ダボス会議に参加して (2) (NHKラジオ2023年2月16日放送)
みなさん、こんにちは。今回も、NHKラジオのレギュラー出演番組 「マイあさ!」の「マイ!Biz キャリア&ライフスタイル」コーナーで田中孝宜キャスターとお話した内容を、こぼれ話を含めてお伝えしたいと思います。
今回のテーマは前回に続いて「ダボス会議に参加して」です。
田中キャスター:前回お話いただいた発展途上国での「仕事不足」やデジタルデバイドなど不平等な状況の中で、日本は今、何ができるでしょうか。
九門:新興国や発展途上国に対しては、結局は日本企業が貿易や投資を積極的に進めていくことがその国の経済を発展させ、雇用を生み出すことにつながると思います。また、こうした国から日本に来ている留学生には優秀な人材も多く、母国に帰国して政府や企業の要職につく人も少なくないので、高度人材として採用していくことで将来的にこうした国々とのパイプ作りにもなると思います。
田中キャスター:最後に、最近日本でもよく聞かれる言葉、リスキリング、学び直しについてはどんな議論がかわされていましたか。
九門:労働市場のミスマッチやAIなどデジタル化を背景に、リスキリングの必要性や、学びなおしを企業や政府がどう進めるべきかが、議論されていました。今、AIを使って共に仕事をすることが重要になり、プログラミングをはじめデジタル関連の技術を早急に身につけるべきと言われています。
しかし、今回は、さらに一歩進んで、学び直しで技術を身につけるだけではなく、人間にしかできないことを考えて、その能力を高めることに議論がシフトしてきていると感じました。中でもソフトスキルの重要性があげられていました。これはリーダーシップやコミュニケーション、交渉など自己や対人関係に関連するスキルを指しています。コロナ禍では、世界中でロックダウンが起こり、在宅勤務の機会も増えました。そこで管理職が在宅勤務をしている部下の仕事や新しい学びに関する意欲を高めたり、プロジェクトを推進していくかというリーダーシップやコミュニケーション面でのソフトスキルが求められるようになってきたと言えます。
田中キャスター:リーダーシップやコミュニケーションなどのソフトスキル、これは今後、日本人が海外のグローバル人材をいかして、ともに働く上でも必要な能力ということでしょうか?
九門:特に、日本人は海外のグローバル人材と仕事をするためには、
①自分が「この仕事を通じて何をなしとげたいのか?」「自分は何がやりたいのか?」という、自分の内側のアイデンティティや軸をしっかりさせておくことが大事です。そうすれば、自分の意見や立場を明確に伝えることができます。
そして、②多様性をマネージする力も必要です。ダボス会議の場のように多国籍、多様な価値観を持った人たちとどう付き合い、どうまとめていくかという多様性をマネージする力がビジネスの場でも大事になります。日本国内にいても、外国人社員と働く機会が増えてきていますし、女性や若者、シニアの方など様々な属性で価値観が異なる方と働く機会は今後も増えていくでしょう。
田中キャスター:ダボス会議のテーマ「分断された世界における協力」ですが、九門さんが会議に参加して、日本もより多様なグローバル人材を受けいれていくために、得たヒントは何でしょうか。
九門:私もコロナ禍で久しぶりにヨーロッパに出張で行きましたが、改めて海外に行って現地の空気感を肌で感じることの重要性を感じました。日本の中の多様性を感じられる機会を持つこともおすすめです。例えば、国内でも新大久保がある新宿区には2023年2月時点で131か国の外国人が住んでいて、多種多様な国の料理やお店があります。また、地方でも観光のインバウンド旅行者が戻ってきているので、外国人と交流できる機会が増えてきています。
ダボス会議というと皆さんの日常には直接つながらない印象をお持ちの方も多いと思いますが、今日お話ししたことについて、皆さんの日常の仕事や学びの観点から考えてみると気づきがあるのではと思いました。