「ここにしかない大学 APU学長日記」を読んで:日本人学生と国際学生が「混ざる」ことで起こるイノベーション
みなさん、こんにちは。
シルバーウィークの連休中に、立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長が書かれた「ここにしかない大学 APU学長日記」を読んでいました。APUには研究の関係で2回ほど訪問したことがありますが、学生の半分が国際学生(留学生)というダイバーシティ溢れる大学です。
この本の中には、こう書かれています。
「ダイバーシティ豊かな教育環境は、それ自体が素晴らしいことです。(中略)いま、日本社会になにより求められているイノベーションを生み出すうえでも、「これ以上の環境はない」のです」
私もこの点にとても共感します。出口学長はシリコンバレーは多様な人材が集まったことでイノベーティブな場所になったことから、ダイバーシティ豊かなAPUも同じように起業家や社会起業家を輩出するのに最高の環境と書かれています。 実際に起業に関心がある留学生や日本人学生も多いようで、2018年7月に学長直轄の「APU起業部」が発足し、そこで起業したバングラデシュ、スリランカなどの学生4組の事業が紹介されていました。
「社会をよくする」という視点で事業を考える学生が多いと書かれていましたが、私もZ世代・ミレニアル世代の留学生や外国人材と話していて、それを実感しています。例えば、東京大学公共政策大学院で「日本産業論」を留学生向けに教えていますが、企業や省庁のゲストの方が来られた際に、日本での起業に関する質問が何度も出ました。また、現在コンサルティング会社で働いている日本とアメリカのハーフのアメリカ人の男性は、経済的にインターナショナルスクールに通えない子どもたちにもバイリンガル教育を提供できないか考えていると話していました。日本で起業するのは大変なのではと思いましたが、シリコンバレーでの起業は競争が激しいので、環境面では日本は起業しやすいと話していたのが印象的でした。
日本はもっと多様性を受け入れて大学も企業も日本人と外国人が「混ざる」ことで、シリコンバレーとはまた異なる、アジアからの人材を中心にしたイノベーションを生む場所になる可能性を感じます。日本への留学生の9割以上がアジア出身ですし、このように留学生や外国人材には起業家マインドを持つ人たちも多くいます。彼らが日本企業で働いたり、自身で起業したりすることによって、社会変革が生まれる可能性もあります。しかし、それにはユニークな個や才能を活かせるように、強い同調圧力のマインドを変えていかなければなりません。本書でも、「変わり者」と呼ばれるような個性を持つ「尖った学生」こそ積極的に受け入れたいと書かれていますが、まさに日本人、外国人に限らず必要なことです。
日本を外国人材が学びやすく、働きやすく、起業しやすい仕組みに変えていくことは、外国人材に限らず、様々なアイデアを持った若者や女性の活躍、働き方改革が進むことにもつながり、私たちも多様な学び方や働き方がしやすくなるのではないでしょうか。日本におけるダイバーシティやイノベーションの必要性、日本の大学が真に国際化するには何が必要かということについて大いに考えさせられた1冊でした。ありがとうございました。