モンターニュのつぶやき「語学も、ゴルフも、基本は集中力と持続力」 [令和3年5月15日]
[執筆日 : 令和3年5月15日]
週末です。と言っても、年金生活者には、平日と週末の区別はありませんし、城山三郎の「毎日が日曜日」的ではありますが、お金がなくても出来ること、それは考えることです。
この数週間、西田幾多郎がそうであったように、考えていたことは、意識の問題があります。卑近な例では、為政者のコロナ対策での思考パターンもそうですし、オリンピックの開催についてもそうですが、何故、現実とそれに対する対応に、こんなにタイム・ラグというか、泥縄式にしか対応が出来ないかと考えると、そこには彼等の現実認識の甘さ、ゴルフで言えば、砂の状態をよくも確かめないでバンカーショットで何度もダフっているような、そんな気がします。
政治は政治家が責任をもって対処してくれるものだと思っていたけれども、もはやそんなことでは済まされない程に、他国の対応に比べてあまりにお粗末な我が国の対応に、国民がやっと目を覚まして、行動を起こし始めた感があります。 政治の基本が何であったかを、改めて考えさせられる訳ですが、私の場合は、つぶやくのがせいぜいが関の山。無力な政治に関してのつぶやきよりは、同じつぶやきならば、多少は役に立ちそうな領域のことをつぶやいた方が宜しい訳で、届くメールの中で、最近一番多い、ゴルフにまつわる話、上達に関するつぶやきが良いかと。
スポーツ関係では、雑誌類も含めてゴルフに関しての書物が多分一番多い気がしますが、ゴルフの基本は、外的には身体的能力による表現でありますが、同時に内的には言語的思考表現で、そうしたことが本を書くことにつながっているのでしょうが、こうしたことは、スポーツでは極めて稀なことではないかと思います。
私の場合、海外で始めたゴルフ、それもセネガルの土漠・砂漠的ゴルフコースで始めたゴルフでしたし、ゴルフそのものについての情報量も少なく、スイングはまったくの自己流。ですが、台湾出身の陳清波さん、坂田信弘さん、田原紘さんのゴルフに関しての文章は、熱心に読んでおりました。特に、陳清波さんのグリップやアドレスは真似しました。そして、セネガルからフランスに転勤となって、パリ市内の書店で、日本の雑誌や本などが購入できるようになってからは、ゴルフの情報量は格段と増えて行き、ご案内の夏坂健さんの本等、ゴルフの楽しみは、する楽しみは元より、読む楽しみもあることを知る訳です。
中部銀次郎という人のゴルフも参考にしながら、私のゴルフ熱はどんどんと高まって行き、同時に、技術的な点に関しての探求心というか、上達への希求も高まり、ゴルフの技術に関しての本も随分と読むようになりました。敢えて、どんな人が書いた本かと言えば、日本人に限れば、プロゴルファーでもあった江連忠さん、金谷多一郎さん、そして、現役で現在も活躍されている倉本昌弘さんの本でしょうか。そして、教育心理学が専門であった市村操一さんの本かと思います。
元プロゴルファーの書かれている本の場合は、ゴルフの技術論に加えて、精神論も踏まえての本でもありますし、ゴルフに限って言えば、皆素晴らしい本だと思います。他方、元日本オリンピック委員会カウンセラーなども務めていた市村さんの場合は、スポーツ全般に関しての科学的な知識が豊富で、かつ、禅にも造詣が深く、いわゆる引き出しが沢山あって、「読むだけで10打縮まるゴルフ思考術」「読むだけで10打縮まるゴルフ集中術」は、読み物としてはかなり知的水準が高い本になっている気がします。かつ、諸外国のスポーツ事情にも通じているため、日本におけるスポーツの向上のための様々な課題にも言及があり、日本の国際化を考える一助にもなっています。こういうゴルフの本はそうないと思います。
「読むだけでさらに10打縮まる」という副題というか、形容句がついていますが、将棋や囲碁にも似て、長い時間プレーするゴルフでは、集中力を如何にして得るのか、そして如何にしてそれを持続させることができるかが、実は一番重要なことなのですが、一般的には、スイングの技術論が一人歩くしている傾向が感じられます。語学で言えば、視聴覚を鍛える事が最初で、そして基本的な文法、語彙、そして発音・リズム等を理解・習得して、次の段階(長文読解や、実際の対話、作文)に進むのが良いように、ゴルフも最初は視聴覚の訓練が大事でしょう(上手い人のプレーを見る、ボールにクラブが上手く当たった時(芯に)の音を聞くとか)。そして、ゴルフの文法(大きく言えば、スイングの技術的な面と、ゴルフのゲームそのものについてのルール・エチケット)を習得しないといけません。技術的な基本といえば、クラブというう道具を使うことで、道具を扱う技術を身につけるためには、クラブの性能を知ることがあります、14本のクラブのそれぞれの性能を。そしてボールを飛ばすための打ち方(スイング・リズム)を習得する訳ですが、クラブそれぞれの特性に従って、アドレスの仕方が少々変わる(スイング・リズムは変わらない)とか、あるいは、ボールの位置が変わるとか、そういう事です
なお、スポーツにメンタルなことはつきものですが、ゴルフ特有のメンタルな要素があるのかと言うと、市村さんは「体力ある者は疲れていても精神状態はしっかりしている」という言葉を披露しています。彼はメンタルなことはある意味、技術的に克服できるという風に考えている節があります。そして、彼がゴルフスイングで大切であるとしているのは、ちゃんと立っていられる筋力があること、そして、背中の僧帽筋、広背筋、お尻の大臀筋とお腹の腹直筋、脚では大腿の内側にある大腿四頭筋がしっかりしていないといけないということであります。
つまり、こうした筋力を鍛えないでスイングをするのは怪我の基になる訳で、ゴルフに必要な技術力をつけたかったら、まず筋力をつける、体力をつけることが先で、そのためには、いわゆるインターバル・トレーニングをしないさいと言います。こうした基礎的体力を鍛えて、それからゴルフスイングを習う、スイングを真似るということであります。ちなみに、坂田さんは素振りを奨励していましたが、市村さんも同様です。ただ、素振りをしてもよいゴルファーは、1ラウンド110前後で回れるようになった人以上のレベルでないといけないようで、初心者などは素振りは逆効果。90台、80台、70台を出したい人には最適な練習(200回位が良いとか)ということで、それは、
1)クラブを振る感覚が身につく、
2)スイングに必要な筋力が身につく、
3)正しいスイングの基本的イメージと運動を固める、
効果があるということです。
なお、ゴルフの上達には不可欠な集中力というものは、上級者向けの話になるのですが、この辺は正に意識の問題、哲学的な思考にもなりますので、週末の皆様の安寧を邪魔するのはどうかと思い、週明けにでもご案内しますが、ドイツの学者(エバーシュペッ匕ャー)はイメージトレーニングの研究を総括して、一流競技者の条件とは、1)自分の技能や動きを言葉で表現できること、2)自分の内面の言葉(セルフトーク)で、イメージされた技能を調整・変化させることができること、3)技能のどのポイントが最も重要であるかが解っていて、そこに意識を集中できること、4)その重要なポイントについて適切で明確なイメージを描けることである、としています。ゴルフではイメージトレーニングは大切ですが、私たちは日常生活でもこうしたイメージトレーニングのようなことをしているのですが、でも、私のようにつぶやかないと、言語で表現しないと、そのイメージは磨かれないのかもしれません。 なお、練習場でボールを打つことと実際のラウンドというものは、例えると、新聞を読むことと本を読むことに置き換えられるのではないかと思います。新聞は読みたい箇所を適当に、しかも集中して読めますが、長編の小説を読むとなると、最初から最後まで読まないといけませんし、集中力も持続力も違いますので。どうも、大変、失礼しました。