乱痴気騒ぎがビールを旨くする! 600万人が遊び呆ける「青島国際ビール祭 2024」
野球場で飲むビール、BBQで飲むビールなど、祭りで飲むビールはうまい。ビールを旨くする馬鹿騒ぎをエクストリームかつデモクラティックに拡大したのが青島国際ビール祭りだ。
夕暮れから夜更けまでの馬鹿騒ぎ
青島国際ビール祭りは、青島市全域で数か所の会場を設け、2週間にわたって総勢600万人を動員する。最大の会場は海沿いの青岛西海岸新区金沙滩啤酒城だ。80ヘクタール、ほぼ1km四方の超巨大な会場全体がビールフェス会場になり、夕暮れ時から真夜中24時頃までひたすら乱痴気騒ぎが続く。
また、レーザープロジェクション、花火、バルーン、プロジェクションマッピング、LEDアート、ねぶたなど、夜さまざまに光るアート作品で会場は埋め尽くされている。
クオリティはばらつきがあるが、夏の夜にブラブラ歩き、酔っぱらいながら光り物を見るのはとてもよいものだ。
会場に構築されたパビリオンや、会場内の野外各所にステージがあり、ダンスバトル、お笑い、ビール早のみ大会、バンド活動など、様々な娯楽が行われている。どれも無料だ。
青島は街を挙げてビール推し
理想の青島人ライフは、ビールを飲み、アサリを食べ、海で泳ぐだという。アルコール飲料の広告ゾーニングなどなんのその、街は各所でビールづいている。
ごった煮でカオスでハイパーエナジーながら、のんびりゆったりでもある。街を挙げてでありながら自分勝手でもある。
こうしたボリュームは今の中国ならではかもしれない。
会場に並ぶ多くのパビリオンとステージ
ハイネケン、ヒューガルデンなど、青島ビールと提携している各ビールブランドや、青島ビール内の各種ブランドごとにパビリオンが用意され、ステージと食事をする人々で埋まっている。
ステージでやってるのは「1,2,3、カンパーイ!」とか青島! ビール!のコール&レスポンスなど、無邪気も良いところだが、上裸で立ち上がって踊り始めるおっさんなどが出てくると、こっちも勢いづいてしまう。
パビリオン内の食事は大量に作り、ビールもあらかじめ注いである。「ベストコンディション」ではない。が、そういうことを吹っ飛ばす魅力がこの馬鹿騒ぎにはある。青島ビールのお膝元で、新鮮なのは間違いない。食べ物の味付けもビールに合う濃さだ。
青島ビールだけでなく、中国ライドシェア最大手のDidiが「運転代行6割引」のQRコードを会場で配りまくる、ミネラルウォーター、タバコ、スポーツ用品などあらゆる産業がプロモ割引をするなど、お金を使いたい人、稼ぎたい人どっちも大喜びだ
酒飲みだけでなく、子供から老人まで安心して楽しめるフェス
ここまで大規模で夜に酒飲みフェスをやると、危険さが伴うものだ。ところがこの青島ビールフェスは、会場内どこにも子供や老人たちがいる。多少の酔っぱらいはいるが、乱暴狼藉はない。ケンカやビール以外の薬物もまったく見ない。
もちろん中央部には警官隊がスタンバイしているが、ほぼリラックスしていた。こうした大規模イベントでの治安の良さも、今の中国だけかもしれない。かつて問題となっていた会計不明瞭さ(2015年)に対しては大きく価格表が貼り付けられており、トイレの汚さ(2023年)も大きく改善されていた。
何も考えずにパワー勝負しているようで、じつは毎年、それなりにアップデートがされているようだ。僕は2023年に続けての参加だが、アート系の展示はコンセプトも手法もだいぶ変わって、今年は複数箇所でのプロジェクションマッピングや、光かつ動きのある展示も見られた。
人生に幸福をもたらす
青島国際ビール祭りは、世界2位のビール祭りと自称している。世界第2位というのはドイツのオクトーバーフェストに次ぐということだろうし、人数の600万もオクトーバーフェストに合わせてカウントしてそうな雑さだ。(特に人数カウントしてる様子はなかった。公式サイトに事前予約のQRはあったが、会場では確認してない)
ビール祭りの割に、会場はビール以外のコンテンツが盛り沢山だ。肝心のビールや食事のクオリティは疑問符もつく。
そもそも「美味いビール」とはなにか、何が必要か?
ホップは何を使うべきで..上面発酵が…細かい泡がフタになって..グラスを冷やし..など、人が醸す飲み物である以上、こだわるポイントはいくらでもあるし、納得いくまで吟味して飲む一杯はさぞ旨かろう。
一方でこういう馬鹿騒ぎ、楽しんでる人たちと一緒に飲むことが、更にビールを美味しくする。花火もプロジェクションマッピングも音楽も競技もパレードもアートも、飲み込んでなんとなく一つのイベントにしてしまうパワーが、ビールというお酒にはある。
これが別のお酒だと、フェスの趣旨は変わって、もっとフォーカスされたものになりそうだ。
青島ビールのミッションは、「人生に幸せをもたらす(To create happiness towards life)」で、確かにフェスは様々な幸せに満ちている。
今の中国にはビザが必要だが、日本→青島→香港→日本とか、日本→韓国→青島→日本など、行きと帰りで違う国に行けば7日間のトランジットビザが使える。また、日本人の多い上海や北京からも高鉄半日ほどで来れる。
何かしら人々の楽しみに触れたい人にはぜひオススメのイベントだ。今年は8月11日まで開催されている。