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フェリー渡道 [2](終)

前回↓↓↓の続き

1日目、2日目と移動し続けてきたわけですが、相変わらず今日も移動。最後までよろしくお願いします。

3日目 (函館で色々→帰宅)

ホテルは5時にチェックアウト。もちろんフロントには誰もいないので心の中でお礼を言ってから鍵を返却。道南とはいえ10月となるともう冬の気温。自身の防寒に若干の不安を覚えつつ函館駅へ。

JR北海道の駅特有の「改札中」の案内を待つ人だかりには我々のようなオタク数名と早くも学生の姿。どこの学校に通っているのだろう...。

今回乗るのは函館駅の始発列車。列車番号5881D。函館本線 藤城支線・砂原支線を経由して森に向かう列車だ。
オタク諸兄はもちろんご存じであろう8の字を描くように敷かれた函館本線の右半分。いわば3の
字を描くように走る列車だ。

朝一番の特急「札幌行き」の表示が並ぶ
5881Dと後続の北斗1号。
途中のⅡの線がメインルートからは外れる証だ。

暫く待っていると
「おはようございます。只今より 5:49発 藤城・鹿部経由 普通列車 森行きの改札を始めます。ご利用のお客様は3番のりばにお越しください。」と機械アナウンスが流れ、私達の進入を固く拒んでいた「車両進入禁止」のような改札機のマークが矢印に変わり、ホームへ誘う。

改札を通過し、3番のりばに向かう。そこではキハ40の3両編成が待っていた。
2025年3月を以って運用を離脱する予定のJR北海道のキハ40。その定期3両編成となれば乗らないわけには行かない。
実は就職する前の2022年1月にも函館を訪れ、乗ろうとしたところを寝坊して逃してしまったのだ。今回はその雪辱を果たしにきた。

お前のせいだろ

カラカラカラ...とお馴染みの音を響かせながら私達を
出迎えるキハ40×3両

早速乗り込み、誰もいない最後尾車両に陣取る。実はこの列車、大沼駅にて後部2両を切り離すのだが、皆その事は分かっていて先頭車両に座っている。それでもここに座ったのは空いてるのは勿論のこと、この景色が見たかったからだ。

曲がったホームに編成をくねらせ発車を待つ
車内からも3両分の内装が一度に見える。

そうそうこれだ。青函連絡船の遺構である曲がったホームに据え付けられた3両がグネッとカーブを描く。これが見たかったんだ。
今や2両以上で組成されるキハ40も少なくなってきた。北海道だとおそらくこれが最後のはずだ。

聴き慣れたエンジン音の裏で「藤城・鹿部経由 普通列車 森行きです。新函館北斗へは参りませんのでご注意ください。」とこれまた聞き慣れた"あの声"が繰り返し流れている。

あっという間に発車時刻になり、3両編成が仲良くエンジンを吹かし、重たくも力強く動き始めた。

6:02発 1D 北斗1号を横目に発車
扇形に広がった構内から飛び出す
東雲に染まる函館山と函館運輸所


運転席に誰かいる。車掌だろうか?と思ったらドア扱いは行っていない。どうやら車掌ではなく、大沼で切り離した2両を運転する人の送り込みも兼ねているらしい。

目が合って気まずい思いをしつつ、五稜郭、桔梗、大中山と進んでいくと、一つ目の分岐点、七飯駅に着く。発車して暫くすると高架に上り、大きく右に逸れる。

ちょうど太陽が出てきた

高架に上がっている筈だが、車窓の大半が下にある住宅に覆われる。よっぽどのカーブなのだろう。
新函館北斗方面の線路がみるみると小さくなっていく。

なかなかの速度で離れていく。
左上にある白い建物辺りが新函館北斗駅の筈だ。

この藤城支線は函館本線の輸送力増強・勾配緩和を目的として敷設されたが、それでもなかなかの勾配を進んでいく。3両編成の息遣いが少し苦しそうになる。

そのまま暫くすると再び新函館北斗からの線路と落ち合い、大沼駅に到着する。
ここでは後部2両の解放作業と後続の北斗1号を退避する為、15分ほど停車する。

撮影でもしようかとホームに降りたら外は霧で真っ白だった。100m先も満足に見えない。よくこんな中運転するものだ。
そう感心していたら後続の北斗1号が霧から飛び出して消えていった。寒暖差のある季節ではこのくらいの霧はほぼ毎日のことなのだろう。本当に毎日お疲れ様です。

札幌行き1番列車が先を急ぐ

北斗の逞しいエンジン音が霧中に消えていくと、今度はお馴染みのカラカラカラ...という軽やかな音と共に対向のキハ40 2両編成が姿を現す。森駅始発の5880Dだ。道南海の恵み号も繋がっている。

5両のキハ40が一堂に会する

静かだった大沼駅に朝日が差し込み、エンジンのクインテットが朝を告げる。

いつの間にやら解放作業が終わり、対向列車が再び霧へと消えていくと、単行になったキハ40は残りの2両と別れを告げ、もう一つの支線、砂原支線へと進路を移す。

暫く走っていると幾分か霧が晴れ、銚子口信号所(旧銚子口駅 2022年廃止)に停車する。対向のキハ150が通過していった。

ローカル線とはいえ朝はそれなりの本数がある

2022年のダイヤ改正で砂原支線もいくつか廃駅が出た。かつて200系の置いてあった流山温泉駅などは有名だ。少し駅間の長くなった支線に一抹の寂しさを覚えつつ、後部展望を楽しむ。

トンネルに切り取られた色付く森林
デッキより客室を眺める。
壁を隔てて車内を見るのはなんだか不思議な気分だ。


森林を抜け、町へ下りてくると終点の一つ前、東森駅に到着する。ポップな色合いの三角屋根のいい駅舎だ。

国鉄色のようにも見える...

「さよなら三角 また来て四角」という歌が浮かんできた。ちょうど列車の窓も四角いし。また来るからねと心の中で呟いた。
発車すると右手に噴火湾が見えてくる。そうするとすぐさま函館本線と合流して森駅に到着。支線の旅が終わった。

森駅は好きだ。全国の駅の中でも5本の指に入るくらい好きだ。特に跨線橋から見下ろす駒ヶ岳と噴火湾が織りなす景色は最高だ。
あの駒ヶ岳をぐるっと回った更にその向こうに函館があるのだ。忘れがちな北海道のスケール感に圧倒される。

ちょうど隣のホームにキハ150が並んだ。
多分1年前までは隣もキハ40だったのだろう。
2021年4月の森駅。たった3年間で置き換えも進んだ。
そしてまた一つ世代交代が進む。
すぐに入換が始まった。
森の跨線橋は前も後ろも絶景だ。


もう少し居たい気持ちもあるが、隣のホームにいるキハ150に乗り込みすぐさま折り返してしまう。
実はこの列車も砂原支線経由なのだ。また来るからねと言いながら数分後にまた来てしまった。風情も何もあったものではない。

砂原支線・新函館北斗経由で函館に帰ってきた。言うなれば逆S字のようなルートだろうか?

満を持して市電でも撮るかと繰り出してみたら旧型車が一つも走っていない。駒場の車庫を覗いてみたら出庫しそうな気配すらない。天気も悪くなってきた。腹も減ってきた。
市電を撮るのは諦め、ハセガワストアの焼き鳥弁当を摩周丸の前で貪り食う。上でトンビがグルグルと旋回しているが絶対にあげるものか。

そうして腹を満たした私はその場の思いつきで函館駅の1,2番のりばへ向かうのだった。

結局またキハ40に戻ってきてしまった。市電はまたいつか。また行く理由ができたとプラスに考えよう。物は言い様だ。

気持ちを切り替えて汽車に揺られる。茂辺地を過ぎると函館山とそれらが取り巻く湾が見えてくる。

「天気がいい日は函館山が見えます」
なぜかこの文に強く惹かれる。


渡島当別駅で下車。近くの海岸で函館に帰る便が来るまで暇を潰す。

ビーチコーミング」という趣味がある。砂浜を歩いて綺麗な貝殻や石を拾ったりする趣味だ。たまに珍しい生き物や宝石が落ちてたりする。
ひたすら目を光らせて砂浜を歩く。ネコババみたいでなんか嫌な感じがするがこれがまた楽しいのだ。時間がすぐに溶けていく。オススメだ。

道南いさりび鉄道線に目をやるとさっきから物凄い本数の貨物列車が通っていることに気がつく。雄叫びにも似た機関車の音が津軽海峡へと没していった。

暫く時間を潰して折り返す。学校終わりの学生と一緒に乗り込こむ。車内には小学生らしき子供もいる。完全にアウェイだ。一番端のロングシートに座って縮こまる。

とはいえ、デッキには誰もいないのでたまに立って外を眺めたりもした。

列車の影がぐんと伸びる

さて、帰る時間が近づいてきた。函館に戻り市電に乗り「湯の川温泉電停」で降りる。
近くに足湯があるので入りながら空港行きのバスの時間を待つ。

車と一緒に消えていく。
次来る時は旧型車、あわよくば530号やササラも...


少しだけポカポカしたらバス停まで歩き函館空港へ。飛行機を待ちながら驚いた。札幌丘珠から来る便もあるのか。道内便まであるとはまるでアメリカじゃないか。やはり北海道はでっかいどう

酒を買い北の大地を離れる。離陸しながら心の中で「また来るぞー!」と叫んだ。

羽田に到着し、慣れてしまった足取りで錦糸町駅に帰ってきた。やはり関東は暖かい。

そして再び欲望の街。

函館市電だって撮りたいし稚内や根室にも足を伸ばしてみたい。いつになるかは分からないが、またきっと北の大地を踏むだろう。その時は愛車でも行ってみたい。
もしかしたら私にとって北海道のキハ40はこれが最後かもしれない。学生時代の旅を彩ってくれてありがとう。もしまた会う事があれば。


急ぎ足でしたがこれで終了。最後までお付き合い頂きありがとうございました。
noteは読書感想文や作文と違って自分の書きたいことを存分に書けますね。これはなかなか楽しい。
もし次があればその時はまた読んでくだされば幸いです。ではまた。

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