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【Q&A】 高時川の濁水について

滋賀県長浜市の高時川の濁水問題に危機感を持って集まった市民団体「すみつなぐ高時川(森と湖と暮らしと共にある高時川を未来にすみつなぐ会)」がまとめたQ&Aを公開します。

まだわかりづらい部分、説明不足な部分もあるので、今後も更新していきます。

活動に興味を持たれた方はぜひ下記の連絡先にお知らせください。
sumitsunagu.takatokigawa@gmail.com


Q1 : 濁りはどうなっているの?

  • 2000年頃から、高時川の源流にあたる場所での「ベルクスキー場」の開発にともなって何度も濁りが発生していました。

  • 最近では、2017年8月8日、台風5号による大雨と大洪水で濁りが発生。翌2018年の春の雪解け時期にも濁りが長期間続きました。

  • それから4年。濁りはようやくおさまってきたと思われていましたが、2022年8月4-5日に豪雨が発生。半年を経た今になっても濁りが続いています。たくさんいたアユの姿は見えなくなりました。これから雪解け時期の濁水も心配されます。

  • 高時川漁業協同組合では、2022年度シーズン、アユ漁の営業ができたのは濁水発生前の17日間のみ。全日数83日のうちたった2割でした。

  • 滋賀県は10月、四課合同での「高時川濁水対策連絡調整会議」を設置して調査を開始しました。2023年1月24日に県庁で行われた記者レク「高時川現地調査の状況について」では、以下のようにアユの産卵への影響を指摘しています。

「姉川における鮎の産卵数は・・・ 11河川全体の13.7%で、過去平均の50.2%を大きく下回った。・・・濁水の区域外への逃避や河床に堆積した泥による産卵環境悪化の影響が考えられる。」

2023年1月24日に県庁で行われた記者レク「高時川現地調査の状況について」


2022年9月の高時川(長浜市木之本町大見集落)
2022年5月の高時川(長浜市木之本町大見集落)


Q2 : なぜ濁っているの?

  • 高時川の源流にある旧ベルクスキー場跡地から、雨が降るたびに高時川に大量の土砂が流出していると考えられます。2022年8月の豪雨で流出した大量の土砂が高時川の中流域に堆積・滞留し、長引く濁水の主原因となっている可能性が極めて高いと私たちは考えています。

高時川本流【写真上】とスキー場跡地付近から流れる大音波谷川【写真下】。
濁りの違いがはっきりわかります。(2022年2022年12月7日撮影)
  • 滋賀県庁内の「高時川濁水対策連絡調整会議」は以下のように報告し、スキー場跡地周辺が原因である可能性を否定していません。

「ゲレンデ跡地に設置された作業道や工事中の土砂が大きな浸食を受け、直下の大音波谷川に大量の土砂が流出した形跡が見られた。」

「大音波谷川においては、上流のスキー場跡地や別に支流などから流出したと思われる土砂の異常堆積、豪雨や水位の上昇等に起因する大規模な渓岸浸食による土砂流出の形跡が見られた。」

「(豪雨により)これらの土砂が大音波谷川や他の渓流などに堆積し、8月5日以降、まとまった降雨の度に堆積した土砂が移動し、高時川が濁る原因の一つになっていると考えられる。」

「スキー場跡地から濁水が流入しているのではないか。」

滋賀県庁・高時川濁水対策連絡調整会議


Q3 : 旧ベルクスキー場跡地って? 事業者は何をしているの?

  • 1997年にスキー場開発業者(マルア観光株式会社―2010年に倒産)による違法開発を発端として作られたスキー場です。尾根筋を削り、川筋に盛り土をしてゲレンデを造成したため、造成当初から、大規模な土砂流出と高時川の濁水が続いてきました。

  • 開発許可をした滋賀県(森林保全課)はマルア観光株式会社に是正指導をしてきましたが、是正は進まず。引き継いだ余呉長浜スキー振興株式会社でも経営難を理由に進みませんでした。その間も土砂流出が何度もありました。

  • 2017年8月8日、台風5号で大規模な土砂流出と大洪水で濁りが発生しましたが、是正は進みませんでした。

  • 2021年、株式会社グリーンパワーインベストメント(東京の風力発電事業会社、以下GPIと略)が、余呉長浜スキー振興株式会社から土地を借り替え。是正工事も継承しました。

  • 2022年春、GPIは床固工・大型かご工・沈砂池設置等を含む是正工事を起案し、滋賀県の許可のもと、実施していました。

  • 2022年8月、工事途中の豪雨により大規模な土砂流出が発生しました。

  • スキー場跡の地形は8月豪雨で変わり、工事用道路も流されてしまったため、是正計画の根本的な見直しが必要となり、工事は中断されています。

ベルクスキー場跡地(2022年11月8日撮影)
ベルクスキー場跡地(2022年11月8日撮影)
ベルクスキー場跡地(2022年11月8日撮影)


Q4 : これから心配なこと

  • 2023年春、雪解け水などによる濁水の発生が心配。マス釣りのシーズンにもかかります。

  • アユの友釣りが2022年度シーズン同様に、2023年度シーズンもできない可能性が高いです。

  • 農業者は、春の田植えのために水を張るので、濁水によって苗がいつものように成長できるのか、心配しています。

  • 今後もアユをはじめとする琵琶湖の漁業資源や、琵琶湖の水質に大きな影響を及ぼす可能性があります。

  • 影響が5年、10年を超える長期間に及ぶ可能性が高いと考えられます。(例:高知県物部川、石川県手取川などの事例も)


Q5 : 濁水をなくすために必要だと考えていること 

  • 濁りの原因の特定と有効な対策が早急に必要です。

  • 特に、ベルクスキー場の是正の目標設定や手法策定が計画的でなく、事業者が実施可能な範囲での場当たり的な対策で行われてきたことが根本原因と考えられます。

  • 地域住民の知見、専門家の知見などを生かした、抜本的な是正回復計画策定と、実施体制の整備、そして今回のように想定外の状況が生じたときにも対応をできる体制の整備が必要です。(例:物部川濁水対策検討会(高知県)、手取川濁水連絡会(石川県))

(参考)「高時川濁水対策連絡調整会議」は1月24日の報告書の中で以下のように対策・対応を指摘しています。

「川の中の濁りは早くスムーズに下流へ送り出すことしか無い」

「濁りの調査については、濁度を晴天時や雨天時など様々な条件でオールシーズン調べる必要がある」
「長期の濁りとなっている懸濁物の分析、組成、付着物、高時川の土砂の移動状況、渓岸浸食等による地形の変化を把握することも重要」

「スキー場跡地の崩落跡地における緑化等の濁水防止策に重点を置く必要がある」
「スキー場跡地の是正措置については、8月豪雨により工事が中断していたが、現在国道から進入路の復旧工事等を行っており、雪解け後から緑化工、植栽工等の工事を再開し、早期(今年度中をめど)に完了できるよう、引き続き事業者に対する指導を行っていく」

滋賀県庁「高時川濁水対策連絡調整会議」1月24日報告書


  • なお、現在計画されている風力発電事業を含め、高時川源流部で検討されている開発事業については、今回の豪雨以上の雨が降ることを前提に、土砂流出リスクを検討し直す必要があります。また、開発事業を進めるにあたっては、是正・回復計画の策定と実施体制の整備が前提とされるべきです。

風力発電の建設計画が進む尾根。美しいブナ林が広がっています。


(参考)豪雨後の経過

  • 2022年8月7日 会メンバーによる自主調査開始

  • 2022年8月26日 滋賀県が防災ヘリコプターによる高時川上流域の目視調査実施

  • 2022年8月30日 「高時川漁業協同組合」「丹生川漁業協同組合」が高時川の異常濁水に関する要望書を県へ提出(木之本土木事務所)

  • 2022年9月県議会において、杉本としたか議員と柴田清行議員が高時川の濁りについて質問

  • 2022年10月14日 本会メンバーが高時川上流域・土砂流出問題について長浜市長と面談(市役所)

  • 2022年10月26日 本会メンバーが高時川上流域・土砂流出問題について知事と面談(県庁)

  • 2022年10月31日 知事が記者会見の中で「高時川濁水対策連絡調整会議」(森林保全課・流域政策局水源地域対策課・琵琶湖保全再生課・水産課)を立ち上げると表明

  • 2022年11月16日 本会メンバーと高時川濁水対策連絡調整会議が情報共有と連携相談の会を開催(木之本土木事務所)

  • 2022年12月5日 余呉南越前第一・第二ウィンドファーム発電事業について環境影響評価審査会開催(県庁)

  • 2023年1月24日 高時川濁水対策連絡調整会議が高時川現地調査の状況について 記者報告(県庁)

  • 2023年1月27日 高時川治水対策促進期成同盟会が長浜市長と知事へ濁水の解決や上流の河川改修、それに昨年の被害の復旧等についての要望書提出 (県庁)

  • 2023年2月6日 本会が長浜市議会議員に現況を説明(参加会派ー恵風会、日本共産党、つなぐ長浜、公明党、無所属)

  • 2023年2月17日 本会が長浜市議会議員に現況を説明(参加会派ー新しい風)


(参考記事)
 朝日新聞滋賀版にて「流域治水」記事掲載
 2022年8月26日、9月4日、9月18日、10月2日付け

→ noteで全文読むことができます。


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