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【超短編小説】勇者よ、その井戸水を飲め!

 勇者一行は魔王討伐の旅の途中、ある村に立ち寄った。村には回復の井戸と呼ばれる井戸がある。勇者は興味を持って村人に聞く。

「回復の井戸って呼ばれてるけど、ここの水、何か効能があるの?」

「さあ、知らないね。飲んでも何も起こらないさ。みんな普段から飲まないしね。飲んでみな」


 勇者は井戸水を飲む。

「普通の水だな」

 村の長老が遠くから見ていた。

「勇者なら、いつかこの水が役立つかもな。でも、何事もなければそれが一番だ」

 勇者は怪しんだ。

この村の住民は、井戸水の効能を隠しているな。


 翌日、魔族の集団が村を襲撃してきた!井戸に向かって行く。

 勇者一行は、村の住民を守るために戦うも、苦戦を強いられる。僧侶、魔法使いは負傷し、体が麻痺して動かない。巻き添えを食らった村人も体が麻痺している。

 魔族の放つ攻撃魔法は麻痺を引き起こす。勇者は、ケガを追いつつも徐々に敵を倒していく。

 長老が叫んだ。

「あんた、井戸水を飲んだな!」

勇者も訳が分からないながら答える。

「飲んだけど、何なんだ!」


 勇者は一人で善戦し、魔族を退けていく。魔族の攻撃魔法を僅かに浴びつつも大きなダメージを受けていない。魔族の反応できない速さで聖剣の斬撃が繰り出される。ついに、最後の一体を倒した。

 長老が、僧侶と魔法使いに水を飲ませている。勇者が駆け寄ると、微笑みかけてきた。

 「麻痺を回復する井戸水だからね。先に飲んだら耐性がつく。魔族にとってはやっかいな井戸だ!」

 勇者は村の英雄として語り継がれた。

※表紙画像はDALL-Eで生成されました。

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