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「警察は処刑しないよ」と伝えると娘は王騎将軍のように「ンフフフ」と笑った

昨日の夜は憤怒の予感の娘を恐れてなかなか眠りにつけませんでした。12時を過ぎて1時を過ぎても、いつ娘が叫びだすかと思うと眠れません。しょうがないので起きています。2時近くになってようやく横になりました。しかし、眠れません。娘がドスドスと足音を立ててやってきたらどうしようか。今日こそ娘は鈍器を抱えてやってきて私の頭に叩きつけるのではないか。そんな不安がぐるぐると渦巻きます。外からかすかに聞こえてくるヒトの声が娘の声のように思えます。こんな状態が続くと私もヤバいです。

3時近くになってからようやく眠れました。

朝、娘は寝ているようです。起こしたくないので朝食は抜きです。年末年始で趣味のWebサイトのサーバー移行と不具合の解決まではたどり着きました。それ以上は無理です。代わりに会社でなかなか手が回っていなかった新しい取り組みについて着手します。Chromebookでどの程度まで仕事が出来るか心配でしたが、どうやらほとんどのことはなんとかなりそうです。買ってよかったChromebook。

昼が近づいてきました。娘が喋っている声が聞こえます。もう大丈夫だろう。今日はお雑煮です。元旦に作ったのはゴボウを入れ忘れました。今日はしっかり笹がきゴボウを入れて作ります。美味しく出来上がりました。それでも足りずに炊飯器のご飯でおにぎりを作りました。ぬか漬けと一緒に食べます。美味しい。

昼を過ぎて娘が起きてきました。薬を飲むそうです。なにか食べるか聞きます。

「いい」

要らないという意味です。

「お雑煮、食べる? 今日はゴボウ入れたんだよね」

「お雑煮、食べない。やっぱり食べる」

「餅は何個?」

「いっぱい」

「1個か2個で」

「じゃあ2個」

娘の分は少し大きめの器で出しました。完食。お腹は空いていたようです。

一時半過ぎ、娘に「お昼食べる?」と声をかけます。さっきのお雑煮は朝食という位置付けです。

「食べる」

「カレーでいい?」

「いい」

こちらの「いい」は、それでいいという意味です。

カレーには玉ねぎスライスとカイワレ大根と福神漬を乗せました。完食。

「夕飯、なんか食べたいものある?」

「冷凍のチャーハン」

「パパの手料理は食べたくないってことね」

ニヤリと笑う娘。腹立つわ〜。

部屋に戻った娘は歌っています。楽しそうだ。よかった。しばらくすると寝たようです。日中寝ると夜中に眠れないけどしょうがない。

夕方、居間でカタカタとキーボードを打っていたら娘が絶叫しました。

驚いた。心臓に悪い。

何度か絶叫。

やめてくれ〜。

部屋から出てきました。

「夕飯食べる?」

「食べる」

「冷凍チャーハン温めるよ」

「んあ」

見るからに不穏な表情。まだ叫び足りていないのか。

電子レンジで温まったチャーハンを虚ろな視線でかきこみます。ものすごくボロボロこぼしてるし、ダメなんだろうな。でも食べたら落ち着くかもなあ。

完食。皿を片付けてくれました。ありがとう。おや、カップ麺を持ってきた。

「足りない。これも」

了解です。

「お湯沸かすね〜」

お湯を沸かしている間も、お湯を入れて出来上がりまでの4分間も、和室で小さく「死刑」とか「処刑」と喋り続けています。

出来上がりました。娘の代わりにかき混ぜます。

「ランチョンマット」

最近、娘の食事の時はランチョンマットを敷くようにしています。そのほうがテーブルが汚れないので。それにしてもエラそうだ。

私がランチョンマットをセットすると、娘は「あっち行って」とやや怒り気味に言いました。なんて自分勝手な奴なんだ。

私が居間を出ていこうと娘の視界からハズレた直後に娘が絶叫しました。なんか心が凍りつきます。やめてと声をかける間もなく再度絶叫。

「パパあっち行くから、叫ぶのやめて、お願い」

娘は凶暴な犬がグルルルと唸るように「あっち行け」と言います。行くよ、行くから叫ばないで。

完食したようです。

部屋で喧嘩しているように妄想独り言を喋り続けています。処刑とか死刑とか、なんでそんなに好きなんだ。

ここでハッと思い当たりました。元旦に娘が(元)妻に話していた内容です。娘が話しているのは仕事なんだと。本当は男で部屋で喋っているのは警察の仕事なんだと。

娘、もしかして警察が処刑したり死刑にしたりするとか思ってるんじゃあなかろうか。可能性あるなあ。娘、とにかく何もかもよくわかってない上に色んなことがごちゃごちゃだから、妄想の中の警察の仕事として一所懸命に処刑したり死刑にしたりしてるのかもなあ。それはあるかもなあ。

娘が部屋から出てきました。

「アイス食べる?」

「食べる」

「アイス食べたら薬飲んで」

「んあ」

無色透明の表情でアイスを食べる娘に思い切って聞いてみました。

「あのさあ、もしかして警察の仕事って処刑とか死刑だとか思ってたりする?」

娘は王騎将軍の如く「ンフフフ」と笑っています。

「警察はさあ、処刑とかしないし死刑もしないよ。犯人逮捕したりはするけど、パトロールしたり警護したりでどっちかって言うと地味な仕事だよ。逮捕したりするのも一部で、高校出て警察官になっても犯人逮捕しないヒトとかいっぱいいるはずだよ。気軽に処刑とか死刑とか、それじゃあ『ロボコップ』だよ」

娘はやはり「ンフフフ」と笑っていました。

怒っていないだけマシですが、娘の心の妄想警察、実際のところはどうなのでしょうか。やっぱり『ロボコップ』のイメージなのかなあ。

わけわかんねえなあ。

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高島利行
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