想い出となった友人へ
男友達に手紙なんて一度も書いたこと無いな。でも今の関係性なら一方的になるけど書けそうなので、恥ずかしがらずに書いてみようと思う。
この機会に、楽しかった高校生活を振り返ってみたくなったから。
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高校3年。夏の総体が終わって、僕はバスケ部をお前はラグビー部を引退してから、なんでそうなったか思い出せないけど、急に仲良くなったなと思う。
ほぼ男子校の工業高校、80人中女子は1人でその1人もほぼ男子みたいな性格していたよな(笑)
でもそいつに何年か前に出会ったけど、ちゃんと結婚して子どもを育てている立派なお母さんになっているよ。
他のメンツも何にも変わらない、担任だったO先生も同じく。
高校を卒業してから10年以上経っても、僕たちを立派な大人と認めつつも、どこか先生と生徒という関係性は残したまま付き合ってくれる素敵な先生のまま。
お前も今頃一緒にいたら変わってなかったんじゃないかと思う。
高校3年、部活を引退してから、バイトもお前の紹介で同じところに入ったし、よく家にも泊まりに行ったし、お前が歌うヒップホップのイベントにも呼ばれて行ったし、学校から学校以外まで、付き合ってんのかよってぐらい一緒にいたな。
でもめっちゃくちゃ楽しかった。
部活を引退してから卒業までの間でたくさんの想い出がある。
お前に声をかけられて文化祭の実行委員やることになって、放課後家庭科室にこもって、男子高校生二人が文化祭の出店で出すための「焼きそば」を試行錯誤したことも。
考えた末、一番うまかったのが「豚キム塩焼きそば」で当日めちゃくちゃ売った。たしか250円ぐらいだった気が…。
あの時は何のレシピも見ずに、二人で考えて思いつきでたどりついたメニューだったけど、今思えば単なる塩焼きそばにキムチを合わせただけのなんの工夫もない焼きそばだった。
だけど、学校の男どもには好評で「旨い旨い」ってめっちゃ食ってくれてたし嬉しかったな。
あの時に初めて自分達で商品を作って売るという経験をした。というか、スーパーでパックの豚肉を買ったのも、料理することも初めてだった。
そんな僕が今ではほぼ毎朝、夫婦二人分のお弁当を作ってる。
体育祭でも二人で応援団長やった時、真っ白だったTシャツにクラス全員の寄せ書きを書いたものを着た。
3年最後の体育際、想い出に残るようにと作ったTシャツ。二人ともアホで、当日の汗や匂い、Tシャツについた土もそのままにしておきたいとか言って、洗わずに自分の部屋に飾ってた。
ほんとに何年かそのままにしてた。
めちゃくちゃ黄ばんできて、なんかの時に捨てたけど。捨てるとあっけないよな。
卒業アルバムの写真選定もやった。
選定者の特権で、自分達の写真は自分達のお気に入りの写真を選べたから、部活引退後で二人とも身体がバキバキだった時に撮った写真を選んだ。
海パン姿、二人で上腕二頭筋に思いっきり力を込めて、この筋肉を見ろ!みたいなよく分からん顔をして、いかにも「男子」な写真を選んだ。
今度実家に帰ったらアルバムの写真を見てみようと思う。
書き出したらまだまだ山のように出てくる、全然忘れていない。卒業して二人して3日以内に就職した仕事場を退職して、お前は役者・モデルを目指して、僕はボクシングを始めたこと。
バイト先で仲良くなった女の子と3人で遊ぶことが増え、僕がその子に告白したらそいつが好きなのはお前だったという「マンガかよ」という展開も。
それから数年、それぞれやることができてあまり会わなくなり、久しぶりに連絡があったかと思えばネットワークビジネスの誘いだったので、その頃からなんとなく疎遠になった。
あの頃の時間はまさに「青春」だった思う。ザ・友達、こういうのを「親友」というんだろうというぐらいベタで大切な友達だった。
男同士っていいよなと思う。今は自分の仕事の関係上、女性と関わる機会が多くなって男同士で切磋琢磨するような環境から遠のいた。
社会人になって、もしも今もお前と一緒にいたら、二人で何か挑戦していただろうか。
ただ、何かしていたとしても、二人とも夢見がちな性格だから成功していたとは思えないよな(笑)
こうしてお前に向けて手紙を書くことが来るなんて思わなかったけど、なんていうか、手紙というか、一人で勝手に想い出を思い出して書いているだけだけど。
僕がネットワークビジネスの誘いを断らずに受けていたら、関係は続いていたかな。
もし続いていたら、死にたくなるぐらい苦しくなった時に相談してくれただろうか。
僕はお前の最後を知らない。
知ったのは何年か後に、年に1度の同窓会で友達から自ら命を絶ったと聞いただけ。
そいつも間接的にしか聞いてないって言ってたから、最後までお前と一緒にいた人の話は未だに聞けていない。
結果だけ聞いて「なんで相談してくれなかった」とは思わなかった。
そんなのは結果が示している通り、相談されるポジションにいなかったからだとわかりきっているから。
でも、もし聞けるなら聞きたい。会わなくなって、どんな暮らしをしていて、何がお前をそうさせたのか。
あれだけ仲良かったと思っていたのに、自分は間接的に知っている友達から聞いて知ったのも実はけっこうショックだった。
こうして文章にしてみて改めて思うけど、高校の部活引退後~社会人数年目までの想い出は本当にかけがえのないもの。
僕にも青春を語れる友達がいたことは本当に嬉しかった。
でもその想い出話を懐かしむことは、今もこれからもできないよ。だって共感して語る相手がいないから。
世界中探しても、この想い出を共有できる人はこの世にはいない。
今あの時みたいに一緒に遊んだら絶対楽しいだろうな。お互い35歳のオッさん?になってもやることは変わらんだろうと思う。
そんな風に僕は思うけどお前はどうだろう。
届け先の人間がいない手紙はただの自己満足の手紙にしかならないけど、誰かに手紙を書いてと言われると、書きたい人は家族以外には一人だけだったからお前に書いたよ。
思い出すとすごく会いたくなるな。