キレても子どもは育たない。
子育てをする中で、子どもをついつい怒り過ぎてしまうことはないでしょうか?「ああそんなつもりじゃなかったのに」という気持ちになったり、「こんな叱り方でよかっただろうか」と思い悩んむことがこれまでにあった人に、「アメとアメなし」という手法を紹介させてください。
アメとムチとは
そもそも、アメとムチという考え方があります。これは、良いことをしたらご褒美(アメ)をあげ、悪いことをしたら罰する(ムチ)という単純なものです。しかし、近年では、体罰が問題視されるように、このムチのあり方について考えが改められるようになっています。
なぜ怒ってはいけないのか
そもそも、実は子どもを怒る(=ムチを与える)こと自体あまり効果がありません。
例えば、どうしても宿題を忘れてしまう子どもがいたとします。この子どもに対して、親が「宿題をやりなさい」と怒ったとします。その結果、宿題をやるようになったとしても、それは「怒られないため」にやっているだけです。そのため、怒る人がいなくったり、怒られなかったりすれば、また宿題をやらなくなります。一見行動が良くなったように見えても、それは一時的であり、根本的な問題は解決していません。
人の行動は、基本的に「嫌なこと・危険から逃げる」か「好きなもの・欲しいものを得る」ための行動に分けられます。
この2つのうち、「嫌なこと・危険から逃げる行為」は、強い行動力を発揮します。ただ、嫌なこと・危険がなくなれば、行動もなくなります。怒られることは「嫌なこと・危険」であり、逃げるためにすぐに宿題をやるようになるかもしれません。しかし、危険(=怒られること)がなくなれば、行動を起こす必要がなくなる、という原理です。
怒りは子どもに何も教えない。
また、子どもを怒るという行為は、子どもに何かを教える行為ではありません。そのため、子どもは「怒られた」というネガティブな事実だけを受け取ることになります。効果が一時的な上に、双方が嫌な気持ちになってしまうので、怒る行為にはあまり意味がないのです。
さらに、怒ることはもっと悪い現象を引き起こすことがあります。それが「何もしない」という状態です。怒られないようにする一番の良策は何もしないことです。宿題をやれと怒られた子どもは、絶対に自分から宿題の量を増やすことはしません。新しい塾に通うことも、宿題を増やすことにつながるのであれば避けるでしょう。やらないでいい課題であれば、やったほうが自分の身になっても、やらないことを選択するようになります。学習だけでなく、「怒ること」で子どもに望ましい行動をとらせ続けることは、「そもそも行動しない」を産んでしまう弊害を孕んでいます。
アメとアメなし
ムチがいけないとなればどうするのか。そこで、見直されているのが、「アメとアメなし」という考え方です。
ムチとは違い、「アメなし」というのは、望ましくない行動に対して何もしない、ということです。先ほどの例で言えば、宿題をしなくても怒らないということです。「え?本当にそれでいいの?」と思われるかもしれませんが、秘密は次にあります。
良い行動を増やすことで、悪い行動の量を減らす
アメとアメなしでは、特にアメ(=褒めること)を大切にします。例えば、先ほどの例で宿題をやらなかった子どもが、ある日、自主的に宿題をやったとします。「自主的に」と言ってももしかしたら先生に怒られたからやったのかもしれません。それでも、親は「え、宿題やってんの?頑張ってるじゃん!」ととても嬉しそうにほめます。すると子どもは、心の中では「先生に怒られただけなのだけど」と思いながらも、嬉しい気持ちになります。
次の日は宿題ができなかったかもしれません。それでも何も言わず、その次の日に宿題をしていたらまた褒める、というように「やったら褒める」を繰り返すようにします。
すると、子どもは、まず褒められるために宿題をやるようになります。宿題をやってほめる流れが当たり前になったあたりで、ほめるのをやめ、時々褒めるようにします。すると、いつ褒められるかわからないけど、褒められるためには常に宿題をやる必要が出てきます。宿題をやって時々褒められる、を繰り返していくうちに、「宿題をやる」ということが少しずつ習慣になっていきます。習慣として定着すれば、褒める量をほとんど減らしても
「好きなもの」を得る行為は、一様に嫌なことから逃げる時ほどの行動力を掻き立てるものではありませんが、長続きするモチベーションになりやすいものです。
ただ、この「アメをあげること(=褒め方)」には2つ注意点があります。
1つ目は、褒めるのは結果ではなく過程でなければならないということです。結果を褒められると、結果が出ることが正義となり、結果が出るかわからない新しい挑戦を避けるようになります。この点については、この記事で詳しく解説しています。
そしてもう1つが、褒美を設定してはいけないということです。ご褒美があると、1回目はご褒美のために頑張りますが、2回目以降はそれをご褒美のための「作業」としてみてしまうようになります。
結果、「されていること」として本人のモチベーションは低くなります。この内容についても、詳しくはいつか別の記事で解説します。
褒め方を使いこなすことで、「怒り」の子育てを脱却できます。ぜひ使いこなしてみてください。
※ちなみに、叱ってはいけないわけではありません。一定の基準で叱っても良い(むしろ叱るべき)瞬間があります。
その点に関しても次回の記事で。