矢間たかし

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ラストリゾート

エマが宿泊していたリゾートホテルでマッサージに来た男は、再生医療技術を用いて美形の男に変身した父・ロジャーだった……。 ホテル内部及び地下で進められているラストリゾート、ラストプリズン、そしてケビンという謎の男の正体とは? iPS技術、脳科学、ナノテク、ITインフラ等が十分に発達した社会でのSFミステリーホラー! 第Ⅰ部 ラストリゾート 【健吾】 「しっかし、うちの専務もよくやるよなぁ」 「ああ……根っからの商売上手っつーか」 「あれって商売上手って言うのか?」 「うーん

    • 恍惚に掻き消されたもの

      大学受験を控えた高校3年の裕介は、学校をサボり近くの百貨店へと入る。そこで最近になり学校を欠席しがちな同級生の柳田かおりを見かける。担任である服部と柳田の売春行為に行く途中だった。裕介は服部に罰を与えることを決意する。部活や受験を描いた短編ミステリー小説。 1  合格しても卒業できんからな。  あの言葉が僕をここまで追い込んだんだ。  いつものように頭を痛めつけるもの、ソレのせいだろう。どこで昼食を食べようかなぁとぼんやり考えながら、駅のまわりをブラブラしていた。ありき

      • 裏切りの選択

        絵を買いたいというメールが届き、喜んで対応した画家・敬之であったが、それは偽造された国際為替を用いた詐欺メール。さらに同棲している敬之の彼女・裕子にも犯人と思われる人物の魔の手が……。スパイ、アメリカ国際為替を題材にした短編恋愛小説。 1 - 裕子 -  薄黒い視界が広がりを見せたのは、無意識から目覚めた深夜のことである。  しっかりとロープで縛られた手と足。解きほぐそうとすり込むようにして足をバタつかせても、釣り針に結ばれた糸のように規則的に拘束しているロープは、ま

        • 桜に薬指

          建設会社にアルバイトとして働いている画家敬之。バイト先の会社の責任者である有田課長は、協力会社の内藤とアルバイトの田中のチームワークを心配し、近くの繁華街に飲みに行く。そこで不気味な男と出会い、その男は内藤に「戻ってきたのか」と聞く。独身寮、桜町を舞台にした人情小説。               1  桜の花びらくらいの小さいリボンのついた純白パンティが、僅かに膨らんだ恥丘を覆い隠すように目の前にたたずんでいた。敬之は屈んだ体勢のまま、腰骨に引っかかっている紐の部分を指先

        ラストリゾート

          パソコン

           僕の家は決して貧乏ではなかったが、かといって裕福という訳でもない、ごく普通の「とうちゃんかあちゃん」家庭だった。  世の中はバブル経済だったと思う。テレビやラジオから流れる音楽も、太いメロディラインを持った商業的に売れそうなポップで明るい感じの歌が流行っていた。  当時、特に男子の間でいつも話題にあがっていたことと言うと、やはりファミリーコンピューター通称ファミコンだった。家庭用ゲーム機なのに当時のパソコン並みのCPUを積んでいて、さらに本体価格が1万円台。おまけにそれまで

          ギャンブル放浪記

          ~ 登場するパチスロ機 ~ スーパープラネット(山佐3-1号機) コンチネンタル(瑞穂3-1号機) サファリラリー(エーアイ2-1号機) アラジン(サミー工業2-2号機) 時は昭和。ケンは大学の同級生ジュンとともにパチスロに明け暮れる毎日。 パチンコ屋で出会った麻雀好きの先生と呼ばれる女性、その旦那の茂さん、ケンが好意を寄せているアイ、そして売春宿で働く里奈。 賭け麻雀と、裏モノ全盛時代のパチスロ、そしてケンとさまざまな女たちを描いたギャンブル恋愛小説。 第1章 アイ(

          ギャンブル放浪記

          娘と子猫

          1  華奢な肩の上に可愛げな子猫を乗せた女の子が、健一の前方で何やらじゃれあっている。その辺から見つけてきたのだろうか、それとも飼っている猫だろうか、女の子の首の後ろから背中にかけて、尻尾をべたっとつけて愛嬌を振りまくその姿は、通りすがりの大人たちを癒してくれていた。 「かわいいね」  思わずそう話しかけた。女の子はにこっとしたまま何も言わず、肩の上の子猫に何やら呟いている。これくらいの年の女の子は自分の持っている宝物を誰かに見てもらいたいという気持ちが強いのだろうか、近く

          家族の肖像

          1  コバルトブルーヒューの残りが僅かになっていることに気づいたのは、描き始めてから一時間ぐらいしたときだ。  二宮敬之、画家、独身。ひと月に描いた絵が1枚売れるか売れないかという、極めて不安定な収入を糧にして毎日もくもくと絵を描き続けている。とはいえ付き合って何年になるだろうか、すでに忘れてしまうぐらい長いつきあいの彼女のアパートに居候しているため、とりたて画家といった肩書きを名乗れるものかどうか……。 「げっまいったな、コバルトブルーヒューがなきゃ、この空の感じがで

          家族の肖像