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DXに最後の垢。そのレベル感を考える | マーケティングとAIと。 (3)

株式会社Laboro.AIのド文系マーケター、和田です。

先日参加した、あるマーケティング系の学会でも「来年には『DX』という言葉は消滅しているはずだ」とブッた斬られていましたが、完全にバズワード化してしまった言葉「DX」。

IGS株式会社が今年8月に実施した調査でも、大企業人材の44%がDX業務にネガティブ・無関心であると回答し、「DX」という言葉が登場して数年で結構な嫌われ様です。(*但し、本調査はサンプル数n=298のため、若干信頼性に心配もあります。)

DXの定義などについては、以前寄稿させていただいたこちらの日経クロストレンドの記事に学術的な定義もおさらいしながら整理させていただきましたが、今回は、その旬を過ぎ、嫌われてしまったDXという概念に、レベル感の要素を加えることを考えてみたいと思います。

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まず、上の記事でも書かせていただき、DXのレベル感としてよく言われるのが、クリスチャン・マット教授らによる、
●「デジタイゼーション」
 ↓
●「デジタリゼーション(デジタライゼーション)」
 ↓
●「DX(デジタルトランスフォーメーション)」

というものです。

これは、DXのレベル感というよりも、DXに至るまでの段階を示したもので、
●「デジタイゼーション」=単にデジタル技術やツールを活用するだけ

●「デジタリゼーション」=デジタル化をきっかけにビジネスが変革する

●「DX」=ビジネスだけでなく、顧客や社会にも影響を及ぼす

のように、デジタル技術活用によるダイナミズムが説かれたものと言えます。

この考え方は、AI企業 パルアロトロンインサイトCEO 石角友愛さんの著書『いまこそ知りたいDX戦略』でも触れられていた、有名なフレームワークです。(※それぞれの定義は様々あるようです)

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一方で、最終系として置かれている「DX」が山の頂上で、そこで進化が完結するというのもリアリティがない気がします。今回はDXのさらに先、DXそのもののレベル感について考えてみたいと思います。

おそらく今後修正が必要になるだろうという前提で「Ver.1.0」と付させていただきましたが、DXを3つのレベル、
●「Low-DX」
●「High-DX」
●「Super-DX」
に分けて違いを並べてみたのがこちらの下の表です。

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ここでそれぞれの違いを考えるにあたって重視したのが、DXの中心技術として位置づけら得るAI(人工知能)の活用方法と、取得・活用されるデータの違いです。なお、具体的なソリューション事例としては、マーケティング領域のものを記載しました。

まず「Low-DX」は、文字通りレベル感の低いDX(それでもすごい)であり、これまで人間がやっていたドメインのデジタル化の段階です。その目的はこれまで人間がやっていた業務・作業領域をデジタル技術によって置き換えることにあり、具体的なソリューションとしては、OCR(光学式文字認識)やRPA(Robotics Process Automation)、チャットボットシステムなどが挙げられます。定型的な業務の効率を格段に引き上げることによって、直接的には企業内業務を変革し、間接的にDXの主要件である社会影響を及ぼそうとするものです。

次の「High-DX」は、これまで人間では実現ができなかったドメインのデジタル化です。例えばインターネット上のビッグデータを大量収集することよる統計予測(株価予測、アクセス予測、需要予測)などの展開が代表的で、データの存在は知っているけども人間にはとても捌き切れない大量データをデジタル技術を用いて解析処理することによって、新たな知的価値を生みだそうというレベルです。そのほか最近の例では、大量の画像データの学習を元にした商品パッケージ生成や、1,750億にも及ぶパラメータを保有した自然言語系アルゴリズムGPT-3による文章の自動生成が挙げられます。

そして、最後の「Super-DX」は、これまで気づきもしなかったドメインを生み出すためのデジタル化です。「Low-DX」「High-DX」が、データそのものは既知でありながらも、処理や解析量の問題から実現が困難だったタスクを実現することっだことに対し、「Super-DX」は、これまで定性的にしか表現できなかった未知のデータを取得し、定量的に解析、システム構築を目指すフェーズです。例えば、人感センサーや赤外線センサー等の各種センサーデータに基づく人間の感情予測、UI上のインタラクション行動データ+強化学習技術によるパーソナライズドレコメンデーションが想定されます。

また、DXのレベル感を考えるにあたっては、DX化によるメリットの直接的な還元先(最右欄)が、企業か顧客(一般消費者)かの違いも重要であり、Super-DXになるほど、消費者や社会に対する直接的なインパクトが大きくなるものと考えます。

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今回は、ちょっと論拠の薄い雑な展開になってしまいましたが、おそらく来年には消えてしまう(?)キーワード「DX」に最後の垢をつけるべく、そのレベル感について考えを述べさせていただきました。「マーケティングDX」という言葉の使い方が正しいかには少し疑問が残るところがありますが、いずれにしてもマーケティング領域において、AI、IoT、量子コンピュータなどの先端技術を活用し、顧客にそのデジタル化メリットを還元していく動きが今後活性化してくものと思われます。

正解がなく、移ろいやすい消費者心理を扱うマーケティング領域は、過去データの学習をベースとするAI技術との相性はあまり良いとは言えません。そのため、現段階では、業務効率化やコンテンツ生成など、過去データを正解とする前提に立ったAI技術の活用が主流です。正解がない消費者分野に、デジタル技術によって購買パターンの正解を作ることができるかどうか、今後のマーケティング領域における技術革新が待ち望まれます。

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【 筆者Profile 】
和田崇(wada@laboro.ai)
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【 現在 】
AI開発スタートアップ企業 株式会社Laboro.AI マーケティングディレクター。経営学修士(マーケティング論・消費者行動論)。
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【 経歴 】
立教大学大学院 経済学研究科を終了後、KDDI株式会社にてコンシューマ向けのクロスメディアによるプロモーション施策の立案・企画運営に携わる。その後、全国漁業協同組合連合会に入会、水産庁が推進する地域支援プロジェクトの推進メンバーとして従事。2019年にLaboro.AIに参画し、マーケティング/ブランディング責任者として従事。一般社団法人 日本ディープラーニング協会 G検定資格保有。日本マーケティング学会、日本産業経済学会、人工知能学会、情報処理学会、各会員。
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【 メディア執筆 】
●「AIは幻想か - 導入現場のリアル」全4回(ニュースイッチ)
●「文系による文系のための直感的AI怪説」全2回(日経クロストレンド)
●「AIで斬る!打倒!マーケティングDX」 全6回(日経クロストレンド)
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