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90年代の音楽を知らないアナタへ その70 WATERFALLS(95)/TLC すべてが聴きどころ!キラーラップ炸裂!TLCはインテリで社会派

TLCを取り上げるのは「RED LIGHT SPECIAL」以来の2作目。この「WATERFALLS」は90年代を代表するHIPHOPのアンセムといえるマスタピースであり、TLCの中でも、アメリカ本国で7週連続1位という特大ヒットしたうちの1曲である。タイトルでピンと来ない人でも、サビを聴いたことがある人は多いかもしれない。

曲を作ったのはラップ担当でありTLCのブレインでもあるリサ「left eye」ロペスと、オーガナイズドノイズのメンバー。リサは社会派としても知られ、若い時分から同年代の悲惨な実情やドラッグ、エイズ、フリーセックスの横行に独自の思想で警鐘を鳴らし続けた、根っからのアーティスト気質な人である。

この歌最大のテーマは「エイズとドラッグ」。重たいテーマに対し、ポップで口ずさみやすいメロディに仕上がっているのが魅力である。そして忘れがたい歌詞にあらためて普遍的な魅力が光る。

サビはこうだ。

「DON'T GO CHASING WATERFALLS. PLEASE STICK TO THE RIVERS AND THE LAKES THAT YOU USED TO. I KNOW THAT YOU'RE GONNA HAVE IT YOUR WAY OR NOTHING AT ALL. BUT I THINK YOU'RE MOVING TOO FAST.」

「滝の流れを追いかけないで。慣れ親しんだ川や湖から離れないで。自分自信の思った道をすすみたいというのもわかるし、それが出来ないと意味がないというのもわかる。ただ急ぎすぎないでね。」

こういう風に歌われている。滝は激しい感情の応酬で、制御できないトラブルの大きな元の比喩であると考察。川は生活の基盤となる一定の流れを持ったライフベース。安定と平穏の象徴。そして湖は深く、広い愛情の比喩とするとこの歌詞が深いところで腑に落ちるのではないだろうか。

ただのポップヒットに終わらないよう、ミュージックビデオもシリアス路線を貫き、視覚的にもメッセージ性の強い内容になっている。それまでの楽しいTLCとは一線を画し、大人へと成長を遂げたグループの質と強い個性を物語るものになったといえる。

そして後半のリサのラップである。

「I SEEN A RAINBOW YESTERDAY. BUT TOO MANY STORMS HAVE COME AND GONE LEAVIN' A TRACE OF NOT ONE GOD GIVEN RAY. IS IT BECAUSE MY LIFE IS TEN SHADES OF GRAY, I PRAY ALL TEN FADE AWAY SELDOM PRAISE HIM FOR A SUNNY DAY.」

レインボー。ストーム。ゴッド。マイライフ。プレイズ。サニーデイズ。この単語だけでも希望が見えてきそう。困難とはひとつ去っても、またひとつやってくるもの。その一つ一つをしっかりかわしながら、揺るぎないものを忘れないでいれば人生素晴らしいものになるし、きっと幸せになれる。自分の気持ち次第だよと、ラップ全体でメッセージしている。

こういう風に10代や20代のころに代弁者のようなアーティストがいるとどれだけ心強いか。だからこれだけのヒットに繋がったに違いない。

アメリカのダークサイドはいまだもって解決するどころか悪化しているとも言えて悲しい現実である。TLCの音楽がラジオから流れてくるたびに自然と体が動し、現実を忘れながら現実を知られるという不思議な音楽体験ができたものである。

今は亡きリサがこの現状を嘆くのが目に見える。リサは現実的で、つねに同世代のトラブルと向き合ってきた。この現状をどうラップで表現するのか。リサのラップ、TLCの音楽とともに成長してきたわたしは、彼らの音楽が聴けなくなるのは寂しいく、リサがいなくて本当に空しい限りである。


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