022 1986オメガトライブ「君は1000%」(1986年)
作詞:有川正沙子 作曲:和泉常寛 編曲:新川博
せっかくなので、トライアングル産の名曲をもう1つ。杉山清貴の脱退に伴い、バンドを再編、新たに日系ブラジル人のカルロス・トシキをヴォーカルに据えた、新生オメガトライブのデビュー曲です。これが凄まじい出来で。今改めて聴き直してみると、その完璧さに驚愕します。
「君は1000%」というインパクトのあるタイトルは、ポルトガル語で"100"を"セン"と発音することから、「君は1000%」=「君は100%」、つまり、パーフェクトガールという意味ということでしょう。デビューにあたって、プロデューサーの藤田浩一がカルロスに、日本語とポルトガル語で似た言葉はないか?と聞いたことから、このタイトルが生まれました。
そのタイトルを元に書かれた有川正沙子の歌詞も、これまた寸分の隙もなく、一瞬で夏の風景を呼び起こします。作曲を担当した和泉常寛は、前任の林哲司のアーバン路線をさらに推し進め、林の楽曲に残るバンド感を排除。デジタル時代のスマートなAORサウンドを作りだしました。新川博の編曲も、イントロのコード一発で夏の海や空を想起させます。このプロダクションの一致ぶりは、空気感まで共有しているかのようで、分業制とは思えない濃密さです。
カルロス・トシキのヴォーカルは、当時はその歌い方を少しバカにするようなニュアンスでマネする人が後を絶たなかったのですが、鼻にかかったような歌い方は、この曲のインパクトの1つとして強烈な印象を残します。本当のカルロスは、もっとガッツのある歌い方をする人だと思うのですが、熱さを適度に抑えているのは、杉山清貴の時と同様、藤田のプロデュースがかなり色濃く反映されていると思われます。
そうやって出来上がったこの曲、どこを切っても藤田色全開。ジャケットに海や夏のイメージの風景写真を使うというのも、藤田による杉山清貴時代からのアイデアで、その路線はここでも継続。楽曲も含め、突き抜けたバブリーなリゾート感が、今となっては眩しすぎるのです。
この曲が売れたのは、ドラマ「新・熱中時代宣言」の主題歌となったことも大きな要因でしょう。うろ覚えですが、その放映時にはドラマの内容とは関係ないカルロスの映像が挿入されていた記憶があります。こんなこと、当時としては有り得なかったはずで、おそらくこれも藤田のゴリ押しによるものだったのではないかと想像します。
藤田浩一という人は、いろんな噂があり、それは決していいものだけではなかったのですが、作品を作りヒットさせることへの熱意は、人一倍強かったのだと思います。
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