【労務論点③】1か月単位の変形労働時間制は労使協定のみで定めることができる?
こんにちは、社会保険労務士の川住です。
「労務論点」シリーズの第3弾は、「1か月単位の変形労働時間制は労使協定で定めることができる?」です。
私が社労士試験の勉強をしていた時に納得できなかった論点でして、令和5年度社会保険労務士試験の直前に、ふと記事化しようと思い立ちました。
現役受験生の方は、「1か月単位の変形労働時間制は労使協定または就業規則」と記憶を確認して、試験後に読んでみてください。
1か月単位の変形労働時間制を定めた労働基準法第32条の2を確認すれば、労使協定または就業規則で定めることが明記されています。
しかし、通達(昭和63年1月1日付け基発第1号)では、「労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要」とされています。
労働基準法第32条の2は労使協定または就業規則の一方を求めており、就業規則に根拠があれば労使協定は不要ですから、「労使協定+労働協約」の場合を想定して労働基準法第32条の2は定められたと考えるべきでしょうか。
ところで、受験生時代に私は調べていなかったのですが、労働基準法第32条の2が労使協定または就業規則とされたのは平成10年改正であり、労働基準法第32条の2が規定された時の昭和62年改正では、「使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、一箇月以内の一定の期間を平均し一週間当たりの労働時間が前条第一項の労働時間を超えない定めをした場合においては、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。」という条文でした。
時系列を考えると、「労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要」という昭和63年1月1日付け基発第1号は、労働基準法第32条の2の労使協定には適用されず、労使協定のみで1か月単位の変形労働時間制を定めることは可能であると考えるのが自然ではないかと思います。