④CHICANO SOULと私
さて、Bobby Orozaのバックバンドをつとめる「Cold Diamond & Mink」のメンバーが運営するフィンランドのソウルレーベル「Timmion(ティミオン) Records」から「This Love」のシングルが最初にリリースされたのが2016年。時系列で考えるとアメリカ国内よりも少し早いくらいのアクションだったワケですが、翌年2017年には今大人気の「チカーノ・バットマン」のフロントマン「バルド・マルティネス」もソウル路線のソロシングルをティミオンからリリースしています。
▼Bardo Martinez & The Soul Investigators「Bad Education」(2017年)
こちらのバックバンドはティミオンのもう一つのハウスバンド「The Soul Investigators」メロウでグルーヴィーなラテン・ソウルでたまりません。ちょっとサイケデリックなところもカッコイイ。
ルーベンさんが書籍「CHICANO SOUL」の中で名前を挙げている「Thee Baby Cuffs」や「Jonny Benavidez」といったアメリカ国内のミュージシャンも2017年にフィンランドのティミオンから音源をリリースしています。そんなジョニー・ベナビデスの2018年リリースの2ndシングルのMVをご覧下さい。
▼Jonny Benavidez and Cold Diamond & Mink「Let's Get Together」(2018年)
「This Love」のレコードがバッチリ映り込んでて仕掛けてる感もアリアリですが笑。女性たちがレコード・ディグを楽しむ様子がすごくオシャレでステキ(こんな店でありたいもんですな)。登場人物は少ないながらも色んな人種(混血?)の人が登場したり、またローライダーもギャングスタなイメージとはまた異なる感じで演出されてます。
アメリカのチカーノ・ミュージシャンが次々とフィンランドのティミオンから音源をリリースすることになった経緯はよくわからないんですが、ルーベンさんのインスタグラムを遡って過去ポストみていると、古いレコードやローライダーの写真と一緒に現行ソウルのレコードもリアルタイムでたくさんポストされていて、そこに「コレは何?」「私もこのレコード欲しい!」といったコメントが多数寄せられてます(その中にはもちろんBobby OrozaやDurand Jones & The Indicationsなんかもあったり)。アメリカ西海岸やテキサスのソウル・ミュージック・ファンにとってルーベンさんの影響力ってとても大きいんでしょうね。まさに"フィクサー"といった感じ。
続いてご紹介するのが、イースト・ロサンゼルスから登場した新世代チカーノグループ「The Altons」。このグループも書籍「CHICANO SOUL」の中でルーベンさんが名前を挙げていて、現在はThee Sacred Soulsと同じくDaptone傘下に発足したチカーノ専門レーベル「Penrose Records」に所属しています。
佇まいからしてもうホント大好きなんですが、この感じはインディーロックやオルタナ好きにも刺さる音ですよね。ぜひ最新シングル曲のMVもご覧下さい。手がけたのは、なんと日本人イラストレーター/アニメーターのTomo Oriyama(https://manto.tokyo)さんです。
▼The Altons「Float」(2023年)
実はジ・アルトンズは前回のnoteでご紹介した「Thee Sinseers」とメンバーが4人も被っているのですが(ジョーイ・キニョーネスは準メンバー的なポジションなのかも)、ジ・シンシアーズがオーセンティック寄りなソウル・サウンドなのに対して、より先鋭的と言うか簡単に"チカーノ・ソウル"と一言では括れない多様な音楽のバックグラウンドがありそうで「広がるチカーノ・ソウル・ムーブメントの輪」を象徴するようなグループですね。
「Sunny & The Sunliners」のソウル音源をリイシューしているNYの「Big Crown Records」の首謀者の一人のリオン・マイケルズがインタビューでこんなことを言っています。
Big Crownは前身レーベルの「Truth & Soul」からずっと続いているリリースも軸にあって、「El Michels Affair」を筆頭とするシネマティック・ソウル、ヒップホップ/R&B経由のソウル・シンガー「Lady Wray」、チカーノ・バットマンの後輩バンド「Brainstory」なんかの動きもジャンルを跨いでむちゃくちゃ面白いことになっているのですが、それらと同列にチカーノ・ソウルにも重きを置いているって感じでしょうか?何にせよ、コアな現在進行形の音楽ファンにとっては目が外せないレーベルなのは間違いないです。最後にそんなBig Crownから最近リリースになったソウル系グループを2グループご紹介。
▼Les Imprimés「I'll Never Leave」(2023年)
コチラはノルウェーのグループ。Bobby Oroza直系というかレーベル所属グループの美味しい所を全集中させたような「Big Crown」ド真ん中サウンド。リーダーはプロデューサーでマルチ演奏家のMorten Martensという方らしいです。北欧のミュージシャンたち、みんな繋がりとかあるのかすごく気になります。そのうちスウェーデンやデンマークからもこういうミュージシャンが出てきたりして?
▼Thee Marloes「Midnight Hotline」(2023年)
コチラはなんとインドネシアのグループ。ついにアジアからも登場した!と衝撃を受けました。チカーノ・ソウルって元々ハイブリッドな音楽なワケですが、それをまたインドネシア音楽などとハイブリッド化させているとでも言いますか、とにかくカッコいい。Music CampさんのHPにメンバー・インタビューが掲載されてますんで是非お読み下さい。
書籍「CHICANO SOUL」が発端となり、国や人種、地域性、そして音楽スタイルの壁を超えて世界中の音楽愛好家やミュージシャンにまで「チカーノ・ソウル」が広がっていくとは、ルーベン・モリーナ氏も自費で本を出版した当初は思ってもみなかったでしょうし、ひょっとすると今のこの状況に誰よりも驚き、また喜んでいるのもまたルーベンさんご自身なのかもしれませんね。
今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。長々と書いてきた「CHICANO SOULと私」は今回で一旦終わろうと思います。
大層なことを書いてきたので "よっぽど「チカーノ・ソウル」に詳しいヤツなんだろう" みたいに勘違いされることを実は恐れてるんですが…ぶっちゃけ、ききはじめたのもここ1、2年くらいのニワカ者なんです。知らないことの方がぜんぜん多い…。
ただ、今まで好きだった音楽もそうじゃなかった音楽も「チカーノ・ソウル」を通して新しい発見があったり、音楽愛好家の方との新たな出会いもあったりして、音楽をきく楽しみの幅が広がったというか、今ちょうどそんな感じです。
このnoteを読んでご興味もって下さった方がいらっしゃったら、5月のルーベンさんとお仲間の来日イベントにぜひとも足を運びましょう〜!
※ルーベン・モリーナ氏の来日イベントの詳細はコチラ(画像にリンク貼ってます↓)