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ありがとう、ドリアン。

娘が起きてこないので私だけの朝食はサッポロ一番みそラーメン。白菜と長ネギをたっぷり。相変わらず家の中はドリアンの匂いで満たされています。

やっぱりドリアンの匂い、嫌な匂いに思えないなあ。すごく美味しそうに思える。

娘が起きてきました。

「今日はドリアン。ワクワク」

娘からそんなことを言い出すとは。どんだけ期待が高まっているんだ。

娘の朝食はロールパンとドーナツ。

「ドリアンはお昼すぎに食べるから」

「んあ」

その前に洗濯したりなんだり。買い物はドリアン食べた後にするか。

お昼が近づいてソワソワし始める娘。時計を何度も確認しています。

「あのさあ、お昼すぐには食べないよ」

聞いているのかいないのか。

「あのさあ、12時過ぎた直後にドリアン食べようとか言ってきたら捨てるからドリアン」

それでもソワソワが止まらない娘。

「もうやめて。12時1分過ぎとかでもすぐだから一緒だから。それでも捨てるから」

ちょっとしょんぼりして時計から目を逸らして部屋に戻る娘。

ちょうど洗濯が終わりました。洗濯物を干します。ベランダに出ると室内がどれだけドリアン臭に満たされているのかがわかります。

軍手とビニール手袋を用意してから娘に声をかけました。

「ドリアン食べよう」

嬉しそうに部屋から飛び出してくる娘。本当に、こんなに嬉しそうな娘は絶えて久しく見たことがありません。病気になってからもそうですが、長くクスリを飲んでいるとどうしても平板な感じになるとのことです。娘も例外ではありません。嬉しいのも悲しいのも特に反応がないまま日々を過ごしています。それなのに、ドリアンでこれだけ娘の感情が揺さぶられています。すごいなドリアン。ただなんか単調な日常に慣れてしまった私には娘の抑揚の効いた感情表現がややうるさくも感じられるのです。なんという身勝手な話でしょうか。でもまあ、そんなもんなんだろうなと。

食べ頃なのだと信じて
包丁を入れます
軍手で少しずつ開きます
可食部が見えてきました
多分、食べ頃
娘にスマホのシャッターを押してもらったらどれもブレブレ
ぶよぶよ
あれだけ大きな実から食べる部分はこれぐらい

大きな実に包丁を入れ、軍手とビニール手袋をはめてトゲを避けながら少しずつ開いていきます。可食部が見えてきました。匂いはほとんど気になりません。さらに開いて可食部を取り出していきます。思ったより多いような少ないような。熟れ過ぎたマンゴーというイメージはやはり近いようです。軍手とビニール手袋でスマホのシャッターを押せない私の代わりに娘に推してもらいますが、軽くタッチが出来ない娘が力任せにエイッと押すのでブレるブレる。まあでもそれも一興。

バラした外側はすぐに新聞紙でくるんでからビニール袋を何重にも重ねます。新聞紙もビニール袋も匂いを防ぐのには役に立たないので幅広のラップでぐるぐる巻きにします。そこまでやると臭い漏れは一切なし。匂いのキツイものの処分にはラップぐるぐる巻きが一番です。

可食部ふたつをとりあえず食べることにしました。あらかじめフォークとナイフを用意しておきましたが、中にある種を取るのはビニール手袋のほうが簡単でした。手づかみで食べるのが正解なのかも。とりあえず私が食べやすいように手でちぎって娘はフォークで食べました。

最初しばらくは娘も私も無我夢中みたいな食べっぷりでしたが、徐々に落ち着いてくると食感は味も楽しみながら。濃厚でバターみたいというのは納得ですが、思った以上にフルーティーでした。

食べきれない分が皿に残ったのでロールパンをちぎって拭い取るようにして食べたらこれは当たりでした。脂っこくなくてすっきりとした甘みのクリームのよう。娘も夢中で食べていました。

残りの三房はすべてラップで包んで、二房は冷凍、一房は冷蔵で夜か明日に食べようねということに。

「美味しかったね、ドリアン」

「ん」

「また買ってもいいね、ドリアン」

「ん」

「でも一年に一回ぐらいだけどね、ドリアン」

「ん」

そのあと、各部屋の扉を開け、居間とキッチンの窓も全開にして空気の入れ替えをしました。冷蔵のドリアンはラップでしっかり密閉されていなかったようで庫内がドリアン臭で満たされていました。ラップを重ねて匂いを密閉。ラップしてからジップロックとかでもよかったかも。

元旦から今日まで延々と楽しませてくれたドリアン、本当にありがとう。娘の感情が動かされることは滅多にないのです。ドリアンでこれほど動かされるとは。

ということは、次はシュールストレミングか。

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高島利行
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