❨857❩1974.1.3.木.曇/【入院中】日本大使館のシノムラさん/アンカラの病院:トルコ
痛みは不思議な程にない。顔や口を動かさない限り、昨夜もあれから眠れた。
日本大使館へTELしてもらい、シノムラさんという50才位の人が来てくれた。こんな時、言葉が出来ないのが悲しい。
病身で、しかも遠地にいて、日本人に会うというのは、更に心強いものがあった。
シノムラさんに事故の様子を教えてもらう。トラックがハンドルを誤ってこちらへ突っ込んだという。日本なら補償してもらえるところだが、ここでは無理という事を聞いて、ガッデム!と思った。以前、日本人の大使館員が、事故で死んだ時もそうだったという。何というところだ。
命があっただけでも不幸中の幸いと考えた。
しかし、この人の親切は身にしみた。
日本の新聞、雑誌、タバコ、それに治療にと、100リラ見舞ってくれた。
100リラは、今の俺にとって大きい。
こんな事故の後でも、食欲だけは大きく、腹が減って仕方がない。ここの食事は、質量共に、ひどいものだ。外へも行けず、忍耐するのみ。
包帯を取ってもらってビックリ。
お岩か、フランケンシュタインか?想像以上に激しい面になっていた。
額は大きく腫れ、左目は半分ふさがっている。縫い口が痛々しい。
それもそうだろう、この頭で、あの厚いウインドー・ガラスを割ったのだからな!
一日寝て、頭をなるだけ動かさないようにした。
兎に角、安静にしている事だ。