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Bickle, Bricknasty…今週のおすすめ 5 Best Songs:2023-22

今週も新人の新譜から厳選して5組のアーティストを紹介します。音楽ブログ「abstract pop」の「5 Best Songs」の企画では、国内の音楽メディアでは紹介されないような、海外の新進気鋭なアーティストを毎週紹介していきます。過去に紹介したアーティストは下記にまとめてあります。

Spotifyのプレイリストも更新してます〜


Bickle

どれだけ彼のアルバムをストリーミングサービスで待ったか…。Roy Blairの盟友でもあり、ベッドルーム・ポップ界でも天才的才能と謳われ、数々のミュージシャンからも絶賛される、アトランタ拠点のアーティスト、Bickleがデビューアルバム『Biblickle』をリリース。
彼はもともとBandcampを中心にさまざまな作品を発表してきており、例えばTravis Scottの「SICKO MODE」のオマージュをしたカバー曲集『Some Inside Jokes』など、ユーモアに満ちたエンターテイナーな側面もありながらも、トラックメイカーとしての腕は間違いなし。2020年に発表したシングル「Naked」という曲で私自身は出会った(日本で初めてツイートしたはず)のですが、もうその衝撃が頭から離れず、彼の同行はずっと追っていました。Bickleは"Bickleboy"というトラックメイカーの名義で曲を出していたり、以前ブログでも紹介した”Peg Punch”という名義でも作品を発表するなど、とにかく多作です。
そんな彼がとうとう満を辞して、やっとストリーミングサービスにアルバムをドロップしたわけですよね。。。3年待った。。本当に嬉しくて舞い上がってましたね。今作はBickle特有の独特のポップさが滲み出た作品で、チープでローファイなトラックで、レイヴやハウス、ダンスミュージックなどの多彩なビートアレンジも最高。そしてThe Beatlesのような耳に残りやすいポップなメロディーが特徴となっていて、とてもアンセミックな仕上がりとなっています。9曲全てが最高なんですよ。本当にまじでありがとうBickleさん。


feeble little horse

アメリカのペンジルベニア州のピッツーバーグ出身の4人組バンド、feeble little horseが2枚目となるアルバム『Girl with Fish』を、Big Thiefなど数々の素晴らしいバンドを輩出してきたレーベル〈Saddle Creek〉からリリース。2021年に発表したアルバム『Hayday』がインディー好きの中で話題となり、Snail Mailも食いついてInstagramで紹介したところ、Stereogumの〈Band To Watch〉などの多くのメディアやレーベルからオファーが殺到したほど。
1stアルバムもとてもいい出来なのですが、この2作目の方がより彼らのストレンジなポップさが全面にでた1作に仕上がっています。90年代のPavementの意志を継ぐようなノイジーでローファイなギターサウンドは痛快で、USインディー的な牧歌的で穏やかなムードも取り入れているのも印象的。そしてさらにAlex Gを想起させるような遊び心あふれるサンプリングや音作りも秀逸ですよね。たゆたうようで甘美な歌声もバンドの音楽性にマッチしていて、9曲目「Pocket」の後半ではシャウトも取り入れるという幅広さも魅力的です。今年のバンド作品の中でも一つ頭が飛び出たアルバムかなと。


Bricknasty

ダブリンを拠点に活動する5人組のソウル・ヒップホップコレクティヴ、BricknastyがデビューEP『INA CRUELER』を、Jorja SmithやENNYらを擁するレーベル〈FAMM〉からリリース。作品にはKhakiKidやTomike、Chi-Chiが参加。ボーカルのFatboyが、プロデューサーのCillian McCauleyと出会ったことをきっかけに結成し、その後にDara Abdurahman(Ba.)、Korey Thomas(Dr.)、Louis Younge(Sax./Key)が参加して、現在の大勢になったそう。
D’AngeloやMF Doom、Timbalandなどから影響を受けたという彼らの奏でるサウンドは、ネオ・ソウルやジャズ、ヒップホップ、サイケ、UKのダンスミュージックなどを織り交ぜた、ダークだけど多幸感あふれる音楽性に仕上げています。ジャジーで陶酔的な曲から、ダンサブルなビートを駆使した曲やアコースティックの弾き語りの楽曲までとさまざまで、その幅広さも驚かされます。彼らの漂うアンダークラウンドでストリートな質感のムードが滲み出ているのは、バンドの中心人物でもあるFatboyがダブリンの中でも郊外のBallymunという地区で育った経験からきているそう。この地区は、薬物乱用、失業、犯罪率の高さなどの社会問題で知られていて、自身のそういった重い経験や社会問題も反映させて今作を制作したそう。


Anysia Kym & Jadasea

NYを拠点に活動するドラマー/DJ/プロデューサー、Anysia Kymが、ロンドンのラッパーJadaseaとのコラボ作品『Pressure Sensitive』をリリース。JadaseaはKing Kruleと親しく、トラックメイカー名義"Edgar the Beatmaker"の作品で客演に参加したり、個人的な2019年のベストEPにも挙げた作品『Half Life』ではKing Kruleがプロデュースしたりと有名です。
今作は両者が生まれ育ったNYとロンドンの90年代のブラックカルチャーをテーマにしていて、イギリスのカルト的な音楽映画『Babylon』の舞台にもなったペッカムの独特なカルチャーや、アメリカのクラシカルなヒップホップやR&Bのカルチャーからサンプリングしているとのこと。そんなテーマから作品を制作したことで、NYとロンドンの現在のアンダーグラウンドのカルチャーの架け橋とでもなるような、ユニゾン的な音楽性がとても印象的。アングラでダンサブルなビートはロンドンの鬱々とした感じを想起させつつも、NYのタイトでハイプなエレクトロニックシーンの色も感じさせる、Anysia Kymが作り上げるトラックは独特なもの。そこにJadaseaのダウナーで渋さ際立つフロウも最高です。


Noah Becker

ドイツ・ミュンヘン出身のアーティスト、Noah Beckerがデビューアルバム『Heaven Yeah!』をリリース。作品にはduenditaやJoel Holmesなどが客演で参加しています。
ハウスなどのエレクトロニックミュージックをベースに、ヒップホップやソウル、ジャズを掛け合わせた、多幸感溢れたメロウな音楽性が魅力的です。スモーキーでダンディーな彼のフロウもユニークで、キャッチーでフックの効いたものとなっています。Channel Tresのような音楽好きな人位は刺さるかと。


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