CPUにおける新しもの信仰を考える ~今の「ゲーミングPC」の定義ってどんな感じなの?~
前回、第10世代~第12世代のCPUの基本スペックについて書いてみました。
古いXeonマシンって今のマルチスレッド対応進んだゲームだとどんな感じなんだろうと思ったので、まあとりあえずは2020~2021期のBTOゲーミングPCのスペックと性能を当たってみる事にします。
Intel+nVIDIAの組み合わせに限定してます。RyzenやRadeon使った物は比較しにくいので今回は除外です。個人的には好きなんだけどね、AMD。
後ゲーミングノートも除外。
・ローエンド/ライトゲーミングクラス(ゲーミングマシン名乗ってる最下位)
※()内は前世代の物
CPU:Core i5-11400(10400)、6C12T(同じく)、定格2.6/シングルターボ4.4GHz(2.9/4.3GHz)
※Core i3-10300 4C8T 3.7GHz/4.4GHzの採用例あり
メモリ:8GB
GPU:GTX 1050Ti/V-RAM4GB
→かなり軽いオンラインゲームなどがプレイできるPC
いや、今これを「ゲーム用」って言っちゃうのはどうだろう。マイクラぐらいなら問題ないって言うけどMod重すぎだから入れるなって言うし…
しかしまあローエンドクラス扱いでもGPUメモリ4GBとか「ゲーミングならグラボのメモリは1ギガは無いとね!」なんて言ってた時代からすると隔世の感があるね。Core i出現期くらいまで遡ればミドルスペックでも512MBとか平気であったからなぁ。
Core i5は伝統的に4コアでHTT無しの4C4Tだったのが第10世代/第11世代では6コア最大12スレッドになってるので進歩自体はかなりしてます。
Core i3-10300ですら第7世代までのCore i7同等の4C8Tになってて、クロック的にもCore i7-7700同等というのは結構すごい事ではあります。
昔に比べるとCPUクロックめっちゃ上がってるしGPUもGTX6xx‐8xx世代のミドルスペック越えて来るので、特にシングルクロック重視な2016年以前のオールドゲーム遊ぶんだとむしろアリかもしれないです。
・エントリークラス/ロークラス(むしろここがゲーミングマシンの入り口)
※11400、10400のスペックについては前項参照のこと
CPU:Core i5-11400/11500(10400/10500)、6C12T(同じく)、定格2.7GHz/TBシングルMax4.6GHz(3.1GHz/4.5GHz)
メモリ:8GB/一部16GB
GPU:GTX 1650/4GB
→重量級ゲーム(AAAタイトル)以外であればFHD環境でそこそこプレイできるPC
今時のゲーミングPCだとやっぱりFHDが最低基準環境になるのかな?
6C12TはCore i7のメインラインが4C8Tだった時代ならCPU的にはほぼハイエンドレベル(メモリチャネル数4→2を除けばかつてのCore Xシリーズ並み)です。いやまあCore i7-6950X(10C20T)みたいなまんま高クロックXeonなお化けプロセッサは除いてですけれども。
nVIDIAグラボに関しては基本的に前世代の格上型番(xx50なら前世代のxx60型番)に対してほぼ同等か、若干及ばないが喰らいつく性能、という売り方をすることが多いのですが、GTX1650無印では前世代の1060に全く歯が立ちません。
後発でGTX1660リネームにほぼ等しい(1650本来のTU117コアではなくTU116コアが使われている)1650 SUPERがかろうじて廉価版であるGTX1060/3GBを喰えるっていう程度(1060/3GBは単に1060/6GBからV-RAM容量を減らしただけではなくGPUコアもスペック落ちさせています)なので過度の期待はダメですね。
とは言えワンランク下のHD+(1600x900)やHD(1366x768あるいは1280x720など)のモニターであればハイテクスチャリングなゲームであってもかなり快適だと思われます。まあ余程物理的に小型の物でないと最近あまり売って無い解像度なんですが。
また1650より上位の1660のコアであるTU116を使ってGTX1650を名乗っている物や、かなり上位にあたるRTX2060/2070無印のコアであるTU106を使った(ただしRTXの特徴であるレイトレーシング関係のハードウェア部分はまるっと無効化)物も存在しています。
TU116コア使用のカードは若干性能が高め、TU106コアを使ったカードは不良ダイを流用しているのかTU117コアのリファレンスに劣る性能であると評価されています。
TU106/116コアを使った1650はハードウェアエンコーダがTU117より1世代新しくて動画を綺麗にしやすかったのでグラボ高騰化の前はローコストで映像関係やりたい人が欲しがっていたようです。
後、2020年末以降V-RAMをGDDR5からGDDR6に変更したGTX 1650 D6(GD6)なる物が出回っていますが、GDDR5仕様の旧リファレンスに比べて10%ほど性能が高いそうです。とは言えそれでもエントリーグラボの範疇を出ませんが。
・エントリーミドル
CPU:Core i5‐11500/11600/11600K(10500/10600/10600K)、6C12T、定格2.8GHz/TBシングルMax4.8GHz&K付きは3.9GHz/4.9GHz(3.3GHz/4.8GHz&K付4.1GHz/4.8GHz)
メモリ:16GB/一部8GB
GPU:GTX1650 SUPER/1660/1660 SUPER(4GB/6GB/6GB)
→FHD環境であれば特に設定を落とさずにプレイ可能
※高fpsを求めるなどして快適を追及すると設定を落とさざるを得ない事も
エントリーミドルクラス(ミドルローと言うカテゴリにする事も)はミドルスペックゾーンにかろうじて乗っかっているという感じのマシン。
他社に比べて高性能を謳うBTO販社などではミドルスペック以下にゾーニングして売っている場合もあります。
キング・オブ・ベーシック。
2018年には今でも国内AAAタイトル代表みたいに扱われているFFXVをFHD環境でまあまあ満足に遊べるレベルのPC(大体GPUはGTX1070クラス)がハイスペックとされていたし、4Kゲーミングに手が届きそうな1080クラスはハイエンドとされていたので、約3年でこのクラスがミドル下位に分類されると言うのはやはり要求環境の底上げ自体は結構あるんだなあという感じですね。
尚、GPU性能の並びは基本的に1660無印<1660SUPER<1660Tiで、現時点での最新かつ値付けの高いSUPERがより安めのTiより性能的に下なのが要注意です。
…相変わらず型番乱立しすぎな上に各々の性能差が紛らわしいのどうにかならんかな。てかGPUコアの世代一緒で性能と価格逆転したら駄目だろ。
一応1660TiであればGTX 1070無印を超える(1070Ti越えはさすがに無理)くらいの性能は出てるようです。1660Sだと負けたり勝ったりが使用者の環境次第で出やすいようなので若干1070無印越えとは言いがたいかも。
1650SUPERは前述の通り前世代のGTX1060/6GBに今一つ及ばない性能の為避けるのが無難です。V-RAMも4GBと少なめですし。
・立ち位置微妙
CPU:Core i5‐11400(10400)にGPU:GTX 1660 SUPER/1660Tiを組み合わせたPC
Core i5-10400や11400はおおむねCore i7-8700(6C12T、定格3.2GHz/TBシングルMax4.6GHz)を若干下回るくらいのベンチマークデータ(もう1世代遡ったCore i7-7700とだと単純にコア数が2増えて4C8T→6C12Tな分だけ上かな?高クロック版の7700Kとだと単コア性能で負けるけどマルチスレッド性能で取り返す感じ)ですし、グラボのGTX1660S/1660Tiは前世代GTX1070対抗なので、ちょっと前のゲーミングPCにあるi7-7700Kもしくは8700にGTX1070無印という組み合わせと同パフォーマンス帯と考えればまあわかる…んですが、第10世代以降昔と違って「一つのタスクにかかりっきりになるわけじゃないのでCPUパワーは余裕あった方が良いがGPUは使いきれなきゃ意味なし」と言うCPU優位の流れがあるので違和感はあります。
この組み合わせでもFHD環境であれば性能的に不満は出にくいとは思いますが微妙判定。
自作やる人が自分の必要性に絞って作ったとかならともかくBTOでこの組み合わせはちょっとね…
・微妙を通り越したもの
CPU:Core i5-10400(11400)にGPU:RTX3060/3070を組み合わせたPC
これ、製品企画立てた人の頭が古すぎるんじゃないかなあ…GPU優位にもほどがある。はっきり言って10年前のゲーミングPCの考え方だぞ?
RTX3060は一部のバス帯域依存度の高いアプリを動かす時を除いて基本的に前々世代のGTX1080を超える性能を出しますので、Core i7-8700を下回るようなCPU性能ではいささか使いきれませんね。
上位である3070ではなおさらです。流石にバランス悪すぎ。
しかもこれで16万取るのはダメでしょうよ。
Socket規格がある程度続いた時代ならまだしも規格変更サイクルの激しすぎる現在ではBTOマシンでストレージ以外での将来的なアップグレード前提のハードウェア構成はホント意味ないです。
・ライトミドルクラス
CPU:Core i7₋11700(10700)、8C16T、定格2.5GHz/TBシングルMax4.8GHz/TBM4.9GHz(2.9GHz/4.7GHz/4.8GHz)
メモリ:16GB
GPU:GTX 1660 SUPER/1660Ti(6GB/6GB)
→FHDゲーミング向け。中量級タイトルならWQHD(1440p)いけなくもない。
若干グラボ性能を控えめにしたバランスモデル。
プロセッサー的にはRTX3060以上3080Ti未満が好適なんですけどね。
昨今のグラボ高騰を受けての構成と思われます。
ゲーミング用と言うよりある程度プロセッサヘビーなクリエイティブ用途の方が強いのでは…とも思えます。
PC一台でFHD級のゲーム配信をライブストリーミングでやりたい方とかはココが最低ラインになって来るのでは?
特に動くアバターを用いたVtuberさんなんかはゲームプレイ+フェイスリグ+キャプチャ+OBSなどでのリアルタイムエンコードetc.とタスク多めなのでどうしてもスレッド処理数は欲しいです。イマドキのゲームだと8~12スレッドはそれ単体で取られてしまうので。
ただOBSのソフトウェアエンコードやるんだとこれでもプロセッサリソースは不足します。
と言ってグラボによるハードウェアエンコードを使うと今度はGPUリソースが足りない事が多く、特にシングルカードマルチモニタ環境は厳しいです。
PCIe x16スロットを2スロット使ってグラボ2枚挿しにして1枚をゲーム、1枚をOBSエンコに割り振ったマルチカードマルチモニタにした方が良いかと。
キャプチャハードウェアもUSB経由ではハードウェア特性上CPU負荷上がるのでできればPCIeカード型を使いたいところですね。
※筆者は別に配信者ではないです。あくまでも数人の配信者さんに配信環境その他をお聞きした上で自分のハードウェア知識とすり合わせての推測でしかありませんのでご注意ください。
4000文字をだいぶ超えているのでミドル/ミドルハイ/ハイスペックについては記事を改めます。
ではでは。