舞姫は僕自身だったし、きっとあなたでもある - TERRADA ART AWARD 2021
先週末、仕事の大きな山を越えてヘトヘトになっていた僕は、何か新鮮なモノ・コトに出会いたい気持ちでTwitterを眺めていたら、関連情報として表示されたこの山内さんのTweetが文字通り目に飛び込んで来た。
やまひょうってどなた?なんか後ろに怖いのいるぞ?人がピンクのコードでつながってるぞ?と3つくらいの???が浮かんだ僕は、一気にこの世界観に引き込まれた。そして、代表作になりそうって作家自身が確信を持っていること、観覧された方のTweetでパフォーマンス動画の不思議さを見て、でヤバそうと感じ、TERRADA ART AWARD 2021のサイトを開いて即予約を入れた。
TERRADA ART AWARD 2021は寺田倉庫株式会社が主催の新進アーティストの支援を目的とした現代アートアウォードとのこと。今回無料で開催されているファイナリスト展は、1346組から選出された5名が作品展示されている。
そして、山内祥汰さんの作品「舞姫」である。パフォーマンスは午後に3回行われていて、それまでは、大きなディスプレイにゴリラと人の中間の様な生物が映し出されていた。ベビーカーに乗った小さい子が見ていた時に「怖い」と泣きそうになってたが、それは僕も同じ気持ちだった。でかいし動きは変だからめっちゃ怖い。
13時にパフォーマンスは始まった。この回は岡田さんというダンサーの方が務められた。
パフォーマンスの内容は、こうだ。(※現地で観る予定の方はここは要スキップ)
ダンサーは全身にモーションセンサーをつけた姿で現れ、床にあるこちらもセンサーが付いたスーツをゆっくりと着る。映像内の「ヒト」とこちら側のリアルな「人」が繋がる。人が舞い、ヒトが同期的に映像内で舞う。ゆっくりと、時に早く、そしてまたゆっくりと。
そして人は突然スーツを脱ぐ。ヒトは皮を脱ぐ。一度床に置き、離れるかと思いきや、また手にする。そして愛おしそうに手にして持って踊る。離れられない。そしてまたスーツ(皮)を着る人(ヒト)。両者は別モノだったが、今や分かちがたい状況なのだ。
スーツを脱ごうとし、また着てしまい、を何回か繰り返す「人」だったが、パフォーマンスのラストパートで、何かに気づいた様に、スーツを脱ぎ捨てる。そして自らに付いているモーションキャプチャー用のセンサーも外していく。映像内の皮は地面に置かれて強い風になびいている。そして同期が切れたヒトもグシャグシャの皮になって、床に倒れる。その姿を見つめる「人」。少し後ろ髪を引かれながらも、決意を持って踵を返し、場を離れてしまう。
・・・パフォーマンスの終わりの合図として山内さんが現れ、僕は思わず拍手を贈った。
会場にいた山内さんに作品の発想の源を教えてもらった。これは僕の思い出しメモなので正しいものは各種インタビューをぜひ。
上記の内容を聞いてなるほどと思ったのは、各種テックデバイスを皮としていたんだという点だった。僕は個人的にもっと誤読していて、モニターに映し出されるヒトは、ピンクのコード=ネットに繋がったオンライン上の自分自身で、その存在が貴重なものと感じてはいるものの、実はその存在を維持するために自分自身を規定してやしないか、それに制約されているところがないか?大事なのはわかるが離れてみるのもありでは?という問いかけなのかなと感じていた。
でもあらためて考えるに、デバイスを通じて自分のあらゆるデジタルデータが同期的に生成され続け、それらがオンラインやリアルに同期的にsyncされる事象に対して愛情を感じるほどに執着や依存することへの問い、という意味であれば、それほどズレた誤読でも無いのかもしれない。
というわけで、仕事でヘトヘトだった僕の脳は山内さんの作品により一気にヒートアップし、エネルギーを充填することができたのでした。寺田倉庫の皆さん、アワード受賞者の皆さん、山内さん、熱い体験をありがとうございました。
【Check !】ファイナリスト展の予約は下記から。入場料は無料。
【Check !】アウォードの公式アカウントによる山内さんインタビュー動画。