ダボス会議に参加して (1) (NHKラジオ2023年2月16日放送)
みなさん、こんにちは。今回も、NHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは「ダボス会議に参加して」です。1月のダボスはマイナス10度くらいまで気温が下がり、とても寒かったですが、熱い議論を聞くことができて刺激を受けました。
田中キャスター:先月、世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」がスイスで行われましたが、九門さんも参加されたそうですね。どのような経緯だったのですか。
九門:ダボス会議は毎年1月に、世界の政治や経済界のリーダー、有識者、市民団体など世界のリーダーが集まり会議を行う場です。私はもともとダボス会議が、世界が抱える地球規模の課題を議論する場だという点で非常に興味を持っていました。今回は企業から同行のお話があったので参加しました。現地では、グローバル人材育成の専門家としてセッションの解説を行ったり、一部通訳をしたりしていました。今回はテクノロジーの進歩などにより仕事や教育をどう変えていくべきかなど「人材育成や働き方」という私の専門に関連したいくつかのセッションに参加しました。
田中キャスター:今回、ダボス会議のテーマに関連して、九門さんが注目した話題、キーワードは何でしたか。
九門:今回の大きなテーマは、「分断された世界における協力」でした。その中で、私の専門である「人材育成や働き方」に関連した視点から3つのキーワード、①「コロナ後の組織と働き方」②「労働市場のミスマッチと各国間の違い(不平等)」③「リスキリング(学び直し)」についてお話しします。
田中キャスター:九門さんがダボス会議で注目したキーワード、まず「コロナ後の組織と働き方」については?
九門:アメリカでは「大退職」と呼ばれるように、コロナ禍で退職した社員が労働市場に戻ってこない状況が問題となっています。また医療、看護、物流などでエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちが不足しているという状況もみられます。ダボス会議の公開セッションでは、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターが公開している「有能な人材を確保するために」というものがありました。そこで出されていた意見の中では、労働市場や労働者の意識の変化があり、有能な人材を確保するためには、●給与面の改善、●オフィス勤務と在宅勤務を両方行うハイブリッドなど柔軟な働き方の導入、●情報の透明性、●性別を問わない公平な扱い、●企業が提唱するバリュー(理念)が本物であること、などが重要と言われていました。
田中キャスター:今、有能なグローバル人材を獲得するために、九門さんは中でも、どのような組織や働き方が、今求められていると感じましたか。
九門:外国人留学生と話していても、Z世代と呼ばれる若い世代は、先ほどお話ししたような柔軟な働き方や職場環境を重視する人が多いです。ここで大事なのは、週何日くらい出勤して何日をリモートワークにするかについての最適解を個々の企業が考える必要があるということです。また、企業の企業理念や価値観については、SDGsなど世界や社会に対する貢献を打ち出す企業は増えていますが、単なるPRではなく本当にそれを実行する意志があるかが問われていると感じます。
田中キャスター:続いてのキーワード、「労働市場のミスマッチと各国間の違い」について、やはりミスマッチは世界的に起きているのでしょうか。
九門:世界中で、企業側の需要と労働者のスキルがマッチしていない状況が起こっているということです。しかし、国や地域によってその状況は異なっています。アメリカでは、失業率が急増した一方、EUや日本では失業率は安定しています。特に、従業員の解雇が難しい日本では、失業率はコロナ禍でも2~3%台となっており、コロナ前と比べても大きく上昇していません。また、発展途上国では仕事がなくて失業する人が増え「仕事不足」という状況が起こっています。世界には、インターネットにつながっていないため仕事に関する情報が得られなかったり、仕事につけない人たちが大勢いる不平等な状況があります。
(次回に続く)
※本ブログでの、NHKラジオ 番組でお話した内容については、同番組の許可を得て掲載しています。