❨602❩1973.4.24.火.晴/入学シーズン/サント・ドミンゴ:ドミニカ共和国
午前中、一時間町を歩いた。暑かった。
あちこちの窓から、気だるそうに通りを眺めている人が目立った。やはり暑い事は、誰も同じか。
その中で音楽だけ、景気よく鳴っていた。
フッと、彼等に悲哀のようなものを感じた。
自転車で走っていた時は、肉体的に始終疲れていたが、毎日走るという事に集中出来た。
しかし、今はどうだ。
本がある時はいいが、ないと、足を折られた田中のかかしみたいに、稲の穂の間で誰かに見つけられるまで、じっとしているしかない。
それが、一週間であるか、二週間 三週間であるが、見当がつかないだけに、余計苦しい。
大石蔵之介みたいに、時が来るまで待つべきか?
時々、こんな旅ならいっそ止めた方がいいと思う。ただ日々を重ねて行くにすぎない。
つまらない時だ。
日本は、入学シーズンだな。
新春に胸をふくらませて、各々の学校の門をくぐる生徒の姿が目に浮ぶ。
俺も、今だに覚えている。小学校の入学の時を。
あの時だけ、おふくろが一緒に行ってくれた。とても懐しい。
俺は今、入学ならず、入国に胸を痛めている。
いずこの地にあろうとも
いくとし月日を過ぎるとも
忘れえぬものは
母のおもかげ
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