺組織

1つ1つの筋肉を考えていくときに、その筋肉の周辺にどんな組織が存在するかは非常に重要な視点になります。

大腰筋について、起始部付近からみてみましょう。

大腰筋のすぐ後方には腰神経叢があり、すぐ前方には腹大動脈があり、腹大動脈に絡みつくように腹腔神経節があります。

さらに前方には小腸や大腸があり、近くには腎臓があります。

後方から見ると脊柱起立筋、多裂筋、腰方形筋の前方に位置しています。

施術において大腰筋を考えていくときはこれらの組織の状態もチェックした方が良さそうです。


まとめ

というわけで、様々な視点から大腰筋について見てきました。

筋肉だけに言えることではないですが、身体とは様々な関係性の中で動いています。

なので、筋肉を1つの物体としてしか見れないと限界があります。

大腰筋で言えば多くの臓器が隣接していること、腹腔神経節といった自律神経からの影響もあること、背骨や骨盤の可動性なども大腰筋の機能には大きく影響を与えています。

特にスポーツにおける大腰筋は非常に重要な筋の1つとなります。

いきなりすべてを意識するのは大変かもしれませんが、ぜひ1つでも多くの視点から考えられるように練習していってくださいね。

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