#116 大物続々

「セーフ！」
小声で言ってしまったが駆け込み乗車はアウトです！

すぐさま画面に目をやる
走ってる最中に聞こえてきたのはどうやら練女提供のタッグマッチの発表
プリマ公子、美柑vsきょろろん、東雲茉莉奈

「あれ？UNIは？」
まさかアイツが外されたのか？
ククッしめしめと思いつつもやはり寂しい
まあでも次がんばりたまえムハハハハ

「えー、そして次になります。IZANË復帰戦30分一本勝負、IZANËvsUNI」

おーー！！

「IZANË選手はこの大会から全世界女子所属となりそれに伴い改名されております。本人は大会時にみなさまの前にとのことで、UNI選手も諸事情で本日は欠席です。ご了承下さい」

イザネちゃん改名したのかあ
当日まで姿を現さないってことはかなりの気合いだね！

てかアイツおったんかーい！！
まさかのイザネちゃん復帰の相手がアイツだなんて私より試合順も後だよね
キーッ！！
あんなヤツはイザネちゃんに血ダルマにされるがいいわムハハハハ

まあ、でも良かった


「続きまして1分時間差バトルロイヤル。こちらは男女合わせて20人強の選手を予定しております。本日は代表してBaby-JAY選手にお越しいただいております。JAY選手、よろしくお願いします」

ドレッドヘアにタンクトップから覗く褐色の筋骨隆々の腕、大きなサングラスを掛けゆっくりと登壇する

「こんちはー！アレ？社長、老けた？」

「うるせーわ！」
そう言ってカメラに向いて喋れとジェスチャーで促す

そうBaby-JAY選手
重爆撃機と称される日本屈指のパワーファイターでありセカジョの第三黄金期の立役者の1人
そしてその特異な隈取の様なメイクを施したキャラクターと話術で当時からタレントや女優としても活躍
現役女子選手の中で一番の知名度があるのもJAY選手だと思われる
お父さんがブラジル人のハーフで夢子さんの師匠格でもある

「そっかぁ、JAY選手か。圧倒的な知名度だもんなぁ。若い子でも知らない人いないもんね」
そうこの機会にJAY選手を見たいって人は少なくはないと思われる

「えーと。私がセカジョを辞めたのが約30年前の日本武道館大会。フリーとしてほとんどの団体には上がって来ましたが何故かここにだけは呼ばれてないのか上がってません」

笑いが起きる

「ま、その時にメインで試合をしていたのが私で第一試合で試合してたのが夢子。まあお互い30年という長い間プロレスをしているかなんてあの時は思いませんでした。ほんとそれしか知らないバカというか、、、でもまあ私の周りをちょろちょろ走ってた夢子が30年間最前線で活躍しまたセカイのベルトに挑むなんて奇跡じゃないですか？なので今回オファーを受けさせてもらいました。只、このバトルロイヤル優勝したら私もセカイのベルト狙っていきますんで！まだまだベルトに色気はあるんでね！ほんじゃ！」
そう言ってJAY選手は降壇した

うおおぉー！！
何年振りなのかはわからないが夢子さんvs JAY選手の師弟対決は確かに見てみたい！
やっぱ夢があるなぁプロレスって！

で、バトルロイヤルか
一緒に練習してた男子の人たちも出るんだろうなぁ


「次は大崎、、、」
社内アナウンスが流れる

「あ、降りなきゃ」
そうだりんかい線新木場行きに乗り換えねばならない
よくよく乗り換え案内の看板を見るんだ
そうすれば間違えないんだから


私は天才なのか？
間違えずにりんかい線ホームに辿り着く
うーん
やっぱいつもは単に注意散漫でパニック起こしているだけなのだろう
何事も集中力が大事というお話


「えー、それでは続いての発表ですがご本人の方からよろしくお願いいたします。どうぞ！」

プシュー
電車に乗り込む

「誰だ誰だ？」

奥から大きな人影がゆっくり現れる
襟足の長い金髪を後ろに流し、タイトめなスーツがはち切れそうなほどの体躯
日に焼けた肌と溢れる白い歯のコントラストが精悍さと清潔感を醸し出していた

そして隠し切れないスターのオーラ

「な、な、楢崎高至だぁっ！！」

御多分に洩れずに車内中の視線が私に、、、
関係あるかーい！
こっちははちゃめちゃビックリしとるんじゃあ！！(本当は急に大声を出してすみませんでしたペコリ)

楢崎選手は中央でいつものポーズを取る
しばらく撮影されてから社長と向き合い社長も立ち上がり両手で固い握手

スター所以の振る舞いはサラッとしていて嫌味がない

「それでは楢崎選手ご着席下さい！」

「ハイッ！」

うーん
もう声がカッコいいー！！

「えー、新世界プロレスの楢崎高至です！よろしくお願いします！」


楢崎高至
今のプロレス界で知らない人はいない
さっきちづるさんも語っていたプロレス暗黒時代からの現在に至るV字回復の立役者の1人で最大の功労者
新世界プロレスでは数々の名勝負を繰り広げほぼ全てのベルトのタイトルホルダーでもあり国内外問わずファンも多い
今年6月の株主総会で新世界プロレスの社長に選出され今月7月1日付けで代表取締役社長になったばかりだ
因みに業務効率の一本化として同じグループだったHYDRANGEAは新世界プロレスの子会社となっている
(私調べ、、、久々)

「えー、まずはこの様な場に呼んでいただきありがとうございます。社長、ありがとうございます」
改めて社長に頭を下げる

「で、今回オファーをいただき即答で了承させていただきました。理由は２つございます！」

２つの理由、、、かぁ
いったいどんな理由で交渉成立したのかグッと画面に吸い寄せられた