Postcard Boy, Ethan Tasch…今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-28
今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。
Spotifyのプレイリストも更新してます〜
Postcard Boy
2019年と2020年のベストEPにも選出して、個人的には待ちに待った、LAを拠点に活動するGarrett Seamansによるソロプロジェクト、Postcard Boyが待望のデビューアルバム『Somewhere On A Hillside』をリリース。以前このブログでも彼のサイド・プロジェクトcarwashについても紹介していましたが、今回の作品でそのcarwashが客演で入っている面白い試みもしています。同一人物による別のプロジェクトを自分の作品に参加させるのもあまり見かけないですよね。ちなみに作品のうち数曲のプロデュースでTom Verberneが参加しています。
初期のベッドルーム・ポップ・シーンからDIYで活動を続け、シーンでも一目置かれているPostcard Boy。彼の作り上げるサウンドは作品を出すことに洗練され、より純度の高い鮮やかなポップな音楽性に仕上がっていっているのを感じます。今作ではアコースティック・ギターの生感あるサウンドを中心に据えていて、このプロジェクトで得意とするアンビエントやグリッチ、ダンスミュージックといった電子音楽との掛け合わせも見事。さらにはインディー・ロックをメインとするサイドプロジェクトcarwashの持ってき方も秀逸。自身で2つのプロジェクトをやっているならではの音楽性にしっかりと仕上げているあたりも最高です。彼は自身で映画を手がけるほど映像にもこだわっていて、MVも爽快感あって最高です。この夏に必聴のアルバム間違いなしです。
Ethan Tasch
LAを拠点に活動するシンガー・ソングライター、Ethan Taschがデビューアルバム『Got Him!』をリリース。彼もベッドルーム・ポップ・シーンの中でも知られるアーティストで、今作にはM2の「Holdup」にはspill tab、M3「Love and Japan」にはWallice、M4「Shell」にはRemi Wolf、さらにはBoyishもアディショナルボーカルで参加しているという充実ぶり。
カントリーといったアメリカーナの音楽性をベースに、インディー・フォークやインディー・ポップを絡めた、牧歌的で透明感あふれる美しいサウンドに仕上がっています。爽やかな風で、広大な大地に生えわたる草原がなびく、穏やかな光景が浮かぶようなサウンドスケープ。彼の優美で柔和な歌声も最高です。
ちなみに「Love and Japan」という曲があるように実際に日本に訪れてMVも撮影しているので、どこかのタイミングで来日公演はあり得るかも…。
TYSON
ロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライター、TYSONが新作ミックステープ『Sunsetters / Daybreakers』をリリース。彼女はこれまでにEzra Collectiveとのコラボをはじめ、Joy OrbisonやNeneh Cherry、Dean Bluntなどの作品への参加など、さまざまなところで活躍するアーティストです。またSudarn Achrivesのツアーに一緒に回るなど注目を集めています。
そんな名だたるアーティストと交流をもつ彼女の本作では、Coby SeyやDelilah Holidayをはじめ、rRoxymore、Albertina、James Massiahが客演で参加し、Joy Orbisonも数曲プロデュースで参加しています。作品自体はダウナーでダークな輝きを放つエレクトロニックサウンドに、艶やかでメロウな美声が包み込む、幽玄で厳かな仕上がりに。レンジの広い低音の響き方や細部までこだわったサウンドプロダクションの緻密さにはどの楽曲でも驚かされます。UKGやダブ、インダストリアル、トリップ・ホップなど多岐にわたって取り込んだ音楽性に、ネオ・ソウルやR&Bを染み込ませた素晴らしい作品かと思います。Tirzahやotta、Léa Sen、George Riley、John Glacierなどに続く才能に輝くアーティストかと。
Konyikeh
ロンドン生まれで現在はエセックスを拠点に活動するR&Bシンガー、KonyikehがデビューEP『Litany』をJorja SmithやENNY、Mychelleなどを輩出するレーベル〈FAMM〉からリリース。本当にこのレーベルは、次から次へとUKの輝くべき才能を持ったアーティストをしっかりと見つけて世に出している印象があります。彼女自身は、ラッパーDaveの2022年のBRIT Awardsでのパフォーマンスのイントロのボーカルで登場し、そこから脚光を集め始めることに。
それもそのはずで、彼女の発する歌声の成熟さが本当に20代前半とは思えないほど。深みのあるハスキーボイスで、ソウルフルな迫力には圧倒されます。サウンドもクラシカルなものから現代的なものまでアレンジされたソウル/R&Bで、特にシンプルなピアノでのストリップソングやストリングスを加えた優雅な楽曲など、洗練されたものばかり。今後も要注目のアーティストですね。
Samba Jean-Baptiste
南米のハイチをルーツに持つNY・ブルックリンを拠点に活動するベッドルーム・ポップ・アーティスト、Samba Jean-Baptisteが新作EP『Doll』をリリース。
正体は不明ですが、ネットを彷徨っていたら見つけたアーティストです。彼の作り上げるサウンドは、弾き語りをベースにしたものですが、とても実験的なアプローチをしていて、街中でのフィールドレコーディングを使用したり、ノイズ、ストリングスなどを取り込んだ楽曲などさまざま。ローファイからフォーク、アンビエント、R&Bなどをクロスオーバーさせて、奇妙だけどウィットに富んだ音楽性に仕上げています。Frank OceanやBon Iver、James Blakeあたりからの影響をものすごく受けているようなサウンドスケープというのが個人的な印象です。ちなみに2022年に出している『Pandora』というアルバムもなかなか尖っていてやばいので合わせてぜひ聴いてみてください。