医者、カウンセリングに行く。
「なんで貴方はそんなに自分自身に対して厳しいの?」
僕はその言葉にビックリした。なぜなら、僕は今の今まで、自分は自分に対して甘いと思っていたからだ。
「そんなに自分自身を傷つけて、貴方は一体なにがしたいの」
その時、僕はその言葉が何を意味しているか、理解できなかった。それから数週間後、僕はその言葉の真意を理解するのだが、それはもっとずっと後の話である。
「貴方にいま必要な事は、外の敵と戦う事ではない。自分自身に、キチンと向き合ってあげる事だ」
「カウンセリングにいって来なさい」
僕はその時、その人が、僕の事を全く理解していないから、そんな事を言っているんじゃないかとしか思えなかった。
何故なら僕は、既に自分自身と向き合う為の術として、フルマラソンに瞑想、絶食と、自分自身が考えられる限り、最善だと思う、全てを自分自身に尽くしていたからだ。
それから2日がたち、その人の言葉がだんだんと自分の胸の中に浸透してきた。
僕はそれまで、誰かの意見は基本的には自分本意な善意の押し付けばかりで、耳を傾ける価値のあるものなど無いと、思っていた。
けれど、その人が僕に向けて率直に言ってくれた意見には、確かに自分自身の独善性がどこかにありつつも、立場や役割を超えて、自分自身の”意見”として、僕の事を本心から心配してくれているのだな、と思える意図が感じられた。
「僕は、これまで誰の意見も受け入れずに、ここまで自分自身の正義だけを貫いて、ここまでやってきた」
「それで強くなれた部分は、確かにある」
「けど…だからこそ、僕は今、他人の意見にキチンと向き合う時がきたのかもしれない」
その時が今だとしたら…カウンセリングを受けてみるのも、悪くはないのかもしれない。
まあ、全然駄目だってのなら、それはそれで暇な時間を浪費しただけのことに過ぎない。
けれど…ひょっとしたらひょっとして、カウンセリングが自分自身を救う、一つの道しるべになるのかもしれない。
「やってみるか…」
そうして僕は、カウンセリングを受けることに決めた。
そしてそれは、確かに見えなかった風景を、自分の中に確立するための、キッカケとなった。
この物語は、ある男がクビになった結果、自分自身と向き合い、そしてそれを受け入れて、その先へと歩む決意となった物語である。
読みたい人は、読んでみて欲しい。読みたくない人は読まなくていい。
けど、読んでくれたら、たぶんそこには何か今までにはない、新しい気付きのフックになる何かがあると、僕は思う。
では語ろう。自分自身を38年無視し続けてきた男が、38年かけて、自分自身と仲直りした、物語を。
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