北海道の秋
夏というのは、夜まで暑い日々が何日も続く季節のことを言う。
これは私の主観。
北海道に住んでいると夏とのお別れが早い。
この感覚は、大学の四年間で関東に住んでいたからこそ養われたもので、仮に私が生まれてから今までずっと北海道に住んでいたとしたら、「北海道のほうが早い」という感覚は持たないままだったことと思う。
比較対象がないから。
関東では、「夏休みが終わっても、夏は終わっていない」という印象がある。
大学の夏休みや春休みというのは、大学生にとってはおおよそ自律という言葉を完全に手放すのに十分な期間ということができる程長いのだが、夏が本番に差し掛かった後にそれほどの期間を与えられても夏は終わっていないとなると、もはや「夏」自身も引き際を理解できていない、自律心のない存在だと言わざるを得ない。
季節にメリハリがないものだから、夏休みが終わったことに自覚がない大学生が履修登録を忘れていたり、目が冷めないままボケーっとした表情で学校に駆り出されたりする。そんな放心状態の学生たちをこの目が痛くなるほど焼き付けることができるのが関東の夏の終盤というもの。
しかしそんな純度の高い残暑にうんざりしていたかと思うと、ある時突然怒涛の冷風が私達の身に降りかかり、秋の香りなど堪能する間もないまま無理矢理に冬の寒さの記憶が呼び起こされるのが関東。
「北海道は寒いから嫌だ」という人がよくいるが、四季という点でいえばこれほどわかりやすい所がないほどはっきりしているのが北海道だと思う。
夏から秋の変わり目に強くなる風が山の方から植物たちの香りを運んでくる。(多分)
その若干ひんやりした澄んだ空気に「ん~秋だ」と感じる。
とは言っても、季節的に秋だし、なんとなく雰囲気が変わったからこれは秋の風、と決めてるだけで、
仮にはるか未来に、四季の風を抽出して好きなように操れるようになった時に、それぞれ嗅がされて春夏秋冬どの季節の風か当てろ!という番組に呼ばれたりしたら正解できる自信はない。
私が入った部屋にGacktが居たらこれほど嬉しいことはないな。
ああ、でも正解不正解とか季節とか関係なしに、ドア開けてGacktがいたらどんなシチュエーションでも嬉しいか。
仮にGacktが地獄への案内人で、突然ドアを開けた先にGacktがいたとしても、救済だと思ってしまう可能性すらある。
と、北海道では今、季節について思いを馳せてしまうくらいには秋風濃い日々となっているし、Gacktはいつだって存在感が濃い。
少し歩けば栗が大量に散らばっている公園にたどり着ける私の地元は、川も近く、時間と心に余裕があるときに長時間川を見下ろせば生きた秋鮭を目のあたりにできる。
今年の秋はマニュアル通りと言わんばかりにじわじわと夏から秋へ、そして少しずつ冬の寒さへと移行するさまを見せてくれている。
この調子でどうか緩やかな遷移を見せていただけるよう、気象庁あたりに何か上等なものを送ろうかしら。