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回顧録07〜09年《懐かチラ・シリーズ♪(オペラ編)》

前回の04〜06年に引き続き、チラシで振り返る《懐かチラ・シリーズ♪(オペラ編)》今回は2007〜2009年です♪この時期、出演したオペラ作品は以下になります。今から14年前のこの年、32歳の時に新国立劇場小劇場から大劇場へ出演し始めた頃です。


2007年
《フラ・ディアボロ》ロレンツォ役(新国立劇場小劇場)
《西部の娘》郵便屋・ニック役カヴァー(新国立劇場)本役;大野光彦
《ファルスタッフ》バルドルフォ役(新国立劇場)
《スペードの女王》儀典長・チャプリツキー役(サイトウキネン松本)
《イオランタ》アリメリク役(読売日本交響楽団定期)
《カルメン》レメンダードカヴァー役(新国立劇場)本役;倉石真

2008年
《薔薇の騎士》動物商・料理屋の主人役(びわ湖・神奈川県民ホール)
《軍人たち》ピルツェル役カヴァー(新国立劇場)本役;小山陽二郎
《椿姫》ガストン役カヴァー(新国立劇場)本役;樋口達哉
《椿姫》ガストン役(新国立劇場オペラ鑑賞教室)
《エフゲニー・オネーギン》レンスキー役((東京二期会)
《エディプス王》羊飼い役(NHK交響楽団)

2009年
《こうもり》アルフレード役(新国立劇場)
《トゥーランドット》パン役(びわ湖・神奈川県民ホール)
《ムツェンスク郡のマクベス夫人》御者役・イズマイロフ家の使用人(新国立劇場)
《ポポイ》佐伯役(静岡音楽館AOI)
《オテロ》カッシオ役カヴァー(新国立劇場)本役;ブラゴイ・ナコスキ
《魔笛》僧侶役・モノスタトス役カヴァー(新国立劇場)


〜2007年〜
新国立劇場小劇場では《セルセ》に続き《フラ・ディアボロ》という浅草オペラにもなったオベールのオペラを日本語上演。怪盗を捕まえるロレンツォという役で、設定が日本だったのでお巡りさんの格好で歌いました♪演出は田尾下哲さん。この時の演出は本当に見事で、同時進行で旅館の部屋で起きるドタバタ劇を芸達者な諸先輩方と共に、まるでドリフのようなコミカルな芝居仕立てに仕上げ、今でも鮮明に記憶に刻まれています。“シュワッチ!”しながらハイDを出して階段から飛び降りたりw本当に面白い舞台でした。

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《西部の娘》
ニック役カヴァーと郵便配達役で初の大劇場の舞台へ。ダンボールが舞台一杯に積まれた舞台、アンドレアス・ホモキによる演出。この時、自分は出番は少ないながらインパクトを残そうと、初回の稽古でオーバーアクション気味に演じたら、ホモキ氏にかなりキツく指で胸をズンズン突かれながら怒られたw当時は悔しくてたまらず、見返してやると少ない出番ながらいろいろ考えて認められようと必死だった。今思い返せば若き日の良き想い出。

《ファルスタッフ》
バルドルフォ役、天才演出家ジョナサン・ミラーの新国のこのプロダクション、プレミエの次の再演でした。もうこの舞台は幸せで幸せで仕方がありませんでした。フェルメールの絵画作品の中に飛び込んだような舞台美術の美しさ、演出の
素晴らしさ、オペラ歌手になって良かったと稽古から本番までワクワクしっぱなしの舞台でした。フォード役には世界的バリトン歌手、ブレンデル。舞台袖でも舞台上でもオンオフが無いような自然体の姿に、感銘を受けた記憶があります。
棍棒を使って無邪気に袖で遊んでいるかと思うと、舞台で凄い存在感と声。そして自分はこの時、GP後に帰宅中、疲れて電車の中で寝過ごして慌てて飛び降りた際にそのまま転げて足首を折ってしまい、すぐに病院へ行くも、本番初日に顔
面蒼白で松葉杖で劇場入り。スタッフや当時の芸術監督、ノヴォラツスキー氏も一斉に集まって物々しい雰囲気の中、演出家のジョナサン・ミラー氏が後からやって来て、大爆笑。そして一言、“君はなんて最高のキャラクターを手に入れてき
てくれたんだ!
”と言った途端、その場の雰囲気が一気にほぐれ、百戦錬磨の歌手たちに動きのフォローなどして貰いつつ、全ての公演、無事に終えることが出来ました。

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《スペードの女王》
毎夏東京オペラシンガーズの一員として参加していた小澤征爾マエストロのサイトウキネン・フェスティバル松本にて、メトロポリタン歌劇場ヴォーカル・コーチが前年に行ったキャスティングオーディションによって選ばれ、コーラスを
歌わずに初めてフェスティバルに本キャストとしてデビュー。ロシア語オペラで主役ゲルマンは凄まじい声のウラディミール・ガルージン。参加していたシンガーズメンバーの多くが声に魅了され、期間中に公開講座を開いて貰うことに。私も聴講させて貰い、その時の懐かしいお腹を触ってる写真が出てきたので載せておきます。メトロポリタン歌劇場でプレミエされた同プロダクションは今でも当時の衣装や舞台装置のまま上演されており、SNSのおかげでたまに写真や動画を目にして嬉しくなります。自分はチャプリツキーと儀典長役の二役で出演しました。この時、IL DEVUリーダー山下さんはコーラスメンバーから劇的なジャンプインでソリストに上がったり、いろいろオペラはドラマがあります。。

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《イオランタ》
演奏会形式のオペラでしたが、ロシア物続きですっかりロシア音楽に魅了され、指揮者が名匠ロジェ・ストヴェンスキーでオール日本人キャストでの舞台でした。主役テノール、ボデモン役には今は亡き同郷の経種康彦さん。当時の素晴らしい歌唱、今でも記憶に刻まれています。松江にあるお墓にもお参りに行きました。

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《カルメン》
門下の仲良しの先輩だった倉石真さんのカヴァーでのレメンダード役。鵜山仁さんの新演出で、稽古期間も長く、舞台中心が回り盆の舞台でした。この後もライフワークか何かのご縁か分かりませんが、一番歌い演じる機会に恵まれることに
なったのもこのレメンダード役。

〜2008年〜
《薔薇の騎士》
びわ湖ホールのプロダクションに初めて関わった年。しかも演出が、怒られた経験のあるホモキ氏でしたw稽古初日に私を見かけた途端、ニマッとして“ポスティリオーネ〜!”(郵便配達夫)と言われたっけ。白を基調にした無機質な舞台
で、歌手の演技や動きのみで舞台を進行させ見せるような演出で、登場シーン以外でもキャストはほぼずっと舞台にいるような舞台。このタイプは身体に馴染ませるまで稽古がとにかく大変。でもハマるとマンパワーで凄いエネルギーになるんですよね。

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《軍人たち》
こちらはツィンマーマンの現代オペラ。ピルツェル大尉役のカヴァー歌手でした。凄まじく難解な曲を圧倒的な声と表現で同オペラを世界中で歌っているスペシャリストたちが一同に集結。とにかく凄まじかった。高音がどうのこうの言えるレベルでなく、喉と身体、精神の耐久レースかと思うほどの演奏の連続で演出も素晴らしく、客席で通してみた際には、内容と音楽と歌手の力量、そして何よりも演出が凄くて、しばらく客席から立ち上がれませんでした。

《椿姫》
ガストン役のカヴァーとして本役、樋口達哉さんの後ろで控えました。樋口さんは当時、何度も生でガラコンなどで聴く機会があり、溢れるパッションと声量に度肝を抜かれた記憶があり、カヴァーが出来ることがとても嬉しかった。樋口さ
んはイタリア帰りで魅せる演技がとにかく上手で、自分には無いプレゼンテーション能力で憧れました。この本公演カヴァーの後、鑑賞教室で同役を樋口さんとダブルでさせて貰い、とても勉強になりました。

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《エフゲニー・オネーギン》
東京二期会会員となってから、初めて主役テノールと呼べる役をオーディションで掴んだ役。詩人レンスキー役が歌うアリアが学生時代から大好きで、いつかこのアリアを歌う役を一本歌いたいという願いが叶った瞬間でした。演出は日本で
も大人気のドイツの鬼才、ペーター・コンビチュニー。賛否両論の舞台を世界中で作り続けている演出家でもあり、噂で聞いて恐々稽古を迎えると、オネーギンの演出は涙が出るほどにピュアで美しい演出でした。当時のオペラ作品に欠かせない壮大なバレエのシーンを一切バレエを使わずに、親友レンスキーを自らの手で殺してしまったオネーギンの葛藤を一人芝居で緊張感途切れさせずに見せ続け、最後は死んでいるレンスキーを抱え上げて一緒に踊ろうとします。未だに
あの時の感動を超える読み替え舞台演出は経験して無いかもしれません。記憶に深く刻まれた素晴らしい舞台でした。

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《エディプス王》
ホールスタッフバイトとして、NHKホールで学生時代からずっと憧れて舞台上の名演を聴き眺めていたNHKホール。そのNHK交響楽団の舞台に自分が上がることが出来た喜びと興奮は今でも鮮明に記憶しています。この公演の為に時間をかけてたくさん歌い込み、外人キャストの中で一人だけ邦人歌手として参加。マエストロ、シャルル・デュトワの指揮で素晴らしいキャストでの名演。主役のポール・グローブスさんにも声を褒めて貰えたり、頑張った甲斐がありとても評判が良かったです。後から後ろで合唱で乗っていたという後輩歌手たちから初めましての挨拶の際に何度もそのことを伝えられ、冥利に尽きる想いがしました。

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〜2009年〜
《こうもり》
新国大劇場一度目の再演でアルフレード役での出演。初演が新国オープニングでもアイーダでラダメスを歌われた水口さんだったこともあり、体型的に似ていたからオファーが来たのかな?と今でも思っています(笑)絵本の中に入ったよう
なポップでかわいい舞台、これ以後も新国を代表する新年のオペラとして、今でも歌い継がれています。この時の外人キャストも素晴らしく、相手役のロザリンデ、ノエミ・ナーデルマンさんは、本当に温かくて舞台でも稽古でもいつも真摯
に駆け出しの若造に付き合いリードして下さり、伸び伸び稽古も本番もさせて頂きました。日本に居ながら新国やSKFなどで、スペシャルクラスの来日歌手たちとこの時期にコンスタントに歌い続けられたことは、今の自分にとって本当に
財産です。まるで海外の一流歌劇場の専属歌手のような環境を日本に居ながら経験し続けていました。

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《トゥーランドット》
びわ湖神奈川県民ホール共催オペラで、粟国淳さんのキレキレの演出でとても楽しい舞台でした。衣装もSF映画のようでカッコよかったし、ピンポンパン役が大活躍の演出でした♪GPでカラフ役の水口さんが、片手を突き上げたまま、
トゥーランドット姫の謎解きに挑戦しに行く為にピンポンパンに誘われて閉まる扉に入らねばならない幕切れで、うっかりそのままフリーズしてしまい、扉が閉まってしまったのは本当に忘れられません(笑)本番はもちろん、大丈夫でした
よ♪

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《ムツェンスク郡のマクベス夫人》
なかなか酷い内容のオペラでしたが、ショスタコーヴィッチの音楽が素晴らしく、自分は二役をやらせて頂きました。この時は、IL DEVUの山下さんも一緒だったし、それこそ同級生の初鹿野くんも一緒で彼はまだ大きくて警察署長役をやってましたが、適役ハマり役でした。この時、舞台が左から右にスクロールするような舞台で、動きながら家具やらを運び新たに設置したりを全て音もタイミングでやらねばならず、その為の稽古を地下の巨大な倉庫のようなところで何度も稽古をしました。結局、歌手ではなく助演さんがやることになりましたが(笑)

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《ポポイ》
静岡にあるコンサートホール、AOIの公演でした。作曲家の間宮芳生さんのオペラで、台本は倉橋由美子さんのホラー小説でした。内容はなかなかエグいのですが、間宮先生の描く音楽、世界観が小説から受け取る印象に見事なエスプリを加
え、とってもオシャレな作品でした。この時は舞踏家としても俳優としても有名な田中民さんが演出。見惚れてしまうほどカッコいい方でしたが、舞台装置に和紙を使い、天然の草木染めで、和風なようで西洋なような色彩感に温もりがあり
、演出も含めて優しく柔らかな舞台で素敵でした♪

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《オテロ》
カッシオ役ブラゴイ・ナコスキさんのカヴァーでしたが、オテロ役がワーグナー歌手としても有名なステファン・グールドさんでした大柄ながら演技力や動きも俊敏で素晴らしく、いろいろお話を聞いたら最初はミュージカル歌手だったそう。この稽古時に、彼だからこそですが、「自分にとってはオテロは楽に歌える。大変なのはトリスタンとイゾルデだ」と言ってました。感覚もスケールが違うなと、驚きました。舞台上に本物の水を張り、ヴェニスのような美しい空間を作り、とても見応え聞き応えある舞台演出でした。水を抜いたりいれたりするのがかなり大変だと舞台スタッフさんたちが嘆いていました(笑)

《魔笛》
僧侶役をやらせて頂き、タミーノとパパゲーノを試練の場に導く役で、新国でずっと続いていたレパートリーの演出、舞台機構をフルに使った舞台で上に下に動きまくる舞台でした。ドイツ留学時代にお世話になったバリトンの萩原潤さんとのコンビでとても楽しかった。この時はモノスタトスのカヴァーもしてました。魔笛はタミーノも勤務先大学のオペラで畑中良輔先生の監督で一本歌ったし、武士も二期会ゴールデンコンサートで歌ったので、登場するテノール役は全て実演し歌いました♪

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記憶のあるうちにチラシと共にこうして自身の出演した舞台を思い返す作業、今まで余りせずにいましたが、音楽は思い出した途端、直ちに目の前に現れます。とても大事な感覚や感情が沸いて来るんですよね。なかなか時間が掛かりそうですが、次回は2010〜2012年を振り返りたいと思います🎶

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