35枚目 ばちかぶり「白人黒人黄色人種」(1987年)/フェラ・クティに辿り着けてもジェイムズ・ブラウンには辿り着けない歪なファンク
ボ・ガンボスのデビュー戦はJAGATARA、ばちかぶりとの対バン。ということで、ばちかぶりです。
ばちかぶりはメンバーチェンジの多いバンドで、実質的にはヴォーカルの田口トモロヲのワンマンバンドだったと言っていいでしょう。最近では俳優業や「プロジェクトX」などのナレーション業で有名な田口ですが、彼もまたハードコア・パンクからそのキャリアをスタートさせたミュージシャンでした。当然のように、ステージ上では過激なパフォーマンスをしていた(炊飯器の炊きたてのご飯にウ○コしたとか)のも今は昔。有頂天のケラが主宰するナゴム・レコードからデビューしたときは歪なパンク・バンドでしたが、バンドのメンバーが変わるごとにその音楽性も変化していき、ついにはファンクに行き着きます。「白人黒人黄色人種」は、そんな時期の作品です。
とはいっても、アメリカのグルーヴ・ミュージックとしてのファンクではなく、アフリカのポリリズム、フリージャズに元来彼らの持ち味であるアヴァンギャルドなパンクを振りかけ、ダブとまではいかないまでも、ジャマイカ風の荒々しくアタックの強い音響で処理したもの(これは偶然かも)。この頃の言葉で言えば、第三世界の音楽をミックスした、かなり歪なサウンドになっています。これはもうリップ・リグ&パニックやP.I.L.からの影響と言っていいでしょう。なんといっても、1曲目の「第七倉庫」では、ジョン・ライドンの名前を連呼しているくらいですから。さらに、ポップ・グループあたりまで遡っても良さそうです。フェラ・クティに辿り着けても、ジェイムズ・ブラウンには辿り着けない。それがこの時期のばちかぶりです。これは、JAGATARA、あぶらだこなど、ハードコア・パンクをルーツにもつバンドに共通の傾向と言えそうです。
そして、JAGATARAとばちかぶりはよりファンク度を高めていくわけですが、ファンクのグルーヴを追及するというよりも、あくまでもロックの感覚の中でダンスを追求していくための方法論がファンクだったという感じでしょうか。音楽的にはどんどん高度になっていったため、バンドの演奏技術も高度になり、このアルバムではすでに技術集団といっていいほどの演奏を聴かせています。ゲストには筋肉少女帯の三柴江戸蔵というバカテクのプレイヤーが参加する一方、アマリリスのアリス・セイラーのようなパフォーマンスの人もいて、その危うさというか、アクシデント的な不安定な要素をしっかりと残しているところが、彼らの面白さでもあったのです。
【収録曲】
A1. 第七倉庫
A2. 毒々々
A3. 暗黒日和
B1. 白人黒人黄色人種
B2. 刹那奇天烈
B3. 暖波
B4. 亜民