保育の質 と 配置基準 : 北欧デンマークの保育事情🇩🇰
北欧デンマーク在住の安田です。
これは先日、日本の保育関係者の方と打ち合わせをしていた際に実際に耳にした言葉でした。
幸福度ランキング上位、ワークライフバランス、高福祉、学生への給付金(約12万円/月)等々話を聞くと、日本社会とのギャップに驚くことが多くあります。
日本と北欧は人口規模や社会の仕組みや歩んできた道のりが異なるので、簡単に比較することはできません。しかし、多角的に見てみることで何か学べること、見えてくることがあるのではないか?
そんな仮説をもとに「保育」というキーワードを中心に北欧デンマークの保育事情編をスタートします👌
保育の質に関する児童・教育大臣のスピーチ🎤
UVM = Børn og Under Visnings Ministeriet (こども教育省)
2023年5月にデンマーク教育省のマティアス児童・教育大臣のスピーチした内容の記事がデンマーク教育省のHPに上がっており、どのような内容か気になったのでまとめてみました。
個人的に気になったポイント☝️
デンマークにおいて人員配置基準は2019年に制度化。2024年から人員配置基準が義務化
保育の質の全国調査によって38%以上の保育施設において保育の質が不十分であると示された。その後、チャイルドケアサービス(保育園・幼稚園等)への監督要件の強化する規則が導入
デンマークにおいても※教育者の採用難問題があり、人材確保は急務
※北欧にはペタゴー(Pætagog)という対人支援の専門職があります。国家資格であり、保育・幼稚園、障がい者施設や高齢者施設、病院、学童保育等で活躍している職業です。こちらはデンマークの教育における重要な要素にあたるので、別途整理いたします。
人員配置基準がそもそもなかった?😱
一番驚いたのは、今までそもそも人員配置基準が整備されていなかった点。
日本においては国が定める認可保育園の配置基準は以下。
・3歳以上は子供20人に対し保育士1人以上
・4歳以上は子供30人に対して保育士1人以上
デンマークの人員配置基準は幼稚園(3-6歳児)においては子供6人に対して大人1人以上の義務化が2024年から開始されますが、単純に人員配置の人数を比べてしまうと、圧倒的な差分があります。
人員配置基準が近年まで整備されてこなかった背景は?
人員配置基準が2019年頃まで整備されてこなかった理由は?とデンマーク自治体担当のデンマーク人同僚に聞いてみたところ、以下整理でした。
文化的に子供への教育(ソフト面)にフォーカスしており、ハード面はコントロールしてこなかった背景がある
0-6歳児はチャイルドケアサービスを受けられることを保証する法律が2007年に整備された。ほぼ全ての施設が自治体にて管理されており、各自治体において全ての子供を受け入れる必要があるため、キャパシティーの問題が徐々に浮き彫りになってきた
2の状況の影響もあり、教育者等の数が徐々に足りなくなってきた
2. のポイントは個人的に非常に納得感がありました。なぜならAssembleの保育ICTシステム(Nembørn)は2008年頃にデンマークのとある自治体から具体的に要望を受けて、ソフトウェア開発に至ったからです。キャパシティーの問題をシステムと自動化の機能を活用し、待機児童問題を解消した経緯があります。社会的に徐々に浮き彫りになった課題に対してITを活用し対応してきた、と想像できます。
3. の教育者の数については、保育に限った数字ではありませんが、以下図の通り、今後202x年以降下降教育者の数(青色)は下降をたどるシナリオが見えています。保育エリアに関しても同様の流れになると想定すると2019年に、人員配置基準を制度化した点は理解ができます。
マティアス児童・教育大臣 スピーチ記事内容一部抜粋
2019年からデンマーク議会は人員配置の最低基準化に関して合意し、保育分野における歴史的な大幅な後押しを確保。この3年間で徐々に基準を改善し、2024年度からは保育園では3人に対して大人1人以上、幼稚園では6人に対して大人1人以上が義務付けられることになった。
しかし、従業員の増加は解決策の一部にすぎず、プロフェッショナリズム、リーダーシップ、コミットメントに広く焦点を当てる時期が来ている。
こども教育省は0歳から2歳の地域における保育の質に関する全国調査を発表し、この調査において5つの施設のうち、ほぼ2つ(38%)において質が不十分であると示された。子供の生後1年は発達によって非常に重要であるため、無視できない結果である。
品質に対する責任は決して個々の従業員だけが負うものではなく、国、地方自治体・経営者全員が保育所内および保育士との時間、枠組み、リソースを生み出す組織を確保するという大きな責任を負っている。
2022年1月1日には、自治体によるチャイルドケアサービスの監督要件を強化する規則が導入され、来年にはデイケアサービスにおける最低人員配置が法的に義務づけられ、2030年まで15億デンマーク・クローネ(約318億円)を、未熟練職員の資格向上のために割り当てている。これらはすべて、チャイルドケアサービスの専門性を強化する取り組みである。
いくつかの自治体では、募集されている職種に教育職員を採用することが困難であるという状況がある。同時に、教育プログラムへの関心も低下している。このままでは、採用難は悪化するばかりで、それは解決されなければならない。プログラムへの応募を増やすこと、より多くのプログラムをパートタイムからフルタイムに移行する人を増やすこと、そしてより教育学的訓練を受けた人材をよく多く確保すること。教育者の確保については、やはり保育の質が最も重要だ。
教育者の質とスキルは重要であり、教育者を採用し、トレーニングを提供することが不可欠。この分野における協力と取り組みが、子供たちの未来に明るい影響を与える。
まとめ
日本と同様にデンマークも同じような社会課題を抱えて、それに対して取り組んでいる姿勢をこちらのスピーチから感じ取れました。また、大臣が採用難の状況ではあるが、保育の質が最も重要、と言及している点は印象的です。保育の質、についてはトピックとして継続して参ります。
今回は、国及び自治体の視点からデンマークの保育事情についてまとめてみましたが、今後も様々な角度から継続して記していきたいと思います。
以下Youtubeもやっているので、ぜひご覧ください!
日本人夫婦の北欧移住のリアル | Marie & Takashi
【2023年10月13日記載】