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深夜の痛み
昨夜、カレーを食って命の母ホワイトを飲んだ娘はそれから数時間に渡って歌い続けてからコテンと寝てしまいました。
娘が寝ると私が眠れないパターンかと心配したらその通りでした。猛烈に眠いのになかなか眠れず、横になったのは1時頃です。そこからまだしばらく眠れず。2時近くになんとか眠りにつきました。
すぐに目が覚めました。
寒い。
猛烈に寒い。
布団の隙間から冷気が忍び込んできます。寝る前はそこまでの寒さは感じませんでした。急に冷えてきたのかなあ。
身体の向きを変えるなどして様子を見ます。寝る時は下着とTシャツです。部屋着のスウェットを着たほうがいいかなあ。でも着ると暑そう。薄い毛布でも足したらよく眠れるかなあ。それでも暑そうだな。
そんなことを考えているうちに寒気がひどくなってきました。身体の芯から冷える感じ。熱なのかも。それならなるべく寝たほうが良さそう。
さらに姿勢を変えるなどしてなんとか少し落ち着きました。眠いのは眠いのです。これで眠れるならそれでいいや。
しばらくして目が覚めました。さっきよりひどい寒気。悪寒。今度は腹痛も重なってきました。痛い。痛い。痛い。
声が出そうなぐらい痛いです。腹痛がひどすぎて寒気を忘れそうなほどです。痛い。
急速に膨らむ痛み。
激痛。
気を失いそうです。このままだとまずい。でもどうしたら。
再び色々と姿勢を変えてみます。寒気と痛みが良くなる気配はありません。時折大波のように痛みが押し寄せてきます。それが引くと今度は寒気で身体が強張ります。
やはりスウェットを着るなりして暖かかくしたほうがいい。そう思って身体を起こそうとしたら……、
ただでさえ暗い部屋の中で視界が暗転。地球の中心に頭ごと引きずられるような立ちくらみ。吐き気。居ても立ってもいられないほどの痛み。
死を意識するほどの痛み。
暗闇の中でスウェットを探す間に倒れそう。それならトイレに行ったほうがいい。
立ち上がる途中で何度か意識が飛びそうになります。手探りでドアに向かいます。開けて廊下へ。トイレは斜め向かいです。しっかり立てない。扉を開けてよろめくように電気もつけずにトイレの中へ。
便座に座ります。
痛い。痛い。痛い。痛い。
寒い。それより、痛い。
お腹の痛みはまったく収まりません。吐き気も増してきました。うつむいていたらそのまま頭が下がっていきます。前のめりに倒れる、と思ったところで扉に手をついてなんとか持ちこたえました。
寝ている娘に助けを求める、そんな考えが頭をよぎります。無駄でしょう。娘に助けを求めたところでボーッと見守られるだけでしょう。
それでも万が一にでもこのまま意識を失くした時に娘に救急に連絡してもらうとか、そういうのはどうだろうか。
いや、スマホを持ってきてもらって電話をかけてもらうのは無理だ。無理だ。無理だよ。
痛みがひどくて寒気を忘れていました。同じ姿勢のまま時間だけが過ぎていきます。痛みが腹の中を捻じり上げます。その痛みに耐えかねた何かがのどから吐き気となってこみ上げてきます。
姿勢を変えて時を待ちます。意識と呼吸は細々と続いていますが、いつ途切れてもおかしくありません。
ここで死ぬのか。死んでしまうのか。
さらに耐えます。
狭い室内のおかげで寒さが和らいできた気がします。痛みは止まりませんが、それだけでかなり違います。
姿勢を変えるとお腹の中が少しだけ動いた気がしました。
あまり大きく動くと痛むので、気持ち程度に身体を動かします。痛みは変わらず。寒さが戻ってきたりまた遠ざかったり。
腸が動く雰囲気が。いや、動いた。
腹の中で暴れている痛みの元が出ていってくれたら治まるのではないか。
待ちます。
待ちます。
待ちます。
ああッ。
ようやく少しだけ出ました。
でも全然痛みは収まらないよ。どころか増々痛みがひどくなってくるよ。
吐きそう。吐いたほうがいいかも。でも姿勢を変えるのが無理です。これ以上身体を動かしたら痛みで意識が遠のいてします。
待ちました。
出たッ。
出たッ。
何度かに分けて腹の中身が出ていきます。途中から水下痢です。腹の中身が出ていく度に血圧が下がるのかなんなのか、目がぐるんぐるんと回り頭は支えられないのではというほど重くなります。肩が、肩が硬い棒で殴られたように重く痛みます。目が押されたような痛みととともに頭の奥に落ちていく。胃が熱くなり吐き気が熱とともに上がってくる。
その間も腹の中身はすごい勢いで噴出していきます。止まらない。
どれぐらい続いたか、時間の感覚は定かではありません。水下痢は一旦止まりました。まだ出そう。なのでこのまま待機です。
ここでようやく扉を開け、手を伸ばして照明のスイッチを押しました。
個室の中が明るくなりました。頭を持ち上げるがツライので見えているのは床だけです。
再び痛みと下痢の大波。
これを乗り切ったら大丈夫なんじゃないかという微かな期待とともに耐えます。
なんとか耐えた。耐え切った。
またしばらくその姿勢のまま。動きたくないのではなく動けないのです。
腹の痛みが弱まりました。シャワートイレで洗浄。温水に救われる。温水トイレ、最高。
刺激されたのか、小波。身を任せます。
シャワートイレで洗浄。
もう立ち上がっても大丈夫なのですが、足にチカラが入らず。
這うようにして部屋に戻りました。
スウェットを着て布団に潜り込みます。腹痛はまだ続いていますが、もう激痛ではありません。寒気も続いていますが背骨から凍りつくような悪寒ではありません。
これなら眠れる。
目を閉じたらすぐに寝てしまいました。
◇ ◇ ◇
今日になって娘に「パパ、昨日の夜中、トイレで大変だったんだよぉ〜」みたいな話をしたら「ふーん、そうなんだ~」ぐらいの反応でした。
ですよね。
まあ、そうだよね。
◇ ◇ ◇
noteの最初のほうが本になっています。近いうちに入手困難になる可能性が高いので、お求めの場合はなるべくお早めに。
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