静岡までお詫び行脚・・・
先週、現地でご縁があり、田辺信宏・静岡市長にご挨拶の機会をいただきました。公務ではなく私人としてではありますが、なんたる光栄!しかし・・・「敵は家康」という、現地の神君を敵よばわりする不敬な新人作家に対し怒りの、そして正義の天誅が下るのでは、とかなんとか事前に噂が。ガクブルブル・・・((( ;゚Д゚)))
そんな、怯える私が静岡に到着後、最初にやったことは・・・まずは駅前にすっくとお立ちになられる凛々しい神君(竹千代像)の前に額ずいて、お許しを乞うこと。
背後に控える、これもまた地元の誉ともいうべき今川義元公が、「まあ、せっかくああして謝ってるんだから許してやりなさいよ」と、鷹揚にとりなしてくださっているようにも見えます・・
そして、緊張の時間がやって参りました・・・満面笑顔の田辺さんとご対面。まずは大きく頭を下げて、持参した拙著を謹呈。続いて、このタイトルに落ち着いた経緯と内容についてのご説明(言い訳、ともいいます)・・・作者、強張った笑顔で必死になってます。
うんうん、と先ほどの義元公のような鷹揚な、穏やかな表情でお聞きになっている田辺さん。そこには一切、当方の不敬な行為に対する不快感も、怒りの表出もありません。
怯えきっていた私は意外な感に打たれましたが、それもそのはず。なんと驚くべきことに、田辺さんは事前に、献本前の作品の内容をほぼ完全に把握されておりました!まさか、激務の合間にこの長大な作品をお読みになられているはずはありません。おそらく、事前に手配され、拙作の梗概などを入手され、完璧にリサーチされていたものと思われます!
思えば、ぶっつけ本番で献本を受け、無礼なよそ者に不快感を表明するような、そんな短慮で70万人が暮らす大都市の長がつとまる訳はないのです。さすがの周到さ。私は、まるで作中に強調した今川義元公のような予測力、プランニング力、事前準備の実例を、まざまざと見せつけられることになったのです。
田辺さんからは、市民より公募した短編作品集などをお見せいただきました。そのなかには歴史作品もあり、これは、私が応募しても普通に落選するやつだ、と別の意味で恐れおののくような一幕も。まさに、恐るべし静岡、です。タイトルのような表面的で些末な要素などには囚われず、物語の本質を事前に把握し、逆にみずからの高い文化レベルを突きつけてこれからの作者を励ますという、懐の深さを示してこられました・・・完敗です。
田辺さん、そしてスタッフの皆さん、ご歓待まことにありがとうございました!
(公務ではなく私人として貴重なお時間を割いていただきましたので、写真掲載は遠慮しております。ご了承ください!)
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そういえば昨年のこと。地元の静岡新聞社さんと歴史作家の集団・操觚の会(そうこのかい)のコラボで、「アンソロジーしずおか 戦国の城」という短編集が発売されました。
私も発刊時のZoomイベントにいち読者として参加させていただいたのですが、静岡県下に散在する戦国時代の城郭ごとに一人の作家がひとつ短編を書く、という興味深いテーマの企画ものでした。
以下、並べただけで生唾ゴクリものの顔ぶれ。
(作家という点でも、城という点でも!)
■ 芦辺拓 「時満つる城」 (堀川城)
■ 永井紗耶子 「梅花の鏡」 (諏訪原城)
■ 谷津矢車 「意地は曲がらず」 (韮山城)
■ 坂井希久子 「紅椿」 (曳馬城)
■ 蒲原二郎 「残照」 (蒲原城)
■ 彩戸ゆめ 「風啼きの海」 (下田城)
■ 杉山大二郎 「最後の城」 (懸川城)
■ 鈴木英治 「井川の血」 (今川館)
■ 早見俊 「返り咲きの城」 (山中城)
■ 秋山香乃 「老将」 (高天神城)
コラボ短編集は、それぞれの作家のいいとこ取りができるから、ズルいですよね。どこから読んでも一切ハズレなし。
個人的には、熱く燃え上がる傑作「嵐を呼ぶ男」(実はカバーイラストが拙作と同じ獅子猿先生。現在は他の出版社から「信長の血涙」と改題されて文庫化されています)をものした杉山大二郎先生「最後の城」の文体が意外で、とても興味深かったです。
見逃していた皆さん、これはおすすめですよ!