ギリギリ危ないところの少し向こうまで。命の母ホワイトが効いたのかも
昨夜、連続で吠えていた娘は疲れて静かになりました。
と思ったのは束の間で轟くような咆哮はうねりながら続き、終わる気配がありません。
耐えて忍ぶ。人間、我慢と辛抱だ。
終わったのかな。
寝るかな。
まだ喋ってるけどもう大丈夫だな。
１１時を回りました。眠い。寝なければ。
と思ったら出てきました。なんなんだよ。
「これ以上飲み物飲んだらトイレに行きたくなるから今日はもう飲むの禁止ね」
「んあ」
暴れないだけマシです。
娘が部屋に引っ込んだのを見届けてから私も寝ます。
ベッドで横になってラジオを聞きます。なんかこう、猛烈に眠いけど、こういう時は私もなかなか眠れなくなっています。
寝なければ。
突然、私が寝ている和室の襖が乱暴に開けられました。
や、やられるッ。
違いました。
娘は無言で私を追い払おうとしています。
「なに、こっちで寝るの？」
返事はありませんが、そういうことのようです。
「わかったよ、あっち行くから。ちょっと待って。寒いよ。寒い」
布団から出ると猛烈な寒さです。
なんか心細い。
私を追い出した娘はさっきまで私が使っていた布団にくるまりました。その間ずっと無言です。
「布団、あったかいと思うよ。もう寝てね。目を閉じて寝てね」
娘はカッと目を見開いたまま微動だにしません。
「だから目を閉じて寝てね」
「わかった。あっち行って」
「あっち行くから、目を閉じて寝てね」
「あっち行って」
「目を閉じて」
「うるさい、あっち行け」
「わかったよ、あっち行くよ。おやすみ〜」
娘は最後まで目を見開いていました。
寝ないのかな。
どうなのかな。
娘の部屋に移動します。この部屋は寒いんだけど、布団は大丈夫だろうか。
大丈夫ですね。娘は夏用の薄い掛け布団しか使っていなかったようですが、羽毛布団も毛布も各種揃っています。それを重ねてあたたかくして、今度こそ寝なければ。
１時を過ぎていました。
眠れないなあ。またラジオを聞くか。
イヤフォンを耳につけて、とかしていたら和室から娘の叫び声が聞こえてきました。今日はずっとこんな感じなんだろうか。なんかなあ。なんだかなあ。
２時頃、娘が静かになり、私もようやく眠りにつきました。
「げエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ（死ねえ）」
娘の絶叫です。何時でしょうか。朝です。６時？ ６時でした。
朝から絶叫かあ。
さすがにすぐに収まりました。娘も疲れているのだと思います。
７時過ぎ、目覚ましに起こされます。スヌーズで７時半まで。娘、朝は寝てるんだろうなあと思っていたら、
「げエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ（死ねえ）」
今回なんか止まんねえな。睡眠薬で寝たの一晩だけってことなのだろうか。
起きて娘に声をかけます。どうせ娘も起きているので薬だけでも飲んでもらおうと。
「（命の母）ホワイトと落ち着く薬（気分安定薬）、どっち飲む？」
「どっちも」
了解だけどさあ、薬たくさん飲みたいみたいのも悪い躁状態なんだよね。本当にもうね。
ギラギラした様子の娘が勢いよく薬をノドの奥に放り込みます。なんか悪い薬やってるヒトみたいだよね。
「今日はカレーとふりかけテーブルに置いておくから。ご飯はあるからカレーでもふりかけでも玉子かけでも納豆でもなんでも食べて」
「んあ」
娘は和室に戻ってブツブツ喋っています。私は考え直して娘のお昼のチキンサラダとヨーグルトを用意します。それから自分の朝食を食べます。今朝はサラダとコーンフレークとコーヒーです。眠いので作るのも面倒なのです。自分の分の食器は洗っておきます。そのほうが帰ってきてから楽なのです。それからパソコンを立ち上げて趣味のWebサイトの毎日ツイートしているランキングを片付けます。ついでに少しこの前からハマってる javascriptのあれこれを調べます。DOMのどうこう、毎回わからなくなるんだよなあ。Node walkingって言うのか、自分がやりたいのはまさにこれだな。
娘が和室から出てきた音が聞こえます。冷蔵庫の中から色々と取り出しているようです。朝食を食べるんだな。
様子を見に行きました。テーブルにチキンサラダとヨーグルトを並べて玉子かけご飯を食べています。
「玉子かけご飯さあ、もう少し醤油かけたほうが美味しいよ。かける？」
「かけて」
「胡麻もかけていい？」
「かけて」
なんかこう、すごく穏やかです。
「もしかしてさあ、ホワイトと気分安定薬、効いた？」
「効いた」
効いたんだ。ふーん。
「ニンジンのぬか漬け食べる？」
「食べる」
ぬか漬け、大根ときゅうりも漬けておかないとなあ。
そうかあ、命の母ホワイトと気分安定薬、効いたんだあ。
そうなんだあ。
なるほどねえ。
◇ ◇ ◇
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