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消しゴム版画のクォリティ、今日もモキッッと折ってみる

昨日は本当に娘を疑って申し訳なかった。反省しています。考えてみるとプリンターの用紙トレイを抜き出すとか、そんなことは娘には無理なのだ。わかっていたはずじゃないか。でもなあ、娘、たまに「本当はわかってるんじゃないか」的な考えられないことをしてくれたりするからなあ。そうだとしても簡単に疑うのはよろしくありません。本当に悪かった。

私が扉越しに謝った後、娘はすぐにいびきをかいていました。

娘が寝たのを確認してから私は持ち帰り仕事に取りかかりました。会社の年賀状の消しゴム版画です。一昨年から「こんな時期だからこそ手作り感で」と言い出して消しゴム版画にしています。今年は印刷でもいいから誰か他にやりたいヒトがいればと投げかけてみましたが、前回と同様に消しゴム版画で良いということに。そうですか。

というわけで、来年の年賀状の消しゴム版画を作ります。アイデアは決まっています。丸い月の中のウサギです。使えそうな月の画像を探してプリントアウト、それを参考に手書きで月のウサギを描きます。イマイチだな。でもこれでやるしかない。必死で彫ります。出来上がった。押してみるか。あ、なんかちょっと大きいな。これはダメかも。どうにか押せた。

明らかにクォリティが低いです。気持ちがしんなりしてきました。でも、これでいくしかない。削り屑を片付けて出来上がった消しゴム版画を袋に入れてカバンにつめました。いや、でもダメだろ、これじゃ。いくらなんでもクォリティ低すぎだよ。

葛藤はありますが諦めます。明日会社で現実を見直して、それでもダメなら篆書にします。困った時は篆書で。

娘は夜中もまったく起きていなかったようです。キッチンに飲み食いした痕跡なしでした。よく寝たなあ。これだけ寝たら起こしても大丈夫だろうと朝は久しぶりに声をかけてみました。しかし、寝ているではないですか。まだ寝るのか、すごいな。

冷蔵庫にカツオのたたき(2割引)と唐揚げ(2割引)があります。サラダも用意しました。ヨーグルトとゴマ豆乳プリン(2割引)も。炊飯器にはご飯。カレーのレトルト2種類とふりかけをテーブルに置きます。これだけあったら大丈夫でしょう。「冷蔵庫のカツオと唐揚げとサラダを食べて」とメモも残します。バッチリだ。

会社に着くまでも消しゴム版画のことがアタマから離れません。どうしたらいいのだろうか。やっぱり篆書か、それしかないか。

午前中は年末までに片付けなければいけない急ぎの仕事があります。まずはそれに着手。完了。続いて消しゴム版画。やっぱり篆書だな。方針を変えたらあとはお手本を探して見様見真似で掘るだけです。わりとあっさり彫り終わりました。試しにペタリ。おお、いい感じじゃないですか。最初から篆書にしておけばよかった。でもなんかおかしい。色々足りない。そうか、年賀状のあいさつと社名・住所はプリンターで印刷してたんだ。あのデータはどこにあったかな。これか。よしよし。

1時ぐらいまでに印刷とハンコ押しまで完了。本当に、余計なことを考えずに最初から篆書にしておくべきでした。

お昼に少し近所を回ります。ヒトの流れは着実に戻ってきました。行列のできるお店にはまた行列が出来始めています。行列に並ぶのが嫌いなので、ガラガラの時に食べておいてよかった。こんだけ並んでると自分はもう来ないだろうなあ。

昼食のアンパンと豆乳を買って社に戻りました。午後も年内に片付けておきたい仕事を細々と。今日中の連絡も幾つか間に合いました。よかったよかった。

買い物はせずにまっすぐ帰宅。娘は寝ていました。キッチンには色々食べた残骸が。色々どころかすごい沢山食べてるな。炊飯器のご飯は食べ尽くしたのか。食べ過ぎだな。

しばらくしてから起きてきた娘にお腹空いてないよねと聞くと「空いてない」とのことでした。

「晩ごはん、入らない?」

「はいらない」

「夜食になんか買ってくる?」

「買ってきて」

「カップ麺買ってきたら食べる?」

「カップ麺食べる」

「じゃ、今日はパパがなんか買ってくるから、買ってきたのを食べて」

「食べる」

私が買い物に行こうとしているだけで既にブツブツ喋りだした娘の前で、(元)妻が膝の手術のあとで使っていた折りたたみの杖を「モキッッ」と折ってみせます。

「モキッッ」

笑っていました。

スーパーで特売の謎のカップ麺(99円)を購入しました。何味なのかもわかりません。その他諸々買い物。私の分の夕食は冷凍庫の水餃子の予定なので特に購入せず。

帰ると娘が待ち構えていました。カップ麺を渡してお湯を沸かします。娘もなんとも言えない表情でカップ麺を見ています。何味なのでしょうか。

お湯を注いで湧き上がった匂いで判明したのはやたら本格中華風だということです。大丈夫だろうか。娘は食べられるのだろうか。

大丈夫でした。特になんということもなく完食でした。

「カップ麺は塩分が多いから、水を飲んでね」

「わかった」

薬を飲んでおやすみなさい。部屋で「死んで」とか「死ね」とか喋っていましたが、叫んではいません。落ち着いた感じで「死んで」とか「死ね」とか喋っています。扉越しに声をかけます。

「呪いの杖を折るよ~。モキッッ」

ちょっと笑っていました。

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高島利行
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